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ユヴェールブラッティ  作者: 月島旭
エリーゼの告白
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過去の旅へ

とある日の夜、わて、狐乃夜氷尾は一冊の小説を読んでいた。

題名は「エリーゼの告白」。

その本の内容は1人の男がエリーゼという女に恋をするというありきたりな話やった。途中までは。

わての過去ととても似ておる…。

-コンコン-

「氷尾〜!依頼入ったよ!」

そうして入ってきたのはいおであった。

「分かった、今行くわ」

そうしてわては部屋から出て。

小説を開いたまま。


「さぁ、行くぞぉ!」

翼は今日も元気に寮を飛び出した。

俺は相変わらず依頼が好きではない。

あれから数件依頼は受けたが逃げ出してしまった猫を捕まえてくれやご近所トラブルの依頼などしょうもないものばかりであった。

だが今日はリーパーからの依頼で、連れ去られた妹を連れ返してきて欲しいというものであった。

もしかするとメランコリーが関わっているかもしれないのもあるが取り返すということはさらった相手と戦闘しなければいけないと思うので今回の任務は大分危険だ。

そうして俺たちは指定されたビルの屋上へと向かった。


「ここか…」

「いるならはよ出てきたらどうなんですか?誘拐犯はん」

するとそこに1人の少女が現れた。

「ん?あれが誘拐された妹?」

俺が翼に尋ねると翼はポッケの中から一枚の写真を取り出した。

「いや、違う」

「え、じゃぁ…」

「「「誰?」」」

俺たちが驚くと少女はニヤリと笑い一つの笛を吹き出した。

「!!2人とも耳閉じて!」

「「え?」」

すると俺たちはだんだん眠くなり倒れてしまった。

「ふふふ、過去の旅へ行ってらっしゃい」


俺が目を覚ますと隣に翼はいたが氷尾はいなかった。

「翼、大丈夫か!?」

「僕は大丈夫…それより氷尾は?」

「それが俺にもわからなくって…」

「ってかお前…なんでちっちゃくなってるんだ…?」

「え?いや、いおもだよ」

「「………えええええええ!?!?!?」」

俺たちが自分の姿を見ると10歳くらいの姿になっていた。

そうして数分間黙っているとなんだか周りの状況をよく分かってきた。

俺たちはきっとさっきの少女の能力で小さくなり知らない場所に飛ばされたのだろう。

辺りを見回すとそこは綺麗な和風の館で俺たちはその中庭と思われる場所にいた。

「なんだかお城みたいだね…」

「そうだなぁ」

-バシン!-

「屋敷から出るなど何を考えておるのですか!あなたは狐乃夜家の跡取りにならなければいけないのですよ!由緒正しきリーパーの名家に生まれたからには自分の自由などなくて当然です!」

少し遠くから怒鳴り声が聞こえる俺たちはそこに向かった。


そうして声の方に向かい俺たちがそっと覗くとそこには氷尾がいた。

殴られたのか頬が腫れておりとても痛そうで見てて耐えられなかった。

俺が怒りに狂い氷尾を殴った女をめっためったにしてやろうとし部屋に入ろうとした。

すると後ろから首根っこを掴まれ驚き振り返るとそこには青葉さんがいた。

「青葉さん!?」

「シー!」

それから俺たちは場所を変え移動した。


「や〜!2人のその姿かわいいね〜!翼はあった時を思い出すよぉ〜!!伊織はツンデレだった時代かなぁ〜!」

青葉さんは小さくなった俺たちにデレデレしていた。

「青葉さん…なんでここに…」

「実は今回の依頼の件を噂にしてもしかしたらだいぶ強いのと戦ってるんじゃないかって思って来てみたら3人揃って幻かけられてて…俺がそれに無理やり侵入して今ここにいるんだ」

黙っていた翼が喋り出した。

「青葉さん…一体どこに行ってたんですか?伊月さんが…亡くなってから…青葉さんも見かけなくなったから心配したんですよ」

「え、青葉さんずっと病院にいたじゃん」

「え?」

すると青葉さんが微笑みながら翼に謝罪をした。

「ごめんね、翼。実は俺は伊織の言う通りずっと病院にはいたんだ。ただ色々あってあまりいることを知られたくなかったから幻覚で俺の住んでる場所を見えないようにしていたんだ。だけどある日いきなり伊織が俺の幻覚を破ってきて…大分ショックだったね…」

すると青葉さんは俺の方をチラッと見てきた。

「す、すいませんね」

俺が謝罪をした瞬間青葉さんは満面の笑みを浮かべた。

「いやいや別に謝って欲しいわけじゃないんだけどなぁ〜!へへへ〜!」

「ねぇ、青葉さん、今僕といおは記憶があるけどひおにはなんでないの?」

「あぁ、それは氷尾君が過去に何かしらの争いがあるんだろうね」

「「争い?」」

すると青葉山はどこからともなく緑茶を出して飲みながら話し始めた。

「そう、幻覚というものは普通、記憶はあるが見えるものが違うだけでなんだ、だがしかしもしその見えてるものに何かしらの深い思い出、または争い、もしくはやり残したことなどがあるとその人だけ元の記憶はなくなり実質過去に戻ったことにされてしまうんだ。だがその幻覚の途中で記憶を思い出すと未来を変えることができるんだ。でもそれはとっても危険な行為でありもしも良くない方に変えてしまったり生物関係が成り立たないと時空が歪み始め世界が壊れてしまうんだ。でもきっとそのくらい氷尾君は分かってると思うよ。だってあの子も幻覚使いだしだから笛を鳴らされた時きっと耳を塞げって言ったんだね」

「どうしてそこまで知ってるんですか!?」

青葉さんは俺たちが眠った時はそこにいないはずだ。

「そりゃぁ3人揃って耳の近くに手があったからさ、そして氷尾君は2人の方を見て倒れていたからおそらくそうだろうと思っただけだよ」

「なるほど…」

「でも僕たちこれからどうすればいいんですか?」

「う〜ん、僕は無理やり入ってきたから自分だけならいつでも出入りできる…3人が出られる方法はなくはないけどそれには1人呼んでこなくてはいけなくて…でもここの世界は向こうの世界の30分が1日なんだ。だから少しだけ待ってくれれば嬉しいけど…」

「じゃぁそれまで待つかぁ」

「そうだねぇ」

そうして俺たちは青葉さんを見送り氷尾の様子を見に行った。


氷尾のいる場所まで向かうと氷尾は1人の少女と話していた。

「氷尾、大丈夫?また飛鳥はんに殴られたん?」

「まぁそんな感じやなぁ」

「…私と遊んでるから怒られてるんやろ?」

「そんなことないで。それにわては清が好きやから一緒におるねん」

「…ごめんね」

茂みから隠れて見ていたが2人ともとても切なそうな顔をしていた。

すると翼は俺の方を叩いた。

「いお、僕ひおから聞いたことがあるんだけど多分あの女の子、ひおの好きな子だよ!でもなんだっけ…なんかが理由であの子は確か…う〜ん、思い出せない…」

「え〜、頑張って思い出せよぉ〜」

「…!そうだ…あの子は…清ちゃんは………死んじゃうんだよ」

「え?」


わてが読んだ小説の最初にこう書いてあった。


拝啓エリーゼ。

俺たちの人生はだいぶ壊れたものでした。

好きな人の隣にいる権利すらない。

邪魔なものは生まれと地位。

そして俺を縛り付けて離さないものは…



君を忘れられない愚かな恋心でした。

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