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ユヴェールブラッティ  作者: 月島旭
あなたに愛を、僕に歪みを
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歪んだ愛

「星乱さん!2人が起きたって!」

俺は2人が目を覚ましたという報告を受け病室まで急いできた。

「「いお!」」

2人はベットの上で体を起こしこちらをみて笑っていた。

「よかったぁ!無事に目覚めて!丸二日寝てるから心配で胸が壊れそうだったんだよぉ〜!」

「ごめんなぁ、心配かけてもうて!でももう大丈夫や!」

「僕も元気元気!」

「良かったな伊織」

星乱さんは俺の方に手を置き微笑んだ。

「はい!!」


次の日__

「いお〜!もう僕ら学校行って大丈夫って言ってるじゃ〜ん!」

「だめ!まだ起きたばっかでしょ!」

「起きたばっかいうても一晩もたっとるで!?」

俺は2人がまだ万全ではないのに学校に行きたがるためそれを止めていた。

すると凪が迎えにきた。

「伊織〜!行くよ!お、2人やっと起きたんだ!無事に起きて良かったぁ!心配させんなよ!」

「ごめんって〜!」

「すまんすまん!」

「凪!聞いてくれ、こいつら学校に行こうとしてるんだ!」

俺が事情を話すと凪は黙って2人にゲンコツ一発をすると2人は黙ったまま寮の中へ戻って行った。

「さすがだな凪」

「そんなもんでも」

そうして俺たちは学校へと向かった。


「そういえば最近不知火見ないなぁ」

不知火は俺にボコされた後から学校に来る回数が徐々に減り最近は全くきていないのだ。

「確かに…。何か関わってそうだな。……少し調べてみるよ」

「どうやって調べるの?」

「それは秘密」

「ええ」

そんな何気ない会話をしながら学校に行っていると曲がり角で凪がとてつもなくアホなことを言い出した。

「はぁ、ここでパン咥えた美女出てこないかな…」

「出てくるわけないじゃん。でも俺も美女には会いたい」

はたから見ると俺たちはただの男子高校生。

でも今こうやって話せているのが幸せなんだなとか少し変なことを考えてしまう。

こんな幸せが続けばいいのにな。

そうしている間に俺たちは学校についた。


「はぁ、昼休みやることないなぁ」

俺、凪はとてつもなく暇で後者を散歩していた。

いつもなら伊織がいるが今日は伊織は委員会でいない。

それで教室に最初はいたが女子達が集まってくるのでめんどくさく離れた。

そうして俺がぶらぶら歩いていると階段に1人の少女が座っていた。

「あれ、久しぶりじゃないかね」

そう言われた時俺は思わず抱きついてしまった。

「ちょっと苦しいよ…。やめてくれ給え」

「バカ…今までどこにいたんだよ…俺がどれだけ探したことか…!」

「すまないね"凪沙"」

「…その名前で呼ぶな、伊露葉」

伊露葉は俺の幼馴染でとある事件を機に俺の前から姿を消した。

なのに今ここにいることが嬉しい。会うのは数年ぶりだからな。

それに伊露葉は…俺の片想い相手だ。

「はいはい凪君。大きくなったものだねぇ。そういえば兄はどうだい?元気にしてるか?」

「あぁ」

すると伊露葉は俺の首をじっと見つめた。

「で、君の女癖はいつ治るのだね?香水の匂いがほのかにするよ。女につけられたものだね」

「別に伊露葉には関係ないよ」

「そうかい反抗期。実に見苦しい」

「うるせえ!」

そう、俺が何故女癖が悪いのか。

あれは生まれた時、愛し方を教わらなかったからかもしれな。



「ごめんね、ごめんね、ごめんね」

俺の母は親父に愛してもらえなかった。

それもそうだ。うちの母親は名家の令嬢で病院であった親父に一目惚れして無理やり結婚させたんだから。

親父はあまり家には帰ってこなかった。

