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チームカトリーヌ

翌日、昨日のメンバーで食堂の個室に集まった。


暗くなり始めていた事もあり、昨日は具体的な内容までは話せなかったからだ。


カトリーヌちゃん、エディス、ルオークの3人がまるで結託でもしてるかのように、いちいち人の言う事に突っ込みを入れてくるから話しが進みやしない。


とりあえずカトリーヌちゃんが聖女として予知夢を見るという設定にして、苦しむ人々、学園の扉、麻薬の花畑の夢をみたという事にして、地下の花畑の扉探しを手伝わせる事にした。

昨日の話はそこまでである。




「それで、チームカトリーヌってのは何なんだ?」


4人がそろうなり、ルオークが早々に聞いてきた。


「込み入った話は食べ終わってからにしようよ」

「いいから話せよ。ここにいる全員気になってるんだからよ」


ルオークに言われて見ると、エディスもカトリーヌも頷いた。


「そんなに気になるなら仕方ない。その名の通り、僕と同じ前世の記憶を持つカトリーヌちゃんをサポートし、随時皆で最善を話し合い、幸せに導いてあけるお助けメンバーの事だ」

「はあ?何だそれ?」

「不器用なカトリーヌちゃんはやる事も不器用でもう任せておけなくって。僕だけでも良かったんだけど、ほら、強引に進めてっちゃうでしょ。反省して、他の人の意見も聞こうと思ってさ。まあ、巻き込まれてやってよ」


ニコニコと笑って3人を見るが、あまり反応は良くない。


「ちょっと会長、無茶苦茶な事言わないでください!も〜!私の事は自分でやってくのでサポートしてもらわなくて大丈夫です!こんなの迷惑ですよ、分かってます!?」


さっそくカトリーヌが突っ込んできた。


「いや、カトリーヌちゃんは信用出来ない!聖女として今後やってけるのかも、男の選び方も全て心配だ!だからこそのチームカトリーヌ!僕らに任せて安心して幸せになるがいい!」

「お、男って…………」


カトリーヌはエディスとルオークを見て顔を赤らめる。


「カトリーヌちゃんって、すっごく男を見る目がないんだよ。実際の男の意見も聞かせてやって」

「会長!もう信じられない!やだーっ、もう!」

「照れるな照れるな。こいつらは男じゃない、もう身内だと思っていろいろ話してこうよ」

「話せませんよ!男の人と女の人は違うんですよ!」

「そう、だからこそ違う視点の意見が聞けて参考になる」


ふっと笑ったシルビアに、カトリーヌは呆れた顔を向けた。


「話の通じなさに驚くでしょ。シルビアは勝手にサポートするつもりでいるから、こうなったら諦めて任せてやって。僕も諦めて協力してくからさ」


ニッコリと笑ったエディスを、カトリーヌはじーっと食い入るように見た。


「完全に尻に敷かれてますね。長年一緒にいすぎて感覚が麻痺してしまってます。王太子として、男としてビシッと言ってやらないとどこまでも調子乗っていきますよ」

「あはは、それを素直に聞くシルビアなら楽だったんだけどね」

「おまけに恋人って…………。会長に振り回されるエディス様の先行きが目に浮かぶようです」


カトリーヌの言葉にヤバっと思ったがもう遅い。


「恋人って誰と誰がだ?」


ルオークが真面目な顔ですぐ問い詰めてきた。


あ〜、カトリーヌちゃんに口止めしとくの忘れてた。


「誰って、会長とエディス様でしょう。え?もしかして………知らなかったんですか?」


カトリーヌはルオークを見て驚いた顔をする。


うわー、誤魔化す間もなく言われちゃったよ。


「は………?だってこいつら婚約破棄して…………」


ルオークはそうだよな?というような顔で、僕とエディスを見た。


「…………ごめん、黙ってて」


少し照れながらも、すまなそうにエディスが笑う。


すぐに白状したな。じゃあ、僕もそれに乗っかっとくか。


「ごめーん、もう少ししたら言おうと思ってた」

「お前棒読み!どうしてそんな事なってるんだよ!?なら何で婚約破棄したんたよ!?つーか、俺に一言もなしって酷くないか!?」

「実は付き合いたてほやほやなのだ」

「絶対嘘だろ。何が1番ショックって、それをお前らじゃなく口を滑らしたカトリーヌから聞いた事だよ。破棄の時のふざけた演技につきあわせたり、ずっと一緒にいて俺はお前らの全部分かってるつもりだったのに、隠してたなんてな」


