表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夫が王女殿下の護衛騎士に任命されて帰ってこないので助けに行こうと思います  作者: 立花 みどり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/5

因縁の王女様とディアンナの怒り

 相思相愛で順調な婚約だったのにも関わらず、なぜ今、一人で寂しく眠っているのか。


 それは第二王女殿下のせいである。


 私たちの一つ年下の可憐でわがままな王女様。

 彼女は昔から何かと私に対してライバル心を燃やしているのだ。


 理由はよくわからない。

 同じ年代の令嬢の中で私が一番高位だからという説もあれば、王女殿下が好きだった令息が私のことを好きだった説とか、カーライルを気に入っているのではという説もある。でも結局よくわからないので考えるのをやめた。


 私が親しい友人とささやかな茶会を開けば直後に私の茶会を上回る豪勢さで茶会を開く。

 誕生日にテディベアを貰えば、テディベアブランドを買い取って自慢しにくる。

 婚約者ができれば、上回る地位の令息と婚約して……近頃破談になった。

 私が良い成績をとれば「頭でっかちでつまらないガリ勉お嬢様」と触れてまわり、何か苦手を一つでも見つければ「こんなこともできないのか」と大声で騒ぐ。


 昔からそんなものだから、パーティで言いがかりをつけに来ては言い負かされて悔しそうに帰って行くというのもしょっちゅうで。

 父上が陛下に苦言を呈し、陛下からそれとなく謝罪までされたこともある。謝罪するくらいならきちんと教育してくれ、と思ったけど相手が陛下だったので飲み込んだ。


 正直なところあまり気にしていなかった。


 王女殿下には直接危害を加えるほどの度胸がなかったから。

 よそで飼われている子犬がどれだけ吠えようと問題がないように、うるさいだけで大きな実害はなかったし、嗜めるのは私の仕事ではなく周りの人間の仕事だと思ったから。面と向かって悪口を言われた時は多少言い返していたけれど、倍うるさくなるので、パーティなどで真正面から絡まれたとき以外は無視に徹した。



 私たちが学園を卒業する頃、婚約者である公爵家の嫡男と破談になったと聞いた。理由は詳しく知らない。けれど普段の言動を考えると、どちらが有責だったかは明らかだろう。

 国内の有力な貴族の子息たちは軒並み婚約あるいは結婚してしまっているため、どこかの国へ嫁ぐことになるはずだ。


 そうすればきっと静かになる。学園を卒業して接点も減ったし、数回のパーティで絡まれるのを少し我慢すればいいだろう。


 ……なんて呑気なことを考えていたら結婚して二ヶ月経った頃、してやられた。


 あの王女はあろうことかカーライルを自身の護衛騎士に指名したのだ。


 ……やられた、と率直にそう思った。

 そのうちいなくなる存在だからと完全に油断していた。


 本来ならカーライルが王族の護衛任務につくことはない。

 けれど陛下は末っ子の王女殿下に甘い。ちょっと無理な人事異動くらいなら許してしまうだろう。許すなよ。


 我が伯爵家はもちろん、両家の家族総出で抗議したものの陛下は聞き入れてくれず、カーライルは王女の護衛につくことになった。陛下は「いずれ国外に嫁ぐ王女の最後のわがままをきいてやりたい、少しだけ我慢してくれればいいから」と話にならなかった。ふざけるな。

 

 新婚二ヶ月で、わがまま王女にカーライルを奪われた。


 護衛騎士になったところまでならば、ギリギリ仕事だからという理由でお互い耐えられた。でもそれだけで終わるはずもなく。

 あれこれ難癖とわがままの限りを尽くして、夫を王城に縛り付けて返してくれない。やれ族が出たから警備を強化するために残れだの、数ヶ月先に隣国から使者が来た時不安だからしばらく本番同様の警備体制で警護してほしいだの。何かと理由をつけてカーライルを王城に縛り付けている。

 

 昔から付き合いのある王太子を脅し……頼んで、少ないながらも手紙のやり取りはかろうじてできている。それもひと月に一度だけ。カーライルの周りには王女の取り巻きたちが常にいて、カーライルとの接触が難しいらしい。

 王太子なんだからそんなの蹴散らしてくれればいいのに。

 そう伝えると苦笑いされた。何笑ってんのよ、私は大真面目よ。


 あの王女は私が自分より優れていることが許せない。私が結婚して幸せそうにしているのが許せない。だから私からカーライルを奪いたいのだ。物理的に引き離して、あわよくばカーライルが自分に惚れてくれればいいと思っている。


 もちろんカーライルにその気はない。彼は私一筋。疑ってない。

 でも、だからこそ取り戻さなくてはいけない。


 広いベッド、本来いるはずの人がいない場所を撫でてみる。

 うん、耐えられない。

 私は人生で一番、猛烈に怒っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