母親はそれに嘆き病みいつも謝ってばかりで親父によく似た俺を親父として扱うようにしていたのだった。

毎日地獄だった。母親は毎日俺に愛してると言ってくれとせがんだり、俺にキスをしてきたり。

小さい頃は何をされているか分からずただ愛してもらっていると思っていた。それが自分へ向けられたものではないと知らずに。

親父はたまに帰ってきては俺を外へ連れ出し遊びに行ってくれた。

そして親父その時学生だったため家にはあまり帰ってこなかったのだ。

俺が生まれた時親父は18歳であり母親に無理やり結婚させられたのは17歳であった。

母親との年齢差は11歳差でありとても離れていた。

だが親父はいつも俺に普通の愛を送ってくれていた。

抱きしめて撫でてくれて遊んでくれて。

そしてとある日、俺は公園で遊んでいると1人の男の子に会った。

「君1人?なら僕たちと遊ぼ!」

「お前名前は?」

「え…俺は青葉凪沙…」

「へぇ!いい凪沙って名前いいね!僕は白尾伊織!」

「俺は針山佐久だ」

誘ってくれたのは小さい頃の伊織と佐久であった。

それから俺たちは仲良くなり俺は2人に誘われ師匠の元へ弟子入りし毎日師匠の家へ通っていた。

親父と師匠は知り合いで親父が帰ってきた日に師匠の元へ行くというと「親離れかな…」なんて言って悲しんでいた。

だが母親はそれをよく思わずある日の夜、俺が寝ていると裸の母親が俺に覆い被さった。

そうして黙って俺の服を脱がそうとした。

その時俺は何をされているのかは分からなかったがとてつもなく怖い、そう思ったのだけは覚えている。

俺は耐えきれず「助けて!!」と叫んだ。すると親父が焦った顔で部屋に入り母親を見て今まで見せたことのないような顔をしていた。気持ち悪さと怒りと憎しみが混ざった顔だった。

「このクソ野郎!!!」

次の瞬間、母親は床にのたうちまわり苦しんでいた。

きっと親父はあの時異能を使ったのだろう。

毒のようなもので母親は息を荒げながら怒鳴った。

「嫌だ、嫌だ、なんでこんな目に!あなたが愛してくれなかったからこんなことになったのよ!仕方のないことだわ!凪沙…?あなたなら私の気持ちわかってくれるわよね?お母さんおこと愛してるもんね!?毎日言ってたよね!?」

「お母…さん…?」

俺は震えが止まらずベットの上から母親を見ていた。

それを見た親父は母親のを仰向けに寝っ転がらせ母親の胸を裂いた。

「いた"い!やめて!食べないで!この化け…もの…」

そうして母親は何も言わなくなった。

親父は母親の花を見て小さく呟いた。

「本当に…自分勝手だな…」

「…ねぇ、お父さん……お母さん、死んじゃったの…?」

「………………あぁ」

その時俺は自分を愛してくれていた母親が大好きな父親に殺されたところを見たと思っていた。

「なんで…なんで…!母さんは僕を愛してくれてたんだよ!?父さんが…僕の元に帰ってこないのはあなたが嫌いだからって母さん言ってたんだ!本当だったんだね…」

「違う!俺はお前のことが大好きで!」

そういい親父は俺に触れようとした。だが

「やめて!触らないで!怖い!もう嫌だ!母さん、母さん!」

俺はあの時ああ言ってしまったことを今も後悔している。

親父は悲しそうな泣きそうな顔だった。

そうして小さくごめんと呟いて俺の首を手で打ち眠らせた。

本当は俺も薄々気づいていた。

母親は俺のことを愛していないのも親父は全く悪くないことも。

でもそれよりも親父が母親を殺したということが現実的だった。

それから俺は名前を変えた。きっとあんな化け物につけられた名前が嫌だったからだろう。

周りには父につけられて嫌だからとは言っていた。

そうして俺は凪沙から凪に名前を変えた。

父親がくれた感じだけでいい。そう思ったからだ。

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