1-3 スキルの目覚め
2025/6/20 一部にルビを振りました。
「あ゛ぁ? んだよガキか...............っておい、中々俺好みの良い表情するじゃねぇか。んーそうだな、取り敢えず腕でも切り落としてやるか」
「っ!?」
そう言うと魔族の手に剣の形を模った炎が握られた。
「さっさと死なれると面白くないからなァ、切るついでに焼いて止血してやるよ。はーやっさしいなぁ俺ァ。おッ、ラァ!」
魔族は雷の様な速さで炎剣を振りかぶった。とても避けれない、そう思った瞬間に腕に炎剣が触れていた。
「っぐぅああ!?」
「だハァ、そうだよそれだよ………あ? んでテメェまだ腕付いてんだ、この俺が切ったんだぞ?」
「ひっ?」
予想外の言葉に驚いた。激痛を堪えながら切られた腕を見た。焼き切られて見るに堪えなくなっているが腕がまだ付いていた。魔族の筋力であれば自分の腕など容易く断ち切れるだろう。
「っは〜、しゃあねぇ。もっかい切るか」
魔族はもう一度炎剣を作り出した。しかも、先程よりも大きい。一応また切り落とせない可能性を考慮しているのだろう。絶望が増大した。切られた腕が酷く痛む。死にたくない。
【感情が一定以上になりました。《激情・狂い咲き》を発動します。絶望、苦痛を検知。強い感情、生命活動をこれ以上脅かさない全てのエネルギーを使用し、《絶苦・狂獣招来》を発動します。】
脳内に声が響き、そこで意識が途絶えた。
─────────────
「チッ、一体どうなってやがる!? 〈魔炎球〉!!!」
もう一度腕を切り落とそうとした刹那、思わず身を引く程の魔力が溢れた。咄嗟に魔術を放ったが掻き消されてしまった。
「クソッ、魔力切れで寝てんのかあのガキ! さっさと殺さねぇとヤベェぞアレ!!!!!! なっ!?」
魔力が一層強く溢れ出し、収束していく。
そして、途轍もない魔力量により、空間が歪んでいく。最後には人の頭程の大きさの球となった。
ゆっくりと球が大きくなる。
「何だよ、何が起こってやがる!?」
そしてアルテを完全に包み込んだ。魔力の膜に覆われていて、どうなっているかは分からない。5秒程して膜が溶ける様に消えた。そして、傷が完治したアルテがいた。そして、まだ残っている魔力球がまた大きくなっていく。10秒程で膜が消え、獣がいた。狼、鳥、熊、様々な動物の形を模った「獣」がいた。一匹一匹から相当な魔力を感じる。
「んだよコイツら!? いや、雑魚だな 〈魔炎波〉!!」
魔族は範囲魔術を選んだ。邪気を纏う炎が獣達を焼いていく。炎が消えた後には「獣」の数は僅かになっていた。しかし、また魔力球が大きくなっていく。そして、更に魔力を纏う「獣」が現れた。
しかし幾度も魔族は容易く焼き払っていく。
そして暫くした後、魔力球が大きくなった。
「…始めはビビったが、ただの雑魚量産機じゃねーか!! クソが、テメェは最後に殺そうと思ったがやっぱ今殺す。今だ…..チッまだあんのかよ」
そして、また膜が消えた。しかし、「獣」は1体しかいない。それも、人の二の腕程の大きさで黒い、例えるなら蛇の様な姿の「獣」だった。
「にゅう〜!」
「ブッハハハ!!!?!? んだよコイツ!? 舐めた鳴き声だなァオイ。流石にもう限界か? まぁ良いや〈炎閃〉」
「にゅっ」
炎の一閃で「獣」は真っ二つになった。
「はぁ、弱えーやっぱあれで力尽きたか………あ?」
「「にゅあっ!!!!」」
増えた。魔族は一瞬固まったが、切るほど増える魔物もいるのでその類だと考えた。この手の魔物は──
「何千何万と切り刻めば死ぬんだよ!!!!! 〈炎々千閃〉!!!!!」
側から見れば炎の壁に見える程の密度、正確さで「獣」を文字通り千、それ以上に切り刻んだ。しかし。
「「「「「にゅっ!!」」」」」
「はぁ!!?!??!!?!!」
増える。
「にゅうにゅぁ!!!」
「「「「「「「「にゅ!!」」」」」」」」
増えた「獣」が集まっていく。数瞬で腕を形どった。
そして、その圧倒的な質量を振りかぶった。
「にゅ!!!」
「っ、カハッ!? っテメェ!!」
魔族が反撃に出ようとした時には既に別の形になっていた。龍だ。魔術を扱う火葬竜などとは違い、龍が元々備える力のみで頂点に立っている原想種の一種である。稀にスキルを得て、神の域へと至る事もある。
「にゅうううううううあああ!!!」
そんな龍を模した「獣」のブレスが放たれた。周りに殆ど被害を出さずに魔族のみを捉える。
「ぁぁあ──!?」