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ナイルの想い

雪の降りしきる街を窓越しに見る。

街の至る所にある地面に埋められた熱の魔石のおかげで、街に雪はそう積もってはなかった。


それでも外に出れば、吹き付ける冷たい風を感じかなり寒い。


学園の方が使用されている魔石の量も多く、風よけのシールドの魔法もかかっているので暖かい。それだけ貴族からの寄付も多く金もあるという事だ。



「はー、寒かったですね」


ティーエが温かい飲み物のコップを握りしめて暖をとりながら言った。

相当着込んできてたのに、鼻も真っ赤になっている。


「そうだな。寒かったな」


ナイルはふぅ、と息をついた。


ここ最近は時間のある時にティーエと街に来て、ティーエの姉と友人だったという花屋の女性を探している。

だが、学都というだけあって学び舎が多く、行事で花が使われる事の多い為、花屋の数が非常に多かったので今だにその女性を見つけられずにいた。


外があまりに寒かったので、今は街の食事処にて暖をとっているところだ。


窓を見ると、こちらをチラチラと見る女性客達の姿が映っていた。


俺の見た目がいいからだろう。

気にしちゃって可愛いな。そう思いはするが、好きとか付き合いたいとは思わない。


ナイルはまたため息をつく。


思った以上にショックだ。


ここに来る前に、偶然シルビアと王太子に会った。

それでここ数日、王太子が異様なテンションになっていた理由が分かった。

2人は友人として接しているようだったが、俺には分かってしまった。王太子はもうデレッデレなのでおいおい、バレちゃうよと思ったがそれよりもシルビアだ。あいつが女の顔して愛おしそうにそんな王太子を見たのを俺は見逃さなかった。


婚約破棄をする前は、確かにあの2人は友人だった。婚約はしてても、友人の延長線上の関係だったはずだ。

それが婚約破棄してから思いが通じ合った恋人みたいになっちゃうなんて。あれは何もなかった訳がない、あいつらこっそりと付き合ってんじゃねーの。


別に俺のだった訳じゃないけど、好きだとか意思表示してた訳じゃないけど、俺が救われたあの日から誰よりも特別な女の子ではあった。

でも、あいつは絶対俺みたいなのは選ばないって分かってた。それでも、もし選んだなら例えどんな事があっても俺と添い遂げる強い信念を持った奴だという事も知っている。

あいつならこの駄目な俺の全てを受け入れてくれるだろう。


けど相性というものがある。俺が想っても、俺はシルビアの眼中にも入らない相手だ。可能性は全くなかったけれど、高潔ですらあるあいつは誰の手にもおえる奴じゃないし、孤高の存在として誰の物にもならないと思っていた。


それなのに、あんな女の子な顔しちゃって。めちゃくちゃ可愛いじゃんか。

ああゆう顔も出来るんだって、驚いたのと同時にショックだった。

婚約してたって気高いあいつの心は誰の物にもならないと思ってたのに、そう思ってたのは俺だけで、あいつだって普通に人を好きなる気持ちを持った女の子で、それに気づいた時には他の人に奪われた後だったという結果だ。

あいつを理想化しすぎてて、超人か聖人のようだかに思っていたけど、1人の女の子だったのだ。


考えてると気持ちが沈んで、またため息がもれた。


「さっきからため息鬱陶しいんですけど」


ティーエが飲み物にふーふーと息をかけながら言う。


「あー、それはごめんね。俺失恋しちゃって沈んでるから」

「………そうですか。それは悲しいですね」

「悲しいって言える程何もしてこなかったし。ただ、何で何もしてこなかったのか悔やまれるな〜って今更思ったり」


小さく笑い、ナイルは飲み物を口に運ぶ。


「今から盛大な独り言言うけど聞き流してね」


カップをテーブルに置くと、ナイルは自分の手元を見た。


「………今更後悔っていうの。みっともなくても、可能性が無くても足掻いてみれば良かったな〜、なんて。女だって分かってたよ、でも遥か高みの女で手の届かない高潔な女だと思ってた。そう思い込んでた」


