新生活
俺は妖に病院の入り口まで連れて行かれた。
「ほら、出るよ!」
「え!?」
そうして俺たちは病院の外に出ると車があった。
車は黒い高級車で運転手さんもいた。
俺は妖に後部座席に放り込まれ車に乗った。
「え、車!?え、車!?俺宙さん達に何も言ってないよ!」
「大丈夫大丈夫〜!僕の名前使ったらいけるから!」
少し、いやだいぶ心配だ。
「ついたよ!」
「ん?」
そうして運転手さんにドアを開けてもらい恐る恐る出るとそこにとてつもなく高いビルが建っていた。
「はいるよ!」
「ええ…まじかよ……」
中に入るといかにも高級そうなビルでロビーには受付嬢の綺麗なお姉さん達にパリッとしたスーツを着た大人達で溢れかえっていた。
「俺こんなところ初めて来た…!すごいもんだな…!」
「そう?僕はいつも来てるって言うかほぼ住んでるし何とも思わないよ」
妖は俺の手を引っ張りながらエレベーターに乗り最上階のボタンを押した。
「え、最上階って…妖間違えてるんじゃない?」
「間違えてなんかいないよ」
俺はその時気づいた。
だいぶすごいやつについてきてしまったと。
「ここが僕らの拠点だよ!ほら、おいで!」
エレベーターから降りるとそこは今までと違いその階丸ごと妖達の拠点のようだ。
「お〜い!兎天〜!」
そこに立っていたのは綺麗な茶髪に水色の瞳で綺麗な顔立ちの髪を結んだ青年だった。
「おかえり、妖。後ろの子は…あぁ。妖から聞いてるよ、伊織君。僕は星亡兎天。白尾隊の星亡部、隊長をしてるよ、これから何かとお世話になると思うけどよろしくね!」
「は、はい!」
とっても良さそうな人でよかった。
「ねぇ、伊織!さっきも言ったと思うけど兎天は伊月さんの右腕だったんだよ!すごいでしょ!」
「…あぁ!」
「ふふ、君のお父さんには本当にお世話になったよ。でも君は本当にお父さんそっくりだね…」
「そうですかね……」
「…」」
すると2人は顔を合わせまるで何か頭の中で話しているようだった。
「ねぇ、伊織って今悩み事あるでしょ?」
「え、なんで…?」
「顔に書いてあるよ。父さんは僕なんかより全然かっこよかったはずだから似てるわけがない…ってね」
俺の考えていたことはすぐ2人に当てられてしまった。
「あの人はそんなかっこいい人じゃなかったよ〜のんびりしてて…でも君の言った通りたまにかっこいい人だった…。戦う時は目の色が変わってね…俺に人の食べ方を教えてくれた人だったよ。俺も最初は自分がリーパーなんて知らなかったから…」
「そうなんですか…」
すると兎天さんの電話がなった。
「はいは〜い!」
[おい、とあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!てめえうちの伊織どこやりやがった!!またどうせあの猫野郎に持って来させたんだろぉぉぉぉぉぉ!!]
電話からは星乱さんの怒鳴り声が聞こえた。
「違う違うって!妖が勝手に持ってきたの!!信じてよ!」
[お前の言葉なんて信じるかぁ!]
