実家の屋根裏部屋に殺人鬼が潜んでいた
両親が海外へ移住するということで、実家を空けることになったと連絡が来た。
一年に一度でいいから家の様子を見に行って欲しいと頼まれる。
軽い気持ちで承諾したはいいが、面倒だと思って放置すること数年。
さすがにヤバイと思って様子を見に行くことにした。
「うわぁ……酷いなぁ」
久しぶりに戻った実家のありさまに言葉を失う。
玄関を入った瞬間に感じるかび臭さ。
床にはうっすらとほこりが積もっている。
とりあえず窓という窓を開けて簡単に掃除。
一階を掃除し終わる頃には日が暮れていた。
想像していたよりも汚れがひどい。
持ってきた道具ではとても間に合わないので、買い出しに行く必要がある。
その日は予約しておいたホテルに一泊。
翌日、掃除用具一式を買いそろえ、本格的に清掃を開始。
一階の掃除があらかた済んだら今度は二階。
子供部屋二部屋に両親が使っていた寝室。
一部屋ずつ清掃していくが、想い出の品が次々と見つかり遅々として進まない。
特に昔読んでいた漫画が見つかった時はヤバかったな。
おかげで丸一日つぶれてしまった。
最後は……屋根裏部屋だが。
ここはまぁ、後でもいいだろう。
ホテルへ引き上げ、残りの仕事は翌日へ繰り越すことにした。
そして翌日。
実家の前に車が止まっている。
「君、もしかしてあの家の住人?」
実家に入ろうとしたら、スーツ姿の男が話しかけてきた。
「え? あっ、はい」
「屋根裏部屋に死体があるって通報があってね。
中を見せてもらってもいいかな?」
刑事と思われる男は警察手帳を見せる。
俺は素直に従うことにした。
屋根裏部屋は子供のころから入ったことのない場所。
物置になっているだけで、別になにかあるわけじゃない。
スライドタラップを下ろして屋根裏部屋へ。
登ってみると思いのほか綺麗だった。
ほこり一つなく物も置いてない。
「ほら、死体なんてありませんよ」
「……の、ようですね」
刑事は屋根裏部屋を見渡して頷く。
きっと誰かが悪戯で通報したのだろう。
「ご協力感謝します」
「お疲れ様です」
俺は刑事を見送り、戸締りをすることにした。
一部屋ずつ雨戸と窓を閉めて、しっかりと鍵をかける。
実家は再び真っ暗闇へ。
思いがけないハプニングが起こったけど、とりあえずキレイになった。
当分は放っておいても大丈夫かな。
車に乗ってエンジンをかけていると、あることに気づく。
途端に背筋が冷たくなった。
俺はホテルへは戻らず、警察署へと駆け込んだ。