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ユヴェールブラッティ  作者: 月島旭
第二章 新学期の初めて
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初依頼

「たっだいまぁ〜」

俺は学校から帰ってきてへとへとだった。

ただでさえ1日目なのにやばそうなやつら3人と関わってしまったからだ。

今そこの君、俺のこと貧弱だと思っただろ。

当たり前だ。

生まれてこのかた記憶はないがよわっちくてな。

そんなことはさておき寮に着くと中に星乱さんがいた。

「よっ!伊織!もう2人はついてるぜ!」

翼と氷尾はソファーに座りだらけていた。

「さぁ、3人。話がある!依頼の話だ!」

「依頼?」

俺が首を傾げると翼がこちらを向いた。

「もしかしていお、依頼のこと知らないの?」

「え…うん」

すると星乱さんが説明してくれた。

「ここ、赤丸病院では野良のリーパーを受け入れてくれる代わりにそのリーパー達は依頼をこなさなくてはいけないんだ」

「え、初耳なんですけど」

「うん、言ってないもん」

額がピキッと言ったような気がするが気にしないでおこう。

「依頼って誰からなんですか?」

「そりゃぁ他の組織とか野良のリーパーからもあるし普通の人間からもリーパーに関することならなんでも引き受けてるんだ」

「へ〜」

「で、その依頼に今日行ってもらう」

「「「は?」」」

依頼というシステムを知っている2人も動揺していた。

これは多分…

「ごめん、いうの忘れてたわ」

ほら言わんこっちゃない。

星乱さんは宙さんがいないと真面目にダメなのかもしれないと俺はこの時察した。


その頃宙は…

「はっくしゅん!」

依頼を片付けてる間にくしゃみをしていた。

きっと誰かからのメッセージだったのだろう…。


「いや、聞いてないよ星乱!」

「そうですよ星乱はん!初めての学校終わってみんな疲れ切っているのにこれから依頼だなんて無理に決まってますて!」

バンッ!

「おい!」

星乱さんがいきなり机を叩いた。

「やりたくないやりたいじゃない。やるんだ」

「「「イェッサー!」」」

3人のうち誰1人として星乱の圧には勝てなかったのであった。

俺たちが急いで寮から出ようとした時星乱さんは俺を少し止めた。

「あ、そうだ。伊織!あんたはこれつけて行きなさい」

星乱さんは俺に黒と水色と白のパーカを渡した。

「何があってもこれのフードは被っておくんだよ。いいね。」

「え…あ、はい」


「え〜ここかぁ」

「今回は結構楽な方な任務で良かったよぉ〜。港の見回りだなんてすぐ終わるしさ〜」

俺たちが課された依頼は最近港の様子がおかしいらしくリーパーのせいじゃないか調査してほしいという普通の人間からの依頼であった。

「え、2人。辛い任務って例えば…?」

「う〜ん、僕が今までやった中で1番辛かったのは1人で小さい組織、まぁ150人くらいの組織壊滅してこいってやつかなぁ〜。7日もかかった…」

いや、7日で終わるんだ。

「氷尾は?」

「わては囚われた金持ちはんの娘取り返してこいとかいうやつで船まで乗って行ったのは良いもののそこにメランコリーの奴らがおって…」

「メランコリー?」

「僕らと同じくらい強いリーパーの組織だよ!ブラッティとかもあそこだった気がする!」

「わてはそこで初めてブラッティを見たで」

「え〜いいなぁ!」

「2人とも大変な仕事してるんだね…」

そういうと翼がハッとした顔で言い出した。

「そうだ、僕ら今本名で呼び合ってるけど裏名で呼ばなきゃ!」

「あ、確かに!でも俺2人の裏名知らない…教えてほしい…!俺はブラット!」

「わてはスカルぺや、スーとかルペでええよ!」

「僕はレゲル!ゲルって呼んでね!」

「わかった!」

何だか初めて会った日のような感じがして少しワクワクした。

そうして俺らが呑気に話していると男性の悲鳴が聞こえた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「なんや!」

俺たちが悲鳴の方へ駆けつけると1人の男子が声の主と思われる男性の体を割きヘルツを取っているのが見えた。

珠羽(しゅう)!!!」

隣に立っていた翼がものすごい剣幕で名前を叫んだ。

「ん〜?あ〜!翼だ〜!元気してたぁ?」

その少年の顔を見ると翼と同じ羽の髪飾りをつけており髪色は淡いピンクで綺麗な顔立ちをしていた。

「ねぇ、翼!いつも言ってると思うけどメランコリーに入らない!?翼ならきっと幹部にもなれちゃうよ!僕と同じでね!それにメランコリーは俺たちの主人、ブラッティ様が作ったんだよ!翼が昔も今も憧れてるブラッティ様!普通の奴らは名前を呼ぶことすら許されないはずなんだけど俺は幹部だから許されてるんだぁ!でも今はブラッティ様がいなくなっちゃったのに三つ子のうちの1人、ドリゼラ様もいないからしょうがなく末っ子のアナスタシア様が指揮を取られているんだよ!」