電話が切れ周りの空気がシーンとなった。
「い、伊織君…!今すぐ帰ってくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「言われなくても帰りますっっっっっっ!!!!!」
そうして俺は尻尾を巻いて逃げた。
次の日
俺は寮のリビングで翼と話をしていた。
「ねぇ、いお!ブラッティって知ってる!?」
「あ〜、聞いたことはあるけどぉ…」
「すごいんだって!むっちゃ強いらしいよ!でも超怖いんだって…目が光ってなくて何で生きてるのかわからないみたいな感じなんだって!でも一年前から行方不明なんだって…仲間も探してるし警察だって捕まえるために探してるらしいけど全く見つからないんだって」
「そりゃそうや」
階段から氷尾が降りてきた。
「あの方は年齢こそわてらと一緒やけどあん人はわてらより何倍も強いし何倍も冷酷や。ほんでもって顔もフードで隠して見えんしなぁ」
「ねぇ、氷尾!ブラッティってなんのリーパーなの?」
「何だったかねぇ…」
「氷尾もわからないの!?」
「実際に会ったことはあるにはあるけど顔が見えないからわからへんのや…ただ白い尻尾だけは見えたなぁ
「そうなんだ…もしかして父さんと関係があるかも…
「確かに!」
-ピンポーン-
「お、誰だろ?はーい!」
そうして外に出ると星乱さんと宙さんが立っていた。
「よっ!伊織!」
「いきなりごめんね」
「2人で来るなんて…どうしたんですか?」
「いや、実は私達気づいてしまったんだよ!学校どうしようって!!」
「あ〜!!ほんとだ!」
「え、いお学校行くの!?」
「ずるいやん!わても行きたい!」
2人が俺に覆い被さって出てきた。
「でも…俺警察に顔バレてますし…」
「それはもう何とかしてあるよ!しっかり警察には匿名で電話入れたんだ!彼はライアーじゃないってね!ちなみにライアーは星乱ね」
「おい言うなよ!!…まぁ…悪かったな…」
「いや、いいですよ。あの日星乱さんに合わなければ今俺はここにいませんし…。」
「じゃぁいっか!」
何と言う切り替えの速さ。
見習うべきだな。
「おい星乱!…ごめんね、伊織君。」
「大丈夫ですよ!」
「ねぇそんなこといいから僕らも行きたい!!!」
「そうですよ!いおだけ学校行ってわてらだけお留守番なんて嫌や!」
「え〜…今から編入きくかなぁ」
「まぁ大丈夫だろ。」
謎の自信を持ちながら星乱さんが胸を叩いた。
「だってあそこの校長稲保ばぁだもん。こっちの事情だってわかってくれるさ!」
「あの…稲保ばぁさんって…?」
「稲保ばぁはリスのリーパーで伊月さんとも知り合いだったんだよ!だから私が電話で話しとくから2人も入学できるようするわ!」
「ほんと!?ありがとう、星乱!」
「星乱はんありがとございます!!」
2人は目を輝かしながら室内に戻って言った。
「それじゃぁまたね」
「じゃぁな伊織!」
「はい!」
2人も帰って行ったので俺はシオン館に向かった。
「青葉さ〜ん!」
「お、伊織じゃん!どうしたの?」
「いや、ちょっと聞きたいことが色々あって…」
「なぁにぃ?」
青葉さんは優しく微笑み僕を受け入れてくれた。
「青葉さんはブラッティを知ってますか?」
「っ!!ねぇ…伊織。その人のことどこで知ったの…?」
青葉さんは表情を変えずにニコニコしていたが名前を言った瞬間少し怯えた顔をしていた。
ニコニコしている間も手は震えていたのを俺は見逃さなかった。
「えっと…おんなじ寮の子達が話していて…リーパーの中で1番強いって聞いたし気になって…それに父さんと関係があるのかなぁと思いまして…」
「ブラッティは…いい奴なんだよ。他人のために自分を汚す奴だった…。でも、限界だったんだろうな。狂って伊月を……殺したんだ…」
「え?」
聞き間違いかと疑った。
ブラッティが父親を殺した奴だなんて。
大好きだった人を奪った奴だって。
その瞬間俺は知らぬ間に殺気が出ていたのか青葉さんに怖がられてしまった。
