1-4 蝕む輝き
「──ッぁあ!? ガハッ、くっぁ?!?!!」
龍のブレスを喰らった魔族はなんとか耐えていた。魔術で防御した上で瀕死だった、龍のブレスがどれだけ規格外かを思い知らされた。
「にゅにゅ…….?」
「っコイツ…..!! 龍になるだと!? 」
魔族は魔術で一気に回復していく。そして、強化魔術を自分にどんどん付与していく。
「っぁあ、そうだよなぁ。初見の敵にはまず何が弱点か試すよなぁ、頭冷えたわ〈魔水槍〉! 〈外道招雷〉〈魔振原〉!!」
「にゅっ!?」
限界まで圧縮された水の槍、全方向から降り注ぐ雷、絶え間無く地面から放たれる岩。防御系の保持者ですらも瀕死に出来るような猛攻撃が元の姿に戻った「獣」を襲った。しかし、僅かな傷を残して受け切られてしまった。素の状態でも途轍もない硬さだ。
「チッ、結構全力でこれかよ................!! さっさと死ね!!!!!」
そう言いつつも、魔族はどの部分が一番ダメージが大きいかを移動しながら確認し始めた。
水が当たった部分は恐らくダメージは無し、同じく雷、岩も単体では効いていなかった。要するに二種類の攻撃が当たった部分は他に比べて効いていた。水雷はほんの少し、雷岩も少ししか効いていなかった。どうやら水岩の組み合わせが、泥属性のようなものが一番アイツには効くようだ。
「て事なら話は早いなぁ!! 〈邪泥津波〉!!!」
「にゅうぅっ..........」
濁流が木々や壊れた民家などをあらかた押し流した後には、身体の三割程が削れていた。これなら倒せる、そう思った矢先に、流石に見過ごせなかったのか、どうやらスキルの準備に入ったらしい。吹き荒れる魔力で吹き飛ばされる。
「にゅ..........《我は森羅万象を蝕む》」
「おまっ、何するつもりだ!? というか詠唱出来んのかよ..............!!」
声帯らしきものが無いとはいえ、謎の鳴き声を出していたので予想は出来た筈だ。気の抜ける鳴き声と姿で、未だに甘く見ていたらしい。
「《故に我は天光を蝕む》」
瞬間、夜が訪れた。比喩でも何でもなく、空から光が消滅した。そして、いつの間にか人型となった「獣」の手のひらの中には溢れんばかりの光が包まれていた。
「《我が肉体を穢す者よ》」
「《我が肉体を削ぎ落す者よ》」
「《我が主に害を為す者よ》」
「ちょ、待ちやがれ!!!??!!?!」
光は一層輝きを増し、落ち着き、種火程の大きさと輝きになった。
「《其を我が敵と認め、今ここに賛美しよう》」
詠唱が終わる。
「《最光の一時》」
魔族の身体を優しく、それでもって激しく光が飲み込んでいった。
光が消え去った後には何も残っていなかった。龍のブレスを辛うじてとはいえ耐えた魔族を一撃で跡形も無くなった。
そして「獣」が元の蛇のような姿へと戻っていく。
「~~んにゅううぁ~~~~」
魔族による数々の広範囲攻撃で開けた空に、気の抜ける鳴き声が流れていった。