「はぁ…なんでもいいからっ…早く僕の前から…消えてくれ!!」

すると珠羽の様子がおかしくなった笑顔をやめ無表情になり目の光がなくなった。

「ねぇ…翼…何でそんなこと言うの?裏切ったのは翼の方だよね…」

「うるさいうるさいうるさいうるさい!!もう話しかけないでくれ!」

「大丈夫か、翼!?」

翼は過呼吸になっており暑くもないのに汗だくだった。

「もういいや。そんなこと言うなら……翼の大切なもの、奪っても文句ないよね?」

そう微笑むと珠羽は俺の前まで一気に移動し俺の腹を思いっきり殴った。

「ぐはっ!!!」

鈍い音がし肋の折れる音が聞こえた。

「いお!!」

氷尾が俺の名前を叫んだが俺の方を向いた瞬間隙をつかれ氷尾も腹を殴られた。

「うっ!!」

「あ、あ、あ、いお、ひお!!!」

翼が立ち上がり俺達の方へ向かおうとした瞬間、珠羽は優しく翼を抱き抱えた。

「ダメだよ翼。俺の元にいなきゃだ〜めっ!翼には俺だけいればいいんだよ」

珠羽は翼を抱き抱えたまま去ろうとした。

だが氷尾が珠羽の足を掴んだ。

「ダメだ…行かせない‥!!」

すると珠羽はため息をついた後氷尾を蹴り出した。

「…はぁ…ねぇ、きみさっ!何で俺らの邪魔すんのかなっ!!意味わかんないんだけどっ!黙って見てろよっ!!」

蹴られた後氷尾は動かなくなってしまった。

「だめだめだめだめだめ!!ひお!!お願いやめて、もうしないで!お願い!」

翼が珠羽の腕を押さえながら抱きついた。

「わぁ!俺今翼に抱きしめられた!?え!?うっれしいなぁ!!」

珠羽はニッコニコに笑いながら翼のひたいにキスをした。

「えへへ!お返し!」

翼は泣いた後を拭き唇をかみしめていた。

その姿を見た俺はまた不知火の時と同じ感覚がした。

腹の底がムカムカし今にも殴りたくなるような感覚だ。

俺が痛みを感じなくなったことに気づき立ち上がった。

するとキズ達はみるみる治って行ったのだ。

そして俺は珠羽の元まで行った。

「は…なんだよ、お前もかよ…めんどくさ…」

「だけ、きちゃだめ、いお!来ないで!!」

「珠羽、翼を離しなさい」

「ぐわっ!」

俺が一言言った瞬間、珠羽は翼を離し膝から崩れて行った。

「はぁ、はぁ、ごめんなさい、違うんだ、まさかあなただなんて知らなかったんだ!許してください!エラ様!!」

「え…?」

翼は困惑していた。

状況を掴めていないような感じだ。

俺だってよくわからなかった。

自分が何をしているのかを。

「もういいよ」

すると珠羽は慌てて逃げて行った。

「氷尾!大丈夫!?」

倒れている氷尾に近づいたが氷尾は息をしていなかった…。

「そんな!息してない!…ごめんね、俺があそこにいたからひおは、ひおは…!」

するとコンテナ達の後ろから氷尾が現れた。

「「え!?」」

「ほんま心配させてごめんなぁ。」

「え、何で生きてるの!?傷も一つもない!」

俺が驚いて聞くと氷尾は笑った。

「それはわてが能力を使ったからや。わての能力は催眠、人を騙す力や。ほんでわては自分の死体を幻覚で映し出したんや。」

「へ〜!すごいなぁ、そんなことまでできるなんて…でも氷尾が生きてて本当によかった。俺、氷尾が死んでたら今ここで首切って俺もついて行ってたかも」

「んな、縁起もないこと言うなて!で、翼は大丈夫?あいつ、珠羽とは一体どんな関係なんや?言いたくないなら言わんでもええよ」

「…いや、言わなきゃダメだよ。僕はみんなに迷惑かけたんだもん、逃げちゃダメだ。…あいつは簡単に言えば俺の義弟で幼馴染。母さんが再婚した時に相手の父さんの前の子だったんだ。僕たちは母さん達が結婚する前から一緒で幼馴染として育てられてた。僕は昔っからこんなやつだったから周りからもすごくいじめられてたんだけどいつも珠羽が守ってくれた。昔から珠羽は僕のことが恋愛的に好きでバイセクシャルだったんだ。俺のそのことには薄々気づいていた。それでも何やかんや幸せだった。だけどある日、僕が裏切ったことによってその幸せな生活は終わった」