「どうしたの?伊織怖いよ?…まぁそりゃ父親を殺した犯人だなんて聞いたら怒るよね。でも誰もブラッティを恨んでないんだ。あの子は恨まれるような子じゃないしね。でも…神が残酷すぎただけさ。あんな酷いことをさせるなんてね…」
「青葉さん…僕はブラッティと戦ったら勝てますか?」
「…絶対無理だよ。異世界でなら勝てるかもだけどこの世界のルール的には無理だ。それにブラッティを守ろうとする奴は大勢いるだろうしね。俺もそのうちの1人だし」
「!?…青葉さんは…青葉さんは親友が殺されて悔しくないんですか!?」
「悔しいよ…悔しいけど…これでよかったんだよ」
「もういいです」
「待って!伊織!」
俺は怒りに震えシオン館を後にし寮に帰った。
「いお〜晩御飯食べる〜?」
「…いらない」
「そっか…」
せっかく部屋まで翼が来て聞いてくれたのに俺は翼に当たってしまった。
さっきのことが頭に来たしブラッティのことも悔しい。
それに青葉さんが悪くないのだってわかっているのにあんな風に怒って帰ってしまった自分を殴りたい。
次どう会えばいいのかもわからないし。
明日になったら一つずつ片付けよう、そう思った。
するとしたからいい匂いがして降りてみると氷尾がうどんを作ってくれていた。
「お、やっと来た!いお元気出よったか?」
「よかったよかった!…ねぇいお…僕らが学校に一緒に行きたいって言ったから怒ったの…?だったらごめんね…僕たち気になってはしゃいじゃって…今から星乱に言って取り消しにしてもらうよ…」
翼が残念そうに答えた。
俺はそれを聞いて慌てて返事をした。
「いやあ、翼、ちがうよ!全然別のことでちょっとやなことがあっただけ!2人と一緒に学校に行くのは嫌って言うかむしろ嬉しい!それにさっき当たっちゃって本当にごめん」
すると2人は顔を輝かせた。
「よかった〜!いおが怒ってなかったぁ!僕たちもう嫌われたと思ったんだよぉぉ!」
「ほんまやでいお〜!でも嬉しいって言ってくれてありがと〜!」
「…ふふ…あはは!」
2人は首を傾げた。
「どうしたのいお?」
「なんかあったん?」
「いや、やっぱり俺ここに来てよかった。まだ来て3日しか立ってないけど2人は本当に面白いしいい人だし大好きだ!なんか悩んでたことも小さく感じる!」
「僕もいお大好きだよ〜!」
「わてもや!」
俺は今この瞬間だけを生きている。
昔のことなんてもうどうでもいいんだと思った。
一週間後
あれから何やかんやシオン館にはまだ行けていなかった。
そして今日は…俺たちの学校生活が始まる日だ!
「ほら、早く行くよ〜!」
「おいてくで〜!」
「まってよ!」
そういい俺たちが入学したのは狂華学園。
とても古く良くある昔の学校感がすごい。
そんなことを考えていると1人の老人が校門前に立っていた。
「お、あんた達が星乱とこのやつかい?」
「はい!翼で〜す!」
「氷尾申します!」
「伊織です…」
「そうかいそうかい。これからよろしくねぇ。ここにはリーパーの子もおるから馴染めると思うでぇ。さ、ルールの説明だ。まず一つ。人間を食べない襲わない。これはリーパーだけのルールでなぁ」
「「「わかりました」」」
「3人とも物分かりがよろしい。では行こうか」
そうして俺たちは学校へと入って行った。
「お〜い、忍〜」
校長がそう呼ぶと1人の若い男性の先生が反応した。
スーツを着て綺麗な黒髪に茶色の瞳、凛々しい顔立ちをしていた。
「校長。その子達が編入生ですか?」
「あぁ、そうじゃ」
「よろしく!」
「よろしくお願いしま〜す!翼で〜す!」
翼は元気に返事をした。
「よろしゅうお願い致します。狐乃夜氷尾申します。」
氷尾も行儀良く返事をした。
そして俺は…
「よ、よ、よろ、よろろ、しく、おね、ねがい、しましゅっ、は、はしゅび、い、いおり、で、です」
かみかみだ。
すると先生は優しく微笑み
「翼は元気でいいな!氷尾は京都の人か?方言いいよな!憧れるね!伊織は珍しい苗字だな!でも覚えやすくてそれもいい!」
何ともポジティブな人なんだろうか。
俺も見習おう…。
「それと実はもう一つ。うちのクラスには少々困ったやつが多くて…」
それから先生は問題児達の説明をしてくれた。
