人間市場
「じゃあ、また」
香山はアーケードの横に車をつけた。私と間島さんは車を降りた。
「手、握って」
私は間島さんの手をつかむ。アーケードの中は暗くて刺青をいれている男や明らかに薬をやっていそうな人、売春婦……そして、鉄のようなにおい。また、食べ物の匂いもする。とても臭くて気持ち悪い。
「人間市場って、ここ?」
間島さんは頷く、間島さんが緊張しているようだ。
「あ、マジマさん。お久しぶりです」
片言で話す男性の声がした。
「お久しぶりです。相変わらずですね」
男性は場違いと言えるほど、清潔な服だった。そして、爽やかな笑顔。だが、むしろそれは狂気に感じさせる。
「ええ、あ。こっちです。――そちらのお嬢ちゃんは?」
私を見てますます笑顔になった。まるで、何か食べたいものを見たときの顔だ。
「念のために言っておきますが、食べないでください。私の奴隷です」
男性は少し残念そうに
「そうですか、なら要らなくなったらいつでも」
「……ええ」
間島さんは軽く殺意を放っていた。
「では、行きましょう」
男性は歩き始めた。
「今回はどのようなご用件で?……あ、あと。そろそろ敬語やめていい?お前ごときに使うのだるい」
間島さんはニッコリ笑って
「私もだ。いいぞ、面倒だ。――今回は私の事業を広げるための交渉をしにきた」
男性はほぅとつぶやいた。私達がしばらく歩くと、飲食店が見えてきた。
「まぁ、入れよ。お前らが食べてうまいような物なんてないけどおごってやるよ」