絶対に手に入る事なんてないと思っていた。


「でもあんな顔しちゃうような、普通の女の子の部分もあったんだよ。恋してますみたいな、も〜何あれ?反則でしょ、可愛すぎるんだけど」


普段は我が道に敵なしみたいな、自信と誇りに満ち溢れた顔してるくせに、いきなり女の子みたいになっちゃって、ギャップが可愛過ぎる。

ああゆう普通の面を見ると、俺でも押しまくって情に訴えまくってればどうにかなってたんじゃないかと思えてしまう。


「俺は自分で言うのも何だけど、諦めるのが早いんだよな。無理だと思っちゃうと、すぐ引いちゃう。そうすればあまり傷つかずに済むだろ、ずっとそうやって生きてきたから癖のように身についちゃったよ」


ナイルは指でトントンとテーブルを叩いた。


「人の物になってから後悔して羨ましがっても仕方ないんだけど、あいつが誰かを好きになるなんて考えてもみなかったから………。まあ、とにかく俺が悪い。努力もしてこなかった、すぐ諦めた、そんな俺にどうこう言う権利はない。でもこう重苦しい気持ちになっちゃうんだよな〜」

「それって………カトリーヌさんではないよね?」

「ああ、違うよ」


名を出されるまで、カトリーヌの事などすっかり忘れてた。


「あー、俺って駄目な男だな。すぐ楽な方に逃げる。こんな駄目駄目な俺でも心の底から愛してくれる人いないかなって寂しくなっちゃって、一時的な温もりや救いを女の子に求めちゃうんだよ」

「そんな感じですよね、先輩って」

「そう言うなよ、俺だって苦労してんだぞ。妾の子って知ってんだろ?10歳の時に母親が俺を認知しろって伯爵家の父親の元に置き去りにしてった。あの家には正妻もその息子の兄もいたから俺の居場所なんかなくて酷い扱いを受けて俺を捨てた母親を恨んだよ」


ナイルは乾いた笑いを浮かべティーエを見る。

ティーエは何も言わず、ただじっと俺を見ていた。


「11の時に伯爵邸を抜け出して、数日かけて母親の元へ戻ったんだ。そしたら病気で死んでた。自分が病気で長くないって分かってたから俺を父親のとこに置いてったんだって分かったよ。恨む相手もいなくなって、帰る場所もない、子供が1人で生きてける訳もなく俺は伯爵家に戻ったよ。そのまま帰ってこなければ良かったのになんて言われたっけ」


でも、そこしか俺の居場所はなかった。


「伯爵家にも居づらくて、俺は街に出て遊び歩いて時間を潰してたんだ。俺は顔がいいから人気もあって、女の家に泊めてもらう事もしょっ中だった。ちなみに、初体験は13歳」


ニンと笑うと、ティーエはあからさまに顔をしかめた。


「あはは、俺発育も良かったし顔いいから。女の人は柔らかくて気持ちいいし、優しくしてくれて居心地が良かった。少なくとも家にいるよりずっと」

「うわ、クズいですね」

「伯爵家の人達からも屑扱いされてたよ。もう俺の人生なんてたかが知れてるし、落ちるとこまで落ちて楽しんでやろうって思ってた。そしたら、唯一の後継者の兄が事故で死んだんだ」

「お兄さんが?」

「大嫌いだったから、ザマーミロって思ったよ。俺にはティーエがお姉さんを思うような気持ちは分からない。正直嬉しくすらあった。でもまさかあんな見下されてゴミ扱いの俺が後継者にされるなんてなぁ」