6年前

「ねぇねぇ、翼。白尾隊って知ってる〜?むっちゃ強いリーパーの組織なんだって!でもね、僕らと同い年くらいの子が最近組織を新たに作ったらしいんだけど白尾隊と同じくらい強いんだって!」

「そんなこと知ってるよ!僕の憧れであるブラッティさんが作ったんだもの!」

「お〜、よく知ってる〜!」

「あったりまえだよ!」

「翼…珠羽…」

するとリビングから母さんが僕らを呼んでいる声が聞こえた。

だがその声はかすかに震えていた。

「どうしたの?母さん?」

すると母さんは父さんに刺されて殺されいた。

原因は最近父さんが全くヘルツを食べられなかったため飢餓状態になりリーパーである母さんまでも殺してしまったとのことだ。

だが問題は起きた。

俺たちがそのことで警察に電話してしまったため家族全員がリーパーであることがバレてしまい警察に追われる身になってしまったのだ。


「はぁはぁ!もうちょっと走るんだ!がんばれ珠羽!」

「もう走れないよ…父さんと母さんに会いたい…!!」

「ダメだ!今そんな弱音を吐いていたら捕まって殺されるんだぞ!殺されたら何もできない!俺にだって会えないんだ!」

その日は雨が降っていた。

珠羽は怪我している膝を抑えながら走り出した。

すると誰かにぶつかってしまった。

「「いたっ!!」」

僕は飛び上がり相手の顔を確認した。

警察ではなかったので一安心したのを覚えている。

「ねぇ、君、もしかしてリーパー?」

「「!?」」

バレた瞬間まず珠羽を守りどこに逃げようか頭がいっぱいになった。

「あ、ごめんね!怖がらせるつもりはなかったんだ!俺の名前は白尾伊月(はくびいつき)!知らないと思うけどリーパーの組織の白尾隊ってところの総隊長してるんだ!」

「え、あの白尾伊月!?」

後ろから珠羽が飛び出してきた。

「お、知ってる?ならよかった!俺は野良のリーパー達に居場所を与えたりしてるんだ!だから君たちも一緒に来ない?」

「「いく!!」」

すると伊月さんの後ろから1人の男性が現れた。

「お、伊月何してるの?あれ、この子達は?」

「お、青葉!ごめんごめん、今見つけた子達で連れて帰ろと思ってて…」

「いーじゃん!」

「え、反対しないの?」

「するわけないだろ!おれはお前についてくからな、相棒!」

そうして俺たち2人は伊月さんに保護された。


そこから俺は赤丸病院で幸せな日々を送っていた。

「ねぇ、翼!」

「ん、なぁに?」

「僕らずーっといっしょにいようね!家族だもんね!」

「うん!」

「へへへ」

そんな何気ない会話を今思い出しただけで幸せで胸がいっぱいになる。

でも、壊れるのは一瞬だ。


「ねぇ、翼。僕メランコリーに入ることになったんだ」

突然珠羽からブラッティのチームに入ると言われた。

「さっきそこで誘われたんだ!だから翼も一緒に行こうよ!」

俺はその時怖かった。

珠羽だけ執拗にされて自分だけ捨てられるのが。

スカウトされてるのは珠羽であって僕ではない。

それに俺がいない方が珠羽はもっと成長してもっといい人を好きになれるって。

「…僕は…行かないや…」

「え?え、何言ってるの?ダメだよ行かなきゃ、僕らずっと一緒でしょ?家族でしょ?」

「もう…家族じゃない!もう僕ら家族なんかじゃないんだ!!」

そういい僕は珠羽の前から姿を消した。

でもそれがいけなかったんだろうな。

「ねぇ、なんで?僕ら家族だよ、家族じゃなきゃダメなんだよ、だって僕ら運命の相手だもん、"あの人"はそう言ってたもん。だめだだめだだめだだめだだめだ!!!!…あ…いいこと思いついた。家族じゃないなら僕が翼と結婚して家族になればいいんだ!!ふふふ、翼も僕にヤキモチ妬かせたかったんだね。素直じゃないね〜」

そうして僕はそれまで珠羽にあわないようにしていた。

でも今日会ってしまってこんなことになったから悔しいよ。


「なんかこんな話でごめんね。それに僕のせいでみんな…」

すると氷尾が翼のひたいをデコピンした。

「何!痛いじゃん!なにすんのひお!」

「なんや、聞いてりゃずっと僕のせい僕のせい言うて…翼のせいちゃうで。翼が守ったからわてらは今ここにおるんや。しっかり覚えとき。ほなそろそろお開きいたしますかぁ。かえろかえろ」

「うんそうだね!ほら、翼いくよ!」

「…!!うん!」

この日々は壊したくない。

いや、壊させない。

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