6話 『変身』
「やっぱり瑠奈も痛い思いさせなきゃダメみたいだね」
「胡桃! 私は胡桃の事を今でも友達だと思ってる! だから、友達として絶対に止めてみせるから!」
願いの込められた指輪からは、眩しく輝く白い光が放出され、私の家を包み込み、やがて光は私をも飲み込んだ。
そうして、暖かく包み込む光に私は目を閉じ、身を委ねるようにしていると、私の服装は次々と変わっていった。白色のドレスに煌びやかな色とりどりの宝石が装飾されていく。
頭にはピンクのリボンが付き、長い私の髪の毛はポニーテールのように纏めあげられる。
まるでアニメに出てきそうな衣装に切り替わった私は本当に自分が魔法少女になったんだと変身し終わって初めて実感した。
私のように両親をよくも分からずに居なくなって、悲しむ人をこの世からなくしたい。その願いを込め続けた結果が、今の魔法少女になった私だ。
「ふーむ。瑠奈も胡桃と戦う気なんだね。良いよ。相手してあげる」
「違う! 私は胡桃を止めたいだけ! こんな風に争わなくたってきっと――」
「うるさい! うるさい、うるさいうるさい! 私の邪魔をしないでよ! そんな風に偽善者のような言葉を並べないで! 私の事をなにも知らないくせに!」
「ち、違う。私はそんなつもりじゃ......」
「もういい。瑠奈も殺しちゃうから。折角殺すのだけはやめてあげようと思ったけど、もう知らない。胡桃の願いの為に瑠奈には犠牲になってもらうよ」
胡桃は本気で私を殺すと決めたようであり、目を瞑って自身の持つ指輪へと願いを込め始めた。
そして、その瞬間に私の時と同じように胡桃の周囲を眩しい光が包み込み、次の瞬間には魔法少女として変身した胡桃がそこには立っていた。
私とはまた違う服装であり、体のラインが分かりやすそうな赤を基調としたチャイナドレスのような服装、それに加えて鉄の胸当てや、腕には鉄のガントレット。
他にも、髪の色はピンクから赤色のツインテールへと変わり、耳に光るピアスも綺麗な赤色になっている。
「さてと、変身までしちゃったし、本気で殺すから覚悟してね」
「待ちなさい。そう簡単に魔法少女二人を殺せるとは思わないことね」
「へぇ。もう回復しちゃったんだ。確かに、二人を同時に相手にするのは少し分が悪そうだね。ま、今回は胡桃のお披露目ショーって事で勘弁してあげる。次会った時には殺してあげるから、ちゃんと生きててね」
あそこまで威勢を放っていた胡桃が、こうも簡単に引き下るなんて思ってもいなかったが、二人の魔法少女と戦うのはリスクが大きいと判断してくれたのだろう。
当然、そもそもとして初めて変身した私など戦力としては雑魚同然であり、数にすら数えられないぐらいなのだが。何はともあれ、窮地は脱したと言える筈だ。
「えっと、助けてくれたり、色々ありがと......なんて呼べば良いのかな?」
「霧香で良いわ。それよりも、戦闘にならなくて良かったわね。まぁ、あの子も力の差が分からない訳ではないみたいで助かったわ」
いつの間に変身していたのか、霧香の服装は、白と紫を基調にしたミニスカートとお腹は空いている服へと変わっており、インナーに加えて胸元を守るようにして胸当てが付いている。
更には、首元にはマフラーが巻かれており、黒色のフード付き羽織りまでも身につけていた。
その立ち姿はとても凛々しく、思わず見惚れてしまいそうになってしまうほどだ。