苛ついた声を出し、ルオークは不機嫌そうにプイッと横を向いた。


「ごめん、皆に知られてもいいと僕の覚悟がついたら言うつもりだったんだ。カトリーヌちゃんにはアクシデントで知られちゃったんだよ」

「けど俺にくらいは言っても良かっただろ。俺が言いふらすと思ったのか?」

「思わないけど、破棄したり、くっついたり、そんでまた別れる可能性もあるから、変に気を揉ませるより、はっきりしてから言いたかったんだ。ごめん、拗ねるなよ」

「拗ねるだろ、長いつきあいなのに俺だけ除け者にして。せめてエディスは男同士、こっそり教えてくれても良かったんじゃないのか?」


ルオークに睨まれ、エディスは気まずそうに目を逸らす。


「だってシルビアが内緒にしてって言うから」

「だってじゃねーよ。友情よりも女を選んだんだな」


ムスッとしたルオークに、エディスは困ったように笑った。


「まあそう言わないで、ルオークなら分かってくれるだろ。これまで散々悩んできた僕の気持ち。誰よりもルオークには祝福してもらいたいから、シルビアの気持ちがしっかり固まってから伝えたかったんだ」

「まあ、これまでいろいろあったからな。お前の気持ちも分からないでもないけど…………」

「いつだって僕の力になってくれただろ。1番にはルオークに知らせたかったんだ、本当に」

「エディス………」


優しく微笑むエディスに、ルオークは怒りの感情を解くようにふぅーと息を吐いた。


「よし、これで解決っと。長年の男同士分の友情っていいねぇ」


サラッと言った僕を、まだ不満そうにルオークが睨んでくる。


「お前は全く悪いと思ってないだろ。そうゆうとこムカつく。今度エディスと一緒に隠し事してやるからな」

「それでルオークの気が済むならそうすればいいさ。男としての小ささを披露する事になってもやるがいい」

「お前はホント黙ってられないな」

「そうゆうふうにしか生きられない不器用な僕を許せ」

「命令形か?おい」

「ところでもう脱線しまくりなんだけど。話進まないんだけど。チームカトリーヌまとまり悪いな」


するとすかさずカトリーヌが口を出してきた。


「勝手に人の名前使わないでください!本当にサポートいりませんから!」

「まあそれは置いといて、とりあえず食べとこうか」


一行に話が進まないので、このままでは無駄に昼休憩が終わってしまう。人数が増えると話が逸れて駄目だな。


食事を口に運びながら、それぞれ3人を見る。


「食べながら聞いてくれ。話が進まないから、一旦黙って僕の話を聞いてほしい」


その言葉に、とりあえず3人は頷いてくれた。


よし、この機に一気に進めるぞ。


「これからはチームカトリーヌとして、まずは彼女のみた予知夢を僕らで証明していくんだ。聖女の予知夢の信憑性は確立されてないけど、様々な話を聞いていて僕は信じられると思った。僕を信じてエディスとルオークにも協力してほしい。学園の持つ闇を明らかにする為に」


それに対し、2人は一回顔を見合わせてから黙って頷いた。


うーむ、やっぱり仲良いなこの2人。


「地下の入り口を探すのにカトリーヌちゃんは1人だと危険だから、必ず誰かとペアになるように。学園長の動きには気をつけてバレないよう、今後授業の後は毎日探索しよう。校舎北側のどこかにカモフラージュされた秘密の扉があるはずだ」


おお、いいよいいよ〜。誰も口出さないと話スパスパ進む。


「学園の闇を暴いたら、騙されやすそうなカトリーヌちゃんの補佐として僕も教団についてって話を聞いてこようと思う。聖女としての方針を立てていかなとな。それに並行して、カトリーヌちゃんの理想の夫探しをする」


その言葉に、カトリーヌは食事を詰まらせむせ込んだ。


「理想の婿に、理想の夫か。シルビア理想好きだね。でも、結局選んだのは負債まみれの僕だったしね。理想と現実は違うから、カトリーヌの気持ちもちゃんと考慮してあげてね」


エディスはちょっとだけ照れながら、ふふっと笑う。


ああ、もう可愛いな。


「分かってるよ。理想は描いていても、どうにもならない気持ちったあるもんな。カトリーヌちゃんの気持ちを優先させるよ」

「ちょ、ちょーっと待って!何2人でサラッと人の人生介入しようとしてんですか!?夫って、そんな心配してもらわなくて大丈夫ですから!」


咳き込みながら、涙ぐみ必死な顔でカトリーヌが訴えてくる。


「うん、任せとけ。カトリーヌちゃんって、とても面食いなんだ。まずは第1に顔、その中で性格が合う奴をみつけてあげるから」

「って、人の話聞いてます!?おまけに第1に顔って、そんなんじゃないですからね!中身も重要ですから!」

「またまた〜カッコいい男が好きなくせに〜。あとは、財力や家柄がいい男だっけか」


だが、カトリーヌの返事の代わりに真っ赤になった。


「酷い…………。男の人の前でそんな事わざわざ……」

「えぇっ?酷いの、これ?僕なんていつも理想の婿について語ってたよ。あくまで理想、こうゆう人がいいって自分の意見はしっかり言わないと。曖昧にされて、これ違う、あれ違うが1番困る。自分の事なんだから、しっかり主張しなきゃ」