成人したら、あんなとこ出てってやると思ってたのに。


「あーあ、俺も幸せになりたいな。俺は最低だけど、そんな俺の全てを肯定して受け止めて愛してくれるような器の大きい女性はいないかな」

「でも先輩クズですからね」

「………全くお前は。人の事クズクズってさっきの話聞いてた?それなりに不幸な生い立ちなわけよ、俺」

「けど好きでしょう、クズ呼ばわりされるの」


さらっと言ったティーエの言葉に、一瞬体が固まった。

だが、ティーエは気にせず続ける。


「初めはそうゆう性癖なのかなと思ったんですよ、なじられるのが好きな。でも、それとは違うなって。先輩なじられるとどこかホッとしたような顔するんですよ。自分が1番自分の事クズだと思ってるんでしょ。そうでなきゃいけないみたいな感じもするし」

「何で…………」


何でお前が分かるんだよ。誰もそんな事気づかないのに、ただのクズだと思ってるのに。


「クズだったとしても過去でしょう?クズはクズのままじゃなきゃいけないって訳じゃないし、幸せになりたいならそうなるよう努力したらどうですか?」

「……現在進行形のクズだとしたら?」

「じゃあクズをやめる努力したらいいんじゃないですか。クズって言っても、僕はいろいろ面倒みて協力してもらって少なからず感謝はしてるんですよ。協力ばっかりじゃ悪いから、幸せになる努力僕も協力しましょうか?」


そうくるか。こいつはこいつで、独自の自分の世界を持っていて変な奴だよな。


ふざけてる訳でもなく、真っ直ぐに俺を見てくるティーエを見てふっと笑ってしまった。


「今のところはいいや。とうぶんは1人で足掻いてみる」

「先輩、実は神経質で真面目な気質だから1人で足掻くと堂々巡りしてそうで大丈夫ですか?」

「お前の中での俺ってそんななのね」


もしかして、自分の方がしっかりしてるとか思ってたりして。


「本当不器用な先輩ですね。ちゃんとするなら、好きでもないのにカトリーヌさんにまとわりつくのまず止めたらどうですか?」

「あーそれね、さっき止めようと思った。あいつらの恋愛見たら虚しくなっちゃったし。カトリーヌちゃんは俺の全てを包み込んで愛してくれる感じでもないからな、まっ可愛いんだけどね」


可愛いけどそれだけだったな。心も動かなかったし、それ以上にはならなかった。


「救いを他者に求めるのってどうかと思いますけど」

「そうだな〜。けど自分1人じゃどうにも出来ないもんってあるだろ。誰かにありのままの自分を受け止めてもらいたいって、お前だって思わないか?」

「成る程。他力本願な駄目男の言い訳ですか」

「お前な〜、相当俺にお世話になってるの分かってる?お前だって1人よりも心強いだろ」


すると、ティーエはふふっと笑った。


「冗談ですよ。誰だってそのままの自分でいいんだって認めてもらいたいですよね、分かりますよ。僕も1人で頑張らなきゃと思ってたのが先輩が力になってくれて嬉しいし、心強いのも事実です」

「お〜、素直じゃん。偉い偉い」

「先輩が弱気になってるんで、たまにはね」

「おいおい、お前随分と上から目線じゃん」


全く。顔は可愛いくせに、話すと可愛気のない後輩だ。


「まあ、長い独り言につきあってくれてありがとうな。俺も諦めてばかりいないで、たまには足掻いてみなきゃな。あー、羨ましい。でもあいつめっちゃ惚れてそうだから絶対手放さないんだろうな。はーあ、俺も後悔しないよう生き方を見直さないと」