俺はこんな奴らと関わりたくないなぁ…
「お〜いみんな〜!入学したばっかだが編入生だ!」
すると周りの生徒達は驚き始めた。
当たり前だ。まだ学校が始まって二週間弱だからな…。
する氷尾が一歩前に出た。
「みなさん驚かせてしもうてすいません。わては編入生の狐乃夜氷尾申します。どうぞ仲良くしはってください」
氷尾が微笑んだ瞬間クラスの女子達は大騒ぎ。
俺だってこんな綺麗な顔したやつに言われたら倒れてる。
そのくらいの破壊力を持っていた。
「みんなびっくりしたよね、ごめんね!僕は榎島翼!良ければみんなと仲良くしたいな!これからどうぞよろしく!」
翼は一言で片付けられる。
可愛いだけでだ。
こんな可愛いやつが来たもんだから次はクラス中騒ぎ出した。
そうして俺の番になった。
「えっと…初めまして、驚かせてしまってごめんなさい。俺の名前は白尾伊織です。変わった苗字ではありますが良ければ覚えてください」
すると周りがシーンとなり一部の不良らしい男子達が騒ぎ出した。
「おいおいもっとなんか言うことねえのかよ〜!」
「おい、不知火!」
先生が怒った瞬間分かった。
こいつは不知火日向。
先生が言っていたうちの1人だ。
クラスのいじめっ子的な立場で数人しかこいつに逆らえないらしい。
「なぁ、面白いこと言わないとここでは生きていけないぜ〜。名前なんだっけ?はく…あ!汚いハクビシンか!ははは!」
「おい!」
「いいよ、翼」
「いお…」
翼が止めに入ろうとしたが俺は腹の底から怒りが湧き自分でしばきあげると決めた。
「何だっけ…君…不知火日向?あ、間違えた。知らない人だ!ごめんね、俺物覚え悪くて!」
「お前…それもう一度言ってみろ!」
「ねぇ、日向くん。自分の言った発言には責任を持たないとダメだよ。それにそんなことしてると…」
俺は日向の耳元まで行きささやいた。
「いつかばくんと食べられちゃうかもね…」
そういい俺は日向に向かって微笑んだ。
日向は腰を抜かし倒れ込んでしまった。
…ん?微笑んだ…あれ?…
俺はこの時自分の異変に気づいた。
普段の俺はこんなこと言われたら絶対ビクビクしているはずだ。
なのに俺は言い返して相手の腰まで抜かした。
絶対無理に決まってる。
じゃぁ今こんなことをしたのは一体誰なんだ?
もしかして…過去の自分…?
少し手掛かりが掴めたような気がして嬉しかった。
でも昔の俺は…だいぶやばいやつだったのかもな。
「えっと…席教えていいか…?」
「あ、はい!すいません!」
「お前らはあそこの1番後ろの窓側から一個開けて3席空いてるからそこ座れ。」
「「「はーい」」」
普通都合よく三席空いてるわけないだろなんて思いながら俺たちは席へ向かった。
席は廊下側から縦に六列、横に七列であった。
俺の席は一番後ろの窓側からニ席めだった。
つばさがおれの右隣の窓側から三席目で氷尾は窓側から四席目だった。
そしてさっき絡んできた日向は縦から一列目の横から三列目にいた。
遠くて一安心だ。
そして俺は隣の、一番窓側のの少女を見た。
その少女は黒いパーあかーを制服の中に着ていた。
「あの〜…編入してきたものなんですがこれからよろしくお願いします。」
すると少女は振り返った。
綺麗な黒髪ロングヘアでオレンジ色の瞳をしていた。
「チッ。やっとかよ」
少女は舌打ちをしまた顔を背けた。
「いや〜ごめんね〜!俺の妹が〜…え…?」
「え…?」
前に座っていた男子が振り返り俺の顔を見て驚いた。
その男子は隣の女子の兄らしく顔が似ており同じ髪と瞳をしていた。
「えっとぉ…顔に何かついてますかね…?」
「え、あ、いや、ごめん!なんでもない!僕は狼部叶。妹は狼部祈。これからよろしくね!」
「あ、うん…」
「なに、いおもう友達できたの〜?いいね〜!」
翼が隣から話しかけてきた。
何だかこの学校では胸騒ぎの予感がする…。
気のせいか。
俺はこの時気のせいで片付けたことを後悔した。
放課後
「はい、はい、そうです。えぇ、運良く俺の席の後ろに来てくれましてね…白尾伊織君…。これから相手するのが楽しみで待ちきれませんよ。ふふふ」