「……………なんか会長とは一生分かり合えない気がします」

「も〜、一生とかマイナスに考えるの禁止。それとさ………」


チラッと黙っているルオークを見る。


「昨日も言ったけど、カトリーヌちゃんの夫候補にルオークは外れてもらうから。お前じゃ彼女を幸せにできない」


ビシッと言い放つと、カトリーヌはギョッとし、この話題になると思ってたのかルオークは体を強張らせた。


「会長、ルオーク様私のことを好きって訳じゃないんだし………」

「好きだよ、気づいてるだろ。一時はその思いを応援しようと思ってた。その時は見た目華やかなカトリーヌちゃんに騙されて、もっと違う性格だとも思ってたし」

「ビッチだと思ってたなんて最悪です」

「ビッチなら良かったんだ。誘惑に、応戦、恋の駆け引きとかやってるようならさ。でもカトリーヌちゃんは臆病で一生懸命だけど一歩踏み出すことができない普通の女の子だった」


ルオーク向きの女の子じゃない。同じようにカトリーヌちゃんにとってもいい相手じゃない。


「…………だから何だよ?いくら好き勝手やってるからって、そんな事までお前に指図されなきゃいけねぇのか?」


明らかにムッとしながらルオークは睨みつけてきた。


「ルオークが自分でも踏ん切りつかないようだから言ってやってんだよ。もっと夢中に無茶やって、我を忘れるくらいガンガン行くんだと思ってた。なのにお前は何やってんだよ、迷ってばっか」

「うっせぇな。お前に関係あるかよ」

「大ありだよ!僕は全てに関わってんだろーが!だいたい本当に好きならさっさと告白して、婚約破棄するくらいの意気込みみせてみろっつーんだよ!迷ってんだろ!?それがお前の答えなんだよ!」

「そりゃあ迷うだろ!人生を左右するんだ、それを簡単に決めれる訳ねぇだろ!」


ルオークはテーブルに手をついて立ち上がる。


ゲームの中でのルオークは、カトリーヌの為に婚約も破棄し、家門でも矢面に立ち全面的にカトリーヌにつくしたと、こちらの世界のカトリーヌちゃんは言っていた。

それが僕の知ってるいつものルオークの姿だ。

本当に好きなら、自分の信念を持って戦える男だと思ってる。


それが、こんなに迷って、答えも出せないまま、でもそれにまだ縋り付くルオークの姿はらしくない。ずっとこのままで、いい訳ないだろ。


「こんな美少女滅多にいないもんな。一目惚れはしたけど、でも決め手がない、心が動かされないんだろ。だから迷ってるんだ。僕の知ってるルオークはもっと前に突き進んでいく男だ。ちゃんと決断できる男なんだよ」


僕も席を立ち、ルオークと向き合った。


「もう充分迷っただろ。それが答えなんだよ。勢いで2人が結婚なんてなったら、後々こんな筈じゃなかったって絶対後悔するよ。だから僕は反対する」


向き合ったルオークは、さっきまでの勢いはなく、僕の言葉に動揺しているようだった。


「カトリーヌちゃんもそれでいいよね?」


突然話題を振られたカトリーヌはビクッとする。

だが、チラッとルオークを見ると意を決したように口を開いた。


「会長はホント嵐のような人ですね。私の事勝手に話し合って、こんな滅茶苦茶にしてどうするんですか。もうこんなになっちゃったから、だから私が決着をつけます」


カトリーヌは緊張の面持ちでルオークを見る。


「実は好かれてるかなとは思ってました。でも、それ以上踏み込んでこないルオーク様の気持ちはそこまでだと思います。私も曖昧にしないではっきり言います。迷うくらいなら選ばないいでください!私の事はすっぱり諦めてください!」


きっぱりとカトリーヌに言われ、ルオークもさすがに面食らった表情になった。


「言った………言った!そうだよ、カトリーヌちゃん!その調子だよ!私に相応しい男は私が選ぶわって言ってやりな!」

「あの、もう会長は黙っててもらえますか」

「そんな〜、言わせてよ!」


その時、会話を遮るように予鐘が鳴った。


もうそんな時間?でもまあ、やるべき事は言ったからこれで良しとするか。


「じゃあ、各自今日の内容を自分なりに考えて。そんで、授業後に、校舎北側に集まるように。以上、食器を片付けて解散!」


3人に向けてキパッと言うと、一瞬の沈黙の後、3人はとりあえず頷いた。


よし、これで方針は決まった。

後はそれを進めていくだけ。


でも、あと1つ考えてる事があるけど迷っている。

彼を巻き込むかどうか。

危険になるかもしれない。本来なら迷う時はそのまま進まない。


けど今は関わらしてあげたい自分がいる。


さあ、どうしようかな……………。

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