何も変わってねえよ。
「蘭悪腐…俺は実は昔の記憶がないんだ…!」
「は?」
俺は蘭悪腐に思い切って伝えた。
すると蘭悪腐は大きなため息をついた。
「はぁぁぁ。んなことなんで先に言わねえんだよぉ…俺むっちゃ恥かいてんじゃん…」
「すんません…」
「すまねえが今日はもう帰るわ。また会おうな…」
「え、ちょ!」
そう言って蘭悪腐はいなくなった。
良かったのか悪かったのかわからないな。
それから俺はするめ寮へ帰った。
その頃、メランコリー本部では
「叶さん、いつまでいるつもりですか?一応敵組織の本部なんですが…」
「まぁまぁ、ちょっとくらいいてもいいじゃないですかぁ」
「ちょっとって言い続けて今日朝からずっといますよね。今夜ですけど?」
「あはは‥帰りたくないもんでね…」
「はぁ…」
そういい話していたのは叶と伊露斗であった。
叶は伊露斗の部屋のソファーでくつろいで伊露斗は机で書類を片付けながら話していた。
「で、今日は何があったんですか?」
「…祈と喧嘩した…」
「はぁ?なんで?」
「もうちょっと伊織のことを探れ無能って…」
「祈さんいいこと言いますね」
「ええ、ひどいよ!傷ついた〜!」
「勝手に傷ついといてください。」
「つっめた」
「いつも通りですよ。」
「ええ…」
叶は持っていたクッションを抱きしめながら足をばたつかせた。
「ところで、君にも姉がいたよね、伊露葉さんだっけ?」
「ええ。三つ子の真ん中ですね。本当に人間なのかってくらい冷たいやつですよ。」
「ええ〜、そんなこと言ってお姉ちゃんのこと好きなくせに〜」
「うるさいですよ無能」
「ひど!…ま、君の家の人間はみんな冷静で冷酷だからね」
「そう…なハズだったんですけどね…。兄はきっとあの人に育てられて温かい人間になったのでしょう。」
「は、あったかい人間ね。父親殺しがね」
伊露斗がそれを聞いた瞬間部屋が揺れ始めた。
「おい‥今…なんて言った…」
ビリビリと音を立てそうな圧迫感に叶はニヤついた。
「父親殺しの息子?」
すると伊露斗は叶に飛びつき首を絞めた。
「もう一回それを言ってみろ。次は生かさない。」
「はいはいごめんって」
すると下の階から鴉月と兎癒が上がってきた。
「大丈夫ですか、アナスタさん!?」
「すごい揺れたけどどうしたの〜?」
2人は心配そうな顔をして伊露斗を見た。
するとまたしたから珠羽と兎真も上がってきた。
「あ〜!どうせ叶さんがなんか怒らせたんでしょ〜!」
「どうやって怒らせたんですか?」
叶は少し笑った。
「ふふふ、ただ……お兄さんを少しいじっただけさ」
すると4人は叶が何を言ったのかすぐさま理解した。」
そして初めに兎真が口を開いた。
「………佐久様達がいなくて良かったですね。いたらきっと叶様は今頃殺してくれだなんて言ってるでしょうね…」
「お〜こわいこわい、じゃぁそろそろ俺帰るわ。またね!」
「もう来なくて大丈夫です」
そういい叶は窓から飛び降りた。
そしてその瞬間ドアが開く音がしそれと同時に珠羽はドアに向かってダッシュして行った。
「ただいま」
帰ってきたのは佐久で珠羽は佐久に抱きついた。
「おかえり!佐久さん!」
珠羽は何故か異常に佐久に懐いていたのだった。
「お帰りなさい、佐久さん」
伊露斗は佐久に笑いかけながら佐久を出迎えた。
「お〜、ただいま伊露斗。天寧さんは?」
すると伊露斗は少し下を向きながら黙って首を横に振った。
「……そうか。ありがとな」
「いえ」
そうして佐久はみんなのいるリビングまで向かった。
リビングに入ると佐久は兎癒に抱きつかれた。
「あ〜!佐久さんおかえり〜!兎癒寂しかったんだよ〜!」
「そりゃぁわりぃな」
「えへへ!」
兎癒が照れくさそうに笑うと座っていた鴉月が立ち上がり佐久の元まで駆け寄った。
「おかえりなさいませ、佐久さん」
「おぉ、座ったままでいいんだぜ?」
「いえ、流石に佐久さんともあろう方を座ったまま迎えるのは私自身が嫌なので…」
「そうか、ありがとな!…あれ、兎真は?」
佐久が辺りを見回すと隣の部屋から兎真が出てきた。
「あ、すいません!隣にいました!おかえりなさいませ佐久さん」
「ただいま、蒼舞と寝露は?」
「寝露さんはシュヴァルツ様のところに行ったきり帰ってこなくて…蒼舞様は任務に行っておられます!」
「寝露の野郎、まだ師匠のとこにいんのかよ…。悪いな、今度連れて連れて帰ってくる」
「すいません、お願いします」
そういい兎真は頭を下げた。
「いや、こっちが悪いから謝んな。俺は天寧さんの様子見てくるわ」
「承知いたしました。」
佐久はリビングから離れ3階にある1番右奥の部屋へと向かった。
そこには立ち入り禁止と貼られた紙が一枚。
そこの扉を開けると1人の男性が寝ていた。
「…やっぱあんたは何年経っても変わらない顔だな。その若作りどうやってんだよ…。そういえば今日伊織と話をしたんだ。記憶はなくてもあいつだった。それに昔のあいつも出てきてくれてな、色々話したんだ。あんたの話とかな。……伊織心配してたぜ?天寧さんは?ってしっかり聞かれちまったよ…。なんて返せばいいかわからなかったから変わらないなんて言っちまった。ま、嘘はついてないからいいよな。……早く起きろよ」
そういい花の水を変え佐久はその部屋を後にした。