夜の街
「ねぇねぇ、伊織!今日俺と夜の街行ってみね?」
ニッカリ笑うのは凪であった。
「え〜、やだよ〜、なんか怖そうだし〜」
「おねがい!今バイトが人足りなくて困ってるんだよ!」
「依頼ならまだしもお前の手伝いは怪しそうだからなぁ〜」
「じゃぁ、依頼ならいいんだね…」
「え?」
そう言うと凪はニヤリと笑い放課後俺たちと一緒に赤丸病院についてきた。
「あれ、凪じゃん!なんで僕たちと一緒に来てるの?」
「ほんまや、凪どしたん?」
「えへへ〜!内緒〜!ね、伊織!」
「う、う、うん」
俺は薄々嫌な予感がしていた。
例えば凪が今朝行っていた事を依頼しにて無理やりやらせるとか…
「今日は依頼を持ってきたんだ!今俺のところのバイトが少なくて困ってるから手伝って欲しいんだ!」
ほ〜ら、言わんこっちゃない。
今直ぐにでも断ってやろうと思った時凪が鞄から大量の札束を出した。
それを見た星乱さんは…
「おし、やろう。断る理由が見当たらない」
はぁ…終わった…。
今回の依頼内容は俺にだけであり繁華街にあるカフェのバイトを手伝って欲しいとのことだった。
「はい、これ着て!」
そう言われ凪に渡されたのは白いオコジョのような耳の生えたカチューシャにフリッフリのメイド服。
そう、ここはいわゆるコスプレカフェであった。
「ええええええええええ!?!?!?いや、無理絶対着ない!」
「じゃぁ給料なしね」
「ぐっ!!!…わかった…やるよっ…!」
俺はイヤイヤながらメイド服をきてカウンターに立った。
立ってみるとそこには執事服を着てライオンの耳をつけた凪がいた。
「俺もそれが良かったんだけど…」
「ええ〜!だめだよ、伊織にはメイド服の方が似合うもん〜!」
「着せたかっただけだろ」
「え〜!そんなことないよ〜!」
ふと凪の首を見るといつものマフラーをつけたままであった。
「それ、外さないの?」
「…外さないよ、これは俺の大好きな相棒の毛で作ったやつだからね!」
なんだ、俺以外にも相棒はいたのか。
そんな事を考えていると後ろからいきなり肩を叩かれた。
「あっれれ〜?新人さん?」
そこにはメイド服を着てクマの耳をつけた女の子が立っていた。
するとその女の子は俺の顔を見るなり驚いた。
「え…?エ…ァ?」
最近やけに周りから驚かれることが多い。
何かしたのか気になってしまう。
「あ、そうだ今皿洗いの人が足りないから早速だけどやってきてくれないかな!?」
そうお願いされ俺は洗い場へと向かった。
-数時間後-
「ふ〜、もうすぐ終わりか〜」
最後に俺はカウンター席に突っ立っている役目であった。
すると新しい客が入ってきて俺の顔を見るなりいきなり胸ぐらを掴んできた。
「うわ!」
「どうしてだよ!!!俺はあんたに認められたくて、褒めて欲しくてあんなに頑張ったのに!なんであんたはいっつも俺らを心配させるんだよ!!!」
「やめろ!牙潤!!」
奥からさっきの女の子が出てきて男の子腕を掴んだ。
「こいつは今記憶がないんだ!なのにそんなことするな!」
すると男の力は先ほどよりも強くなってしまった。
「記憶喪失…!なら早く記憶を戻して本物の伊織さんを返せ!!この偽物野郎が!!」
その瞬間奥に控えていた凪が飛び出てきてその男の顔面を思いっきり殴った。
「おい、牙潤…今お前なんて言った…?」
「悪いのは俺じゃない!伊織さんの記憶を奪ったこいつが悪いんだ!!」
「黙れ!!!」
凪が怒鳴るとあたりは静まり返った。
「ごめんね、伊織、帰ろっか…」
そうして俺たちは店を後にした。
-帰り道-
「ねぇ、凪…」
「ん?どうした?」
「俺って…今の俺って…偽物なのかな?本当の伊織じゃないのかな?」
そう言うと俺は目が熱くなり涙が一滴溢れた。
それを見た凪は俺に抱きついた。
「伊織、これだけは聞いて欲しい」
「なに…?」
「俺は何があってもお前の味方で唯一の相棒だ。それに俺は記憶があってもなくても伊織であればなんでもいい。俺は俺は記憶がある時の伊織にあったことは……ない。けど俺はきっとどんないおりでも大好きだ。それに周りでも伊織のことを前から知ってる奴らもいる。それでもそいつらはお前を拒まずむしろ受け入れている。みんな記憶があってもなくても同じなんだよ」
そう言われた時俺は一気に泣き打が溢れ出た。
街中で子供のように泣いた。
だが帰ってからもずっと色々悩んでいた。
するとどこからともなく妖が現れた。
「ねぇ、伊織、何か悩んでるでしょ?」
「え、っと…」
「………おいで!」
そうして妖はまた俺の手を引っ張りどこかへと連れていった。