1話 『始まりの日』
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その後は、不定期、或いは3日に1度ペースかな?と考えております。
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酷く濃い霧の中で私は立ち竦み、辺りを見渡していた。寸分先も見えない程の霧の中、私は妙に存在感のある黒いモヤへと引き寄せられるように足を進める。
近づけば近づくほどに黒いモヤは鮮明になっていき、その全貌は明らかになる。
『――瑠奈』
私を呼ぶ声に引き寄せられるかのように足は勝手に動き、黒いモヤへとどんどん近づいて行く。
『最上瑠奈。貴方は願いのために全てを投げ捨てられるのかしら?』
黒いドレスに身を包んだ女は顔を引き寄せて笑いながら、私へと訊ねる。
――そして、私は自らの願いの為に女の問いに答えた。
「瑠奈―! 起きてー!」
気持ちの良い太陽の光が顔に当たると同時に、聴き慣れている声が耳へと響いて、私は重たくなっていた瞼を開けることにした。
「もう! やっと起きた! 瑠奈は寝過ぎだよ! 昨日も夜更かししてたんでしょ!」
いつまでも寝ていた私のことを起こしてくれたのは、学校の中で唯一の友達である西園寺胡桃だった。特徴的なピンク色に染まったツインテールや、耳に空いているピアス、着崩した制服等、個性が溢れている友達だ。
「ごめんごめん。まさか胡桃が起こしてくれるなんて思ってなかったからさ。......所で、今ってもしかしてお昼?」
「そうだよ! もうお昼なの! だから胡桃だって起こしに来たんだから! ほらほら、時間無くなるから早く行こ!」
「ちょ、ちょっと、寝起きでボーッとしてる中引っ張らないでよ?!」
胡桃に手を引かれ、胡桃と共に学校の屋上へと来ていた。お昼休み以外は閉鎖されている屋上には既に人が集まり、席を取りづらくなってしまっている。
人が集まっている光景に対し、胡桃は私の方をジーっと見つめながら頬を膨らませている。まぁ、私が原因なのだから、怒らせてしまうのも無理はないだろう。
「あー。ほんとにごめん! 今日のおかずの唐揚げあげるから許して!」
「もうっ! しょうがないなぁ。今日はとっておきのお話もあるし、唐揚げで手を打ってあげるよ!」
「とっておきの話? なにそれ?」
「それは後のお楽しみ?」
ニヤニヤと笑っている胡桃が歩き出し、人の居ない屋上の隅で、太陽の光が届かない影になっている場所へと座り、各々お弁当を食べ始めた。
「で、今日は怪談? 噂話? オカルト系の話?」
「うーん。噂系のお話だよ! 瑠奈と初めて会った時に話した噂よりも凄いんだから!」
「私と初めて会った時に話した噂って、あー神隠しの話だよね」
「そうそう! 正解! 神隠しの話だし、私と瑠奈が仲良くなった日!」
胡桃と仲良くなった日。それは正直あんまり思い出したくないことの方が多かった。
――初めて胡桃と会った頃、私は学校に友人など居なかった。雰囲気が暗かったのもあるが、それよりも私の両親が居なくなった事件が主な原因だ。
丁度、その頃はまだ両親についてのニュースがテレビで流れていたのだ。
可哀想な人を見る目、怖がる目、色んな人が居た。けど、そんな時に私の前に現れたのが胡桃だった。
私と出会った時から胡桃は噂やオカルトなんかが大好きで、私の両親が突然行方不明になった事に興味を持ち、話しかけて来たんだと思う。
そうして、その時に話されたのが神隠しについてだ。
そう、胡桃は私の両親を探すヒントになるかもしれないと思って神隠しについて教えてくれた。
……ただ、結局噂を聞いても両親が見つかる事はなかった。
「おーい、まだ眠いの??」
「ううん。ちょっと胡桃と初めて会ったときのこと思い出してただけ!」
「なにそれ! 照れるじゃん!」
「照れなくて良いから! さ、お昼休みが終わる前に話してよ。ちょっと楽しみなんだからさ」
「はーい! それじゃ、ご清聴お願いします!」
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