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ウィッチ・コントラクター  作者: ねぎとろ


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最終話 『願いの先、平和な未来へ』

 至る所でビルや建物は崩壊し、最後に私と北の魔女の槍がぶつかった場所は隕石が衝突したかのような巨大なクレーターまでもが出来ている。

 そんな光景を見れば、霧香と胡桃、いや、私に託してくれた全ての人たちの想いがどれだけ強かったのかを私は知り、一人では成し遂げることが出来なかったと再認識した。


「皆、ありがとう。最後は私一人で成し遂げてみせるよ」


 寂しくなった街を見届けた後、私は目を閉じて指輪へと願いを込めた。

 全ての魔女と魔法少女の魔力を込めた影響か、私の体は白く輝きながら宙へと浮かんでいく。

 が、それでも動じず私は祈り続けた。


 そうして、私の中の魔力が尽きた時、私の視界には戻り行く世界と人々が見えた。

 しかし、それと同時に崩壊していく私の体と魂。

 だけど私に悔いはない。これこそが私の願いで間違いないのだから。

 託された願いを全てとは言わないが、皆が幸せになる世界。


 例え私の存在が皆から消えたとしても、胡桃や霧香、皆が幸せならそれで良いのだ。


「でも、願いが叶うのなら、最後に皆に会いたいな......」


 みんなの記憶からも消えてしまう事は理解している。それでも、私は消えるその前に両親にも、胡桃にも霧香にも会いたくなったのだ。


 叶うわけもないワガママで、寂しくなるから口に出た言葉。

 そうだった筈なのに、私の背中に突然生えた二対の翼は私をどこまでも上へと昇らせていき、やがて天国かのように思える真っ白な世界にたどり着いたとき、私の最後の願いは叶った。


「瑠奈! 瑠奈の願い、叶ったんだね! おめでとう!」

「うん。瑠奈、ありがとう。でも、私が願いを叶えることが出来たのは二人のお陰だよ。こちらこそ、今までずっとありがとね」

「んー? 大丈夫? 今にも泣きだしそうな顔してるよ......?」

「そうよ。願いを叶えたのにどうしてそんな悲しい顔をしているの?」

「......ううん。気にしないで。私は最後に二人に会えただけで嬉しいの」


「......はぁ。そういう事。やっぱり貴方は自分を犠牲にすることを選んだのね」

「瑠奈、それどういうことなの!? どうして!?」

「これしか方法がなかったの。でも大丈夫。私の願いもちゃんと叶うから!」

「待って! 待ってよ! 一緒に帰ろうよ!」

「ごめんね。私はもう行かなくちゃ。私にとって、二人はいつまで経ってもかけがえのない親友だよ。絶対に、絶対に幸せになってね」


 涙を流しながら更に上へと上昇していく私に対して、胡桃はまだ叫び続けている。

 声は聞こえないけれど、最後に二人が発していた言葉は、口の動きを見れば分かった。

「絶対に忘れない」という言葉だ。


 それはこれから消えていく私にとって、なによりも嬉しい言葉であり、私はその言葉を自身の胸へと刻んでから、一番上へと昇っていった。

 そうして一番上へと辿り着いた時、私の本来の願いは、長い時を経てようやく叶うことになった。


「お母さん! それに、お父さんまで!」


「えぇ。貴方を待っていたわ。ここに来たってことは願いを叶えたのね」

「うん。死んじゃいそうになったけど、それでも私は頑張って願いを叶えたよ」

「そうか。やっぱり、うちの娘は凄いな! 本当にお前は自慢の娘だ!」

「えへへ。そうかなぁ。そうだと良いな」


 久しぶりに感じた両親の温もり。心を暖め、ずっと一緒に居たいとさえ思ってしまう。

 けど、無情にも会える時間はとても短く、別れの時間はすぐにやってきた。


「瑠奈? 手を離してどうしたの?」

「そうだぞ。これから皆で帰るんだろ?」


「ううん。それは出来ないの。ねぇ、お父さん、お母さん。私、二人の子供で良かったよ。寂しい時も確かにあったけど、こうして最後に二人から幸せが貰えたから大丈夫。だから……もう行くね。ありがとう、私を育ててくれて、最後に幸せをくれてーーとっても嬉しかったよ」


 両親の握ってくれていた手を離した私の体は消えていく。

 けれど、私は幸せだ。こうして消えていく時にも涙を流してくれる人は居るし、お別れをすることも出来た。


 ――だから、今更消えることになっても私の中で後悔なんてない。



 こうして、荒れ果てた世界は一人の魔法少女によって救われた。

 何も知らない無垢な少女は世界の為に、友の為に、皆の為に犠牲になった。

 けれど、その事を誰も知る由はない。

 なにせ、今のこの世界には魔女も魔法少女も存在しないのだから。

完結致しました!

ありがとうございました!次回作は一週間後程度を目安に出したいと思います!

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