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姉の行方

窓の外から見える景色もだいぶ色が無くなり、秋には紅葉を見せていた木々も葉が落ち始めていた。


もう少し経つと冬が訪れるだろう。


昨年、この学園で迎えた北の地域の冬は想像のはるか上をいっていた。年が変わる前に冬期休暇があるが、それから戻ってきた後はこの学都からはそうそう出られなくなる。


ナイルは窓の外をぼんやりと見つめた。


俺の身長以上に積もった雪には、最初ビビった。

住んでいたのが雪の積もらない地域だったので、最初は毎日毎日降る雪に感動を覚えたものだったが、校舎の4階の高さまで積もった雪には自然の脅威すら覚えた。


学園の敷地内には熱効果のある魔石があちこちに散りばめられる為、冬でも庭や訓練場など使う事が出来るが、学園の敷地をぐるりと覆って取り囲むように積もった雪の高い壁に、孤立し、まるで閉じ込められたかのような感じさえした。


外に通じるのは、学園正門から学都の街までの道が、馬車一台が通れる程の狭さだが魔石によって保たれているのみだ。


見渡す限りどこまでも続く高い雪の壁と、その道の細さに心細さすら覚えた程だ。

唯一の道なのに、雪崩れたらあっという間に埋まっちゃうでしょ、と誰もが思ってるに違いない。



「先輩、ボーッとしてどうしたんですか?」


向かいの席に座って、調べ物をしていたティーエが面白いものでもあるのかと窓の外をチラッと見た。


「いや、もうじき冬だなと思ってさ」


視線を図書館に戻す。

学園内にある図書館で、2階建ての結構な広さになっており、本の量も豊富だ。そこいらの街にある図書館よりも立派かもしれない。


「こっちの冬って雪凄く積もるんですよね。わ〜楽しみだな」


出たよ、現実を知らないから言えちゃう発言が。本当に想定のはるか上だからビビるぞ。


「ティーエのとこも雪降らない地域だよな。どうしても必要な物があれば今のうちに揃えていった方がいいぞ。雪の壁が出来たら手紙も荷物も通常の何倍も遅延するからな」

「雪の壁かぁ、いいですね、早く見てみたい。孤立しちゃう感じですか?ドキドキする〜。何だかワクワクしちゃうな〜」


知らないとは恐ろしいな。

この発言も後できっと撤回されるだろう。


「そっちは何か見つかった?」


ティーエの横に積み上げられた、新聞の束を見ながら聞いた。


過去のティーエの姉の失踪した日より前の新聞を1年ほど遡ってくまなく見ているのだ。

一見関係なさそうな出来事でも、関連しているかもしれないという僅かな可能性にかけて。


ティーエは無言で首を横に振った。


予想してた反応だ。何か見つかるとは思ってなかったので、逆に見つかった時の方が驚いただろう。


こうして時間の空いた時、たまにティーエの姉の事件を調べるのを手伝ってあげるようになった。


諦めてないティーエには言えないが、正直もう生きてはいないんじゃないかと思ってる。何かの事件に巻き込まれて殺されたか、美人なので人攫いにでも攫われ酷い目にあったり、異国へ売られたり、どちらにしろもう結構な年月が経ち万一生きてたとしてもボロボロの状態で、それこそいっそ死んでた方が良かったと………。


「先輩、聞いてます!?」

「あっ、聞いてなかった。何?」

「更にもう1年前も遡ってみませんかって言ったんです」

「え〜、今日はもう無理。字の見過ぎで目がチカチカする。やるなら今度だな」


目頭を押さえ、ギュッと目を瞑った。

これは冗談じゃなく、本当だ。


「仕方ないなぁ、じゃあ今度絶対ですよ。まあ……僕も目が疲れちゃったんですけどね」


そう言って、照れたようにティーエは笑った。


か、可愛いな、おい…………。

これで男じゃなかったら口説いてるんだけどな。ハァ残念。


そんな時、真剣な顔で話しながらこちらへと歩いてくる2人組の姿が目に入った。


シルビアとカディオ先生だ。

2人きりで珍しい組み合わせだな。


手を振ってみせると、それに気づいた2人がこちらへとやってきた。


「何やってんの?ティーエと最近仲いいねぇ。んっ何これ、随分と古い新聞広げてるね」


シルビアは机に広げられた新聞を覗きこんできた。


「昔のこの地域について調べてるだけだよ。ちょっと頼まれ事があったから、まとめようと思って」

「ふーん、頑張れ」


事情を話せばシルビアの事だから、時間の空いた時に手伝ってくれそうだが、現在の事件ならまだしも、過去の迷宮入り事件に関わらせてもはっきり言って時間の無駄だし、成果が得られるものでもない。

それに、ティーエもそれは分かってる筈だ。ティーエが頼ろうとしない事を俺が勝手にベラベラと話す訳にはいかないだろう。


意味のないと言ったら可哀想だが、これは本当に探してるというより偶然知った俺がティーエの気のすむまで時間のある時はつきあってやろうかという同情だ。

卒業までに何の成果が得られなくても、やるべき事はやってきたというのが少しは救いになるのではないかと思ってる。


「それで2人は何してんの?随分、真剣な顔してたね」


シルビアとカディオを見ると、シルビアはキョロキョロと周囲を警戒するように見てから、顔を寄せて小さな声で話し出した。


「実は凄い発明をしてしまってね。専