六話 誘拐
「永井潤くん♪」
「ほんとなんなんですかあなた」
あれからだいたいニ週間が経った、俺はあの後家を出て京都に移住した。家族から逃げるように静かに中部から関西へと渡ったわけだが。
10月24日 晴天 腹減った
7 : 00
「なんで、この場所がわかったんですか?」
「まぁまぁそんな細かいことは気にしないでよ」
いや無理があるだろ。
黒色のコートに黒いスーツ、髪は黒くロングウルフで丸い銀色のピアスをつけている。目鼻口共に綺麗に整っていて公言通りに美人だ。身長は俺より少し低めで178ぐらいあると思う。
なんというか、カラスみたいな人だなと感じた。
「そんなことより、君大丈夫?」
「何がですか?」
「いや今君、公園のベンチで死にそうになってるけど」
所持金5円。バイトの面接も全落ち。新幹線でここまできたはいいけど都会住みの俺には観光がやめられず履歴書を買うお金どころか今を生きるお金すらない。
清水寺、金閣寺、京都御所、伏見稲荷大社、嵐山、銀閣寺。さすがに立派で満足感が半端ない。
「自分みたいな中卒はここでのたれ死んだっていいんですよ日本国憲法にものってるし」
「基本的人権の尊重フル無視だよそれ」
ぐーー
「・・・・・」
「・・・・・」
しばしの沈黙
「ご飯奢ろうか?」
「、、、はい」
駐車場に徒歩一分。駐車場のど真ん中にくろいポルシェが止まってある。
「えっ、あれあなたの車なんですか?」
「うん、そうだけどそれがどうしたの?」
「いや、いい趣味だなと」
「適当に選んだやつだから別にそう言う趣味はないんだけどね」
なんだと、こいつそういう趣味がないのにポルシェを買ったのか?どんな金持ちだよ適当に選ぶって
「さぁさぁのってのって」
助手席のドアを開ける。
「ありがとうございます」
「よし出発♪」
そして車は猛スピードで発進し電柱にぶつかった
頭がぐらぐらする。とんでもない痛み。目の前が暗く手を動かそうとしたら縛られていて指しか動かせられない
「うー!うー!」
口は何かで塞がれていて喋れない。
「おっ?やっと起きたか」
目の前がぱっと明るくなる。どうやら目が布で隠されていたようだ。
目の前には電柱に突っ込んだ無傷の美人が見える
なんで怪我一つないんだよこの人
「どうも、改めて共倒雪衣です以後よろしく。まぁ、見ての通り君を誘拐してるわけだけど」
「うーうー!」
「なんで誘拐されたかわかる?」
「うー!うーー!」
「なんでこんなことするんだって?君が私のお願いを断ったからだよだからまぁ、乱暴にここまで連れてきたわけだけど」
この部屋は白い壁紙になっていて今俺はソファ二つと机が一つあるスペースに座らされていて対面にあいつがいる、奥の方にもパソコンと仕事机っぽいものが二つあるわけだけど、書類と本で山積みになっている。カーテンは全て閉じられていておしゃれで温かみのあるペンダントライトで照らされたこの部屋とは大違いの今の俺の状況がある。
説明終了
「説明ありがとう潤君」
思考盗聴
「うーうー!」
「君には今ここで私の手で死ぬか、私に協力して死ぬかの選択肢があるわけだけど」
最悪だよ
「どうされたい?」
どっちも死ぬじゃねぇか