金魚とさよなら
掲載日:2026/02/17
さよならの前に
君は金魚みたいな
緋色のスカートを
ひらりと揺らした
重ねたのは手のひらだけで
なんとなく口寂しかったのは
生きている限り
箱の底に隠しておこう
君とのさよならが
君のスカートのように揺らぐ前に
まだ見えない世界の端までいかなきゃ
目を瞑って
──それじゃあ、ダメだよ。
君の香水の匂いが
頭の中で絡みついている
後ろを向いて
──それでも、ダメだよ。
君が後ろにいるかもって妄想が
僕の胸にこびりついている
五月蝿い脳内と
高鳴る胸の音は
君に知られないように
君と初めて会ったとき
満開だった桜の花は
まだ蕾のまま夢のなか
春が来て
みんなが夢から覚める前に
君とのさよならを終わらせよう
「また今度。」
いつかまた会いたいんだと
少し滲ませた別れの言葉に
返事などなかった
僕らは学校の帰り道のように
別々の道へ分かれてゆく
赤信号で立ち止まった僕の目の前を
君は風のように駆け抜けていった
さようなら。
後ろ姿に呟いた声は
凍りついた冬空に溶けて
雨となり世界を透明に染めていった
ご覧いただきありがとうございました。
金魚のような君とさよなら。
誰かに届きますように。




