否
次の日の朝起きるとそこにはボロボロな青葉さんと凪がいた。
「2人ともど、どうしたの…?」
「いや〜!なんでもないよぉ〜!」
凪が答えるが目は笑っていなくどこか青葉さんに似ている気がした。
「で、今日の話なんだけど…今日は伊織に作戦通り氷尾君に話をつけてもらおうと思う。」
「はい!」
「じゃ、ってことで〜!」
「「いってこ〜い!!」」
青葉さんと凪がそういいながら俺を崖から蹴り落とした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!無理むり死んじゃう落ちてる!!」
「翼!」
青葉さんが翼を呼ぶと翼の背中に羽が生え俺のところまで飛んできて俺を鶏足でを拾ってくれた。
「翼ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ありがとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ふ〜、焦った焦った…」
そうして俺はそのまま翼に首根っこを掴まれながら地上に着いた。
「は〜、やっぱりここの庭綺麗だよな〜」
「そうだね〜。見惚れちゃうくらいだよ〜、それに綺麗なこの桜…」
「…なぁ翼、綺麗な桜の木の下には何があるか知ってるか?」
「え…う〜ん…水とか…?」
「いや違う、言い伝えに過ぎないが…綺麗な桜の木の下には人の死体が埋まっているそうだ。」
「え〜、残酷〜」
「ま、そんな事俺たちには関係ないか!」
そういい俺たちは氷尾のいる場所へと向かった。
俺たちが少し歩くと藤木の下に氷尾がいた。
「…そこに誰かおるや…殺さんしばらさんから出てこい」
そうして俺と翼は氷尾の前に立った。
「…なんや、あんたらとは初めて会った気がせえへんわ。不思議なもんやなぁ。…なぁ、この木見てどう思う?」
そうして俺がその木を見上げるとその木は藤の花に侵食されていた。
「この木わてみたいや。外だけ綺麗で中は自分が押し殺されておる。なぁ、聞いてくれ。わてには大好きな人がおるんや。でもそん人はもう直ぐ死んでしまう、いや、殺されてしまうんや。でももうそれは変えられない事なんやて…わてかてなんべんも足掻いた。でももう無理や。昨日から合わせてもくれんくなった、いる場所もわからんくなった。せやからわてにできることはもう…ないねん…」
「ねぇ…その子はどうして殺されちゃうの…?」
俺が尋ねた時の氷尾の顔は今にも涙が溢れそうで見るに耐えなかった。
「…この家には、代々生贄が必要なんや。生贄の条件は女中の娘であり普通の人間の子や。ほんであいつは選ばれてしもうた。せやからもうわては諦めることにした。あいつに言われたんや。わてが足掻く分あいつが悲しくなるからもうやめてくれって、昨日最後に言われたんや。せやからもう…わてにできることはあらへん…!!」
-パン!!-
ほおを叩く鈍い音が聞こえた。
「このあほ!!何ができることがないだ!!ないあるじゃない!探すんだよ!確かにもう死ぬことは避けられないかもしれない…でも、まだお前にできることはあるはずだ!!伝えてないことだってなんだってあるだろ!!お前が今ここで悲しんでる間に動ける時間は無くなっているんだ!!動け、動け、動け!!この腰抜けが!」
俺は必死に伝えた。
正直こんなに怒鳴るのは自分らしくないとはわかっていたけど今はこれが1番氷尾に響く、そう感じたからだ。
すると氷尾は立ち上がった。
「…ありがとう。わて、今からあいつのとこ行ってくる。」
「あぁ、そうするんだな」
そうして氷尾は俺たちに背中を向け走り去っていった。
するとその途端いきなり力が抜け俺は地面に転がってしまった。
「大丈夫!?いお!」
「…なぁ、翼…俺はいいことをしたんだろうか…」
「……いいことすぎてびっくりくらいさ」
「ふふ、だろ!さ、俺らも氷尾のこと追いかけっか!」
そうして俺たちが氷尾を追いかけると氷尾は地下の座敷牢に居た。
「清、清、清!!!」
俺たちがつくと清はもうすでに生き絶えそうであった。
「氷尾…聞いて…」
「なんや!?なんでも聞く!!」
「…わてなぁ、氷尾のことが…大好きやで…!」
「…!!それはわてが先に言わないけんことや!そんなこと昔から知っとる!それに、それに…!わてやって、清のこと愛しとるで!!!」
「ふふふ、わて幸せやった…何よりも…氷尾が…居てくれたから…じゃぁ…ね…っ…」
「清、清!!」
-ガコンッ!-
するといきなり地震のようなものが起き始めた。
「伊織!」
「翼!」
そこに青葉さんと凪が来た。
「これは一体!」
「時空が歪み始めてるんだ!元の世界に戻れるよ!」
「よっしゃぁ〜!」
「ほら、じゃぁ帰るよ!」
2人がゲートから外に出て凪が俺に手を貸した。
「…ちょっと待って!」
「え、ちょ、どこ行くの!?伊織!!」
俺は泣いている氷尾のところまで行き氷尾を力強く思いっきりに抱きしめた。
「よく、よく頑張ったな!!未来で待ってるよ!!」
「う、うん、またね、ありがとう!!」
そうして俺たちは元の世界へと戻った。
俺たちは現実世界に帰ってくるとそこには幻をかけた少女がいた。
「え、なんで…私しっかりかけたはずなのに…!だめ、だめ!これじゃぁ、これじゃぁ!…このビルの3階の従業員専用ロッカーの7つ目に妹は入っているわ」
「なに!?」
いきなり少女は依頼者の妹の場所を言った。
するとその瞬間少女は倒れた。
「…な、何が起きたんだ…?」
「!!伊織、ふせろ!!!!!!!」
そう青葉さんが言った瞬間俺は大きな鳥に捕まれ連れ去られた。
「伊織!!!足を引っ掻くんだ!リーパーの姿になって!!」
俺は言われるがまま鳥の足を思いっきり引っ掻いた。
「チッ、失敗か」
そう言うと鳥は俺を離し少女を連れていった。
「いや、いや、いや、いや!!」
そうして鳥は消えていった。
すると依頼者の妹の場所を確認しにいっていた翼が帰ってきた。
「妹さん、いたよ!」
「よかった…!…それにしてもさっきのは一体…」
「あれはリーパーの組織、鷹野隊だね。伊織は白尾伊月の息子だから狙われやすいんだよ。強いからね」
「え、あ、そうなんですか」
「ま、そんなことはいいとして、帰ろっかぁ〜」
「はい!」
そうして俺たちは病院に帰り依頼者さんに妹を渡した。
「本当にありがとうございます!!」
「いえいえ、仕事ですから」
そのあと俺たちは寮に帰った。
「ん…」
なんだか長い夢を見とった。
「お、おはよう、よく寝たね」
「おはよう!夢どうだった?」
わてが起きるとそこは寮で翼といおがおった。
「…なんや、長い夢やった。悲しいけど後味は綺麗で最近読んだ本みたいやったなぁ…あ、でもその夢にいおに似た人が出て嬉しかったで!」
「…そっか!」
するといおは何故かわからんが泣いとった。
「いお?どしたん?」
「ごめんね!なんでもないよ!」
「ならええけど…」
なんや、不思議なやつやな。
愛とは何か、永遠に結ぶ鎖か?
否、愛とは愛とは儚いものである。
恋とは何か、終わりは苦いものか?
否、恋とはその時代だけに生きる花である。
私はきっと、君が消えたとしても一生君に焦がれるだろう。
そう、これが永遠の告白、
エリーゼの告白だ。