45話 『私の願い』
短くてごめんなさい……
「私の願い、それは――『今までの全ての魔女と魔法少女を救い、壊れてしまったこの世界を元に戻す事』。託された願いを全て叶えることは私には出来ない。でも、それでもこんな世界じゃなければ会いたい人にも会えるし、笑顔だってもう一度見られる。私の願いで結果的に幸せじゃなくなってしまうかもしれないけど、魔法少女や魔女じゃないだけで、きっと沢山の道が見つけられると思うから」
これが皆から託された願いを繋ぎ合わせ、私が決めた願い。傲慢にも神様でしか出来ないような、有り得ない願いだ。
「叶う訳がないわ。いいえ、むしろそんな願望を持つことすら許されない。良いわ、お返しに私の願いも教えてあげる。私の願いは『世界を壊す事よ!」......だから、貴方みたいな人は私とは分かり合えない。灰すら残さずに殺してあげる。一撃よ。たった一撃で殺すわ」
私の願いを聞いた北の魔女は、今までに感じたことのないほどの圧力と共に、先程までとは打って変わって、殺意が魔女から溢れ出した。
そして、それと同時に生み出されるのは無数の武器が組み合わさり、凝縮されていく一本の槍の姿。
それこそが魔女の持つ最強の武器であり、私はほんの一瞬、その槍と殺意に気圧されてしまったのだ。
しかし、槍が手元に渡る直前に私はなんとか持ち直し、キューブを取り出して魔法を発動し、魔女を閉じ込めて圧縮を始めた。
「死になさい」
だが、言葉と共に放たれた槍は一度も破壊されたことのないキューブを易々と破壊し、風圧だけで地面を抉りながら私の心臓を貫こうと迫りはじめた。
キューブがガラスのように簡単に破壊され、私の脳に一瞬の隙が生まれ、私の行動はまたしても一歩遅れてしまった。
その結果、勢いを増す槍に対して咄嗟に使った水の力では勢いを殺しきれず、影から呼び出す漆黒の布でも抑えつけることは出来なかった。
けれど、幸運にも勢いを殺す事は出来ずとも軌道を少しだけズラすことでき、槍は私の脇腹を掠っていくだけで済んだ。
「......っ」
掠っただけでも血は流れ、痛みが脳を支配しようとするが、唇を噛むことで私はそれを抑える。
そして、次の攻撃が来る前に私は母の戦い方を思い出して模倣し、魔女の背後へと姿を消して近付いた。
――でも、私が槍を背後から振るうその瞬間に北の魔女はこっちを見ることもなく攻撃を防ぎ、自身の力を使って無数の武器を造り出し、私の全身を貫いた。
「うそっ、なんで......」
「一撃で死ねば良かったのに」
血が吹き出し、痛みで今度こそ気を失いそうになるが、それでも私は気力を振り絞り、魔女の力である水を呼び出して、水の中に魔女を閉じ込めた。
そして、その外側を影から呼び出した漆黒の布で巻いていき、動けば激痛が走る中で私は魔女から距離を取る。
だが、私の攻撃によって稼げた時間など数秒程度であり、私が距離を取ったその時には北の魔女は水の中から出ており、布を引きちぎっていた。
「まずい!」
危険な気配を感じ取った私はすぐさま目の前に無限の水の壁を作り出す。
そして私の予想は的中し、水によってなんとか防げているが、北の魔女は無数の武器を私目掛けて放っていた。
そんな中、水を出すだけでも魔力を大量に消費し、痛みで朦朧としている私は魔力操作を上手く出来ず、私の作り出す水の壁は段々と弱くなっていった。




