十五話 面倒事
歩いて説明されたが、いや移動しつつ説明されたがなるほど使用人さんに車椅子を押してもらっているのか
使用人の女性は落ち着いた印象のある人だった。黒髪のロングヘアに商業施設で見るようなふりふりのメイドのではなく、黒と白とを基調とした奉仕服を身に纏っている。
それにしても先ほどからまるで陸人さんが扉を開けたように見えていて違和感を感じていたがこの使用人が開けていたのか、気配がまるでない。足音も最低限に抑えている様に見える。
そう観察していたらぺこりと社会人にも稀に見ない50度に近い角度でお辞儀をかましてきた。
一室に通される。
そこには大きな長テーブルがあった。椅子は五脚あり正面に一脚、左右に二脚ずつとあり多分陸人さんは左の変に空いている椅子のないスペースが定位置なんだろう、その位置に向かって行った。
正面の椅子を除き他の椅子は埋まっていた。
「礼ちゃん椅子を持ってきてくれるかな、二つ分」
「はい承知しました」
礼と呼ばれるその使用人は椅子を二つ持ってきてくれて、正面から対称的な位置に一脚、その椅子から見て左に一脚と椅子を置いてくれた。
「ありがとうございます」
「あっどうも」
「どうぞお二人ともお席についてください」
「はっ、そいつが探偵か、ただの女に見えるがな」
吹けば飛んでいってしまいそうな枯れ葉は嫌そうな顔をしてそう言った。髪色は真っ白だった。
「やめてください薄人さん、失礼ですよ」
厚みのある眼鏡をかけた老婦人。こちらもまた、髪は白に染まっていた。
「そうだよお父さん!初対面の人には礼儀を持って接しないと」
椅子に座っている中では一番若い見た目の二十代半ばぐらいの女性はそう言った。
「まぁ、探偵がこの問題を解決する糸口になるとは思わないけどな」
小太りな男はそう言った。
少しだが陸人さんに面影がある気がしたが目のクマがくっきりしていてなかなかに不健康そうだ。
「潤くん依頼の内容を教えてくれるのかい?」
「はい?さっき人平さんが説明してなかったですか?」
「私は依頼の内容は始まってから聞くタイプでね」
「さっき人平さんがわざわざ説明してくれたのに…」
「まぁまぁ私のルーティーンと思ってくれればいいさ」
「スポーツマンじゃないんですから」
「おーい潤くん、サッカーしようぜ!」
「そこは野球であれよ!」
この子ノリいいな
「んっ""ん"」
すいません
大抵金払いがいい仕事ってのは訳ありが多い。
警察に頼めないことだったり、人間関係が泥々としたものだったり、他にもいろいろあるわけだが依然として共通点があるのは
「えーっと依頼内容でしたね」
空気がピリつく、実にわかりやすい。
「故人、人平薄太さんを殺した人を見つける、ですね。」
面倒ごとだ
HitoBera Company通称HBC。
日本のホビー会社から始まりそこから不動産、SNS、建設業と幅広くシェアを今もなお拡大し続けている大企業として知られているとても有名な会社。
泥々なんだろうな、この家族。