言っているそばから、またため息がもれた。

それを見てティーエが可笑しそうに笑う。


「先輩って本当卑屈ですよね。だから僕が幸せになれるよう協力してあげるって言ってるじゃないですか」


いい笑顔で笑っちゃって。

けど、口に出したからか悶々としていた思いが少しスッキリした。

いつもの人に依存して慰めを求める形とは違ったけど、これはこれで良かった。ティーエがクズ呼ばわりしながらもその俺を認め、話を聞いてくれたからだろう。

っていうか絶対こいつ俺より上と思ってるよな。




そうして、そこでしばし暖をとった後、あと一軒だけ花屋に寄ってから帰ろうという事になった。


それがまさかの巡り合わせだった。


「えぇっ、君フローラ・ハイネス様の弟なの!?」


大きな声で驚いた顔をしたのは、肩までの短い髪に、元気そうなそばかすの女性だった。


花屋に入って、店員を探してたら突然ティーエがこの女性に肩を掴まれて〝フローラ様?〟と声をかけられたのだ。


唖然としながら、ティーエが〝姉をご存知ですか?〟と言い現在に至る。


「うわ〜似てる〜!えっと、男の子でいいんだよね?髪短いし、服も男物だし。でも、もしや男装女子だったりする?」

「立派に男ですんで!それよりお姉さん、姉を知ってるんですか!?」


興奮しながらティーエが女性に詰め寄る。


「ええ。フローラ様は週1回うちにフラワーアートを習いに来てて、私と同じ歳だから仲良くして頂いてたの」


その言葉を聞いて、ティーエは目を輝かせ振り返って俺を見てきた。


ここも駄目だと思ったのに、本当に見つかっちゃったな。

じゃあ、ティーエの気の済むように早々に昔話でも聞かせてもらって、なるべく早めに帰らないとな。

冬だから日の沈むのも早く、学園までの道のりは真っ暗になるからだ。


「あっ、フローラ様の弟って事は貴族様ね。すみません、馴れ馴れしく話し…………」

「話し方なんでどうだっていいから、姉との事教えてもらいたいんですけど!」


拳を握りしめ、ティーエは真剣な表情で女性を見た。


「………いいですよ。店内では何なのでこちらへどうぞ」


女性は客のいる店内をチラッと見てから、こっちへというように手招きした。


そして、ドアを開け小部屋へと入るよう促す。


「事務室なんですけど、汚くてすみません」


それよりも、話を聞きたくてティーエはうずうずしていたが、案内されるままに簡易の椅子に腰掛けた。

俺も向かいの席に腰掛け、女性を見る。


「ナフィ・アドレです。あの、もしかしてフローラ様の手がかりを探してるんですか?」

「そうなんです!何か知ってますか!?」


食いつくように、ティーエはガタッと席を立った。


「おい、落ち着けよ。焦っても仕方ないだろ」


どうせ、大したことない思い出話を聞くんだから。


「そ、そうだね。すみません、姉を知ってる人がもうここにはいないから気持ちが早って………」


ティーエはペコッと頭を下げ席に着く。


「いいのよ。いや、いいんです。フローラ様がいなくなって結構経ちますからね。あの時泣いていたご学友も卒業してずいぶんになりますし…………寂しいですね」

「あの、ナフィさんから見て姉はどうでしたか?失踪するような感じでしたか?」

「フローラ様はお美しくて所作も綺麗で、ここには他の学園の生徒も習いに来てたんですけど皆の憧れでしたよ。私にも気さくに話しかけてくださって、明るいし優しくてコロコロと笑う可愛い笑顔なんか、皆んなの心を鷲掴みにしちゃって…………」


話しているうちに、ナフィは口ごもり目元を拭った。


「ごめんなさい、思い出したら何だか涙が…………」

「いえ、姉の為にありがとうございます」

「フローラ様の方がもっと大人っぽかったけど本当にそっくりで、何だか昔に戻ったような気になっちゃう。まさか、フローラ様がいなくなるなんて…………」


ナフィの瞳からはポロポロと涙が溢れた。

ティーエは慌てて、ハンカチをわたわたと探しだす。

だが、見つからなそうなので、ナイルはサッと自分のハンカチをナフィへと差し出した。


「ありがとうございます。私なんかより、ご家族の方が悲しいのにごめんなさい。でも、その顔を見てるだけでもう苦しくなってきちゃって」


ナフィはハンカチで涙を拭いながら、少しの間泣き続けた。

それをナイルとティーエは黙って見守っていたが、やがてナフィは真っ赤な目をしながら顔を上げた。


「せっかく来てもらったのにごめんなさい。もう大丈夫なんで」

「いえ、気にしないで下さい」

「えっと、フローラ様の失踪前の様子でしたよね。私から見てですけど、フローラ様に失踪する理由はなかったと思います。お付き合いされてた方もいませんでしたし」

「そうですか…………」

「ただ、私もあれからよく思い出して考えてたんですけど、失踪する3日前に習い事に来た時いつもより元気がなかったなって」


ナフィは躊躇いがちに言った。


「姉は何か言ってましたか?」

「学園でちょっと、と言ってたので友人関係とか勉強の事かなとあの時は思ったんです。でも後から考えると、心ここにあらずみたいな状態で凄く神妙な顔してたかな。いや、だから何だって言うんですがね、ただの友達とのいざこざだったかもしれないし」

「学園で何があったとかは言ってませんでしたか?」

「いや、そこまでは聞いてません。あの時は、他に………そういえば花について聞かれました。変わった花で、私も知らない花だったんですけど」

「花ですか。姉様花が好きだったからかな」

「でも、後から思うと好きな花を探してるという感じではなくて………。これも私が思っただけです。一応どんな花だったかはメモしてあるので、渡しますね。あっ、手がかりとかではないので、捨ててもいいので」


ナフィは席を立ち、棚をあさりだす。


ティーエを見ると少し落胆したようにボーっとしていた。


まあ、こんなもんだよな。


窓の外を見るとだいぶ暗くなっていた。

馬車に光の魔石をつけてるとはいえ、道中は真っ暗だろう。


「これをどうぞ」


ナフィは花の絵と、メモ書きされた紙をそっとテーブルに置いた。


「姉様の字だ。懐かしいな…………。ありがとうございます」


ティーエは嬉しそうに笑うと、その紙を受け取った。


「じゃあ、俺らはそろそろ行こうか。学園に戻る頃には真っ暗だぞ。場所も分かったし、また来れるだろ」


外を気にしながら椅子から立ち上がる。


「あっ、これから学園に戻るんですね。なら急がないと、もうだいぶ暗いし、雪で道も狭くなってて危ないから」


ナフィも窓の外を見て、慌てて立ち上がりドアを開けた。


「あの、今日はありがとうございました。姉様の話が聞けて良かったです」

「こちらこそフローラ様の弟と会う事が出来て嬉しいかったです。フローラ様からあなたの話も聞いてたので、まぁそれはまた来た時にでも。今度は早めに来てくださいね」

「はい、また今度ゆっくり聞かせてください。今日はありがとうございました」


ティーエは深々と頭を下げる。


「ありがとうございました」


ナイルも頭を下げると、もう時間がないのでティーエを急かしながら早々に店を後にした。


馬車の停車場まで少し離れてるので2人で黙々と歩く。


休憩前に他の花屋を探してたので、そこでだいぶ時間を使ってしまっていた。でも、居場所が分かったのでこれからは直ぐ来れる。


ただ、得られる情報はあまりなさそうだが。

でも姉の話を聞けるだけでもいいのか?

生前の兄の話が聞けるとしても、そんなの全く聞きたくもない俺にとってはティーエの心情は分からない。


固く口をつぐんで、黙って俺の後をついてくるティーエが今何を考えているかも分からない。


もっと手がかりが得られると思ってた?

でも、そんな手がかりがあるくらいならとっくに治安部に情報がいってるとも分かってるだろ。そんなに期待はしてなかったはずだ。

そう思っててもやっぱりガッカリするのか?

それとも単に姉を思い出して、気分が沈んでるだけなのか?


いつもはうるさいくらい喋ってるティーエが静かなだけであれこれと考えてしまう。


少し前までは、偉そうに幸せになる協力をしてやるなんて言ってたくせに。

こいつがしおらしいと調子が狂うな。

うるさいけど、いつものティーエでないと落ち着かない。


はぁ、お母さんみたいと言われたけど、こんなに心配してやって本当にお母さんだな。俺ってこんな世話焼きだったんだ。

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