幸せだった二人
「ディア、愛しています」
「ええ、私も愛してるわ。カーライル。私の愛しいお姫様」
「……もう。僕は立派に大人ですよ。騎士としてそれなりに認められているというのに。ディアだけです、僕をお姫様なんてからかうのは」
美しい顔が私の前でだけ、子供のように拗ねる。
「ふふ、だって私にとってはいつまでもお姫様よ。最近お姫様が、王子様にもなってしまったけど」
「そうです。僕はあなたの王子様になった。これからは僕がディアをお守りします」
「そうね、私が危ない時は守ってね。でも忘れないで。私だってあなたを何からでも守ってみせるわ」
「僕の奥さんは勇ましいんですから。お願いですから危ないことはしないでくださいね」
「わかってるわ。約束だもの。カーライルとずっと健康で長生きするって」
「そうです。約束です。あなたは僕と一生一緒にいて、長生きして、愛して愛されて、ずっと幸せに暮らすんですよ。お姫様と王子様の物語はそうやって終わるって決まってるんです」
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ーー久しい夢を見たわ。
結婚式の前夜の思い出。
ふふふ、とお互い笑い合ってキスを交わしたのが三ヶ月前のことだ。……そして、夫婦の寝室で一人に寝ることになってしまったのは一ヶ月前。
広いベッド。隣に腕を伸ばして温度を確かめるけど、やっぱりそこはひやりと冷たい。
今日も夫であるカーライルは帰ってきていないようだ。
はあ、と深いため息が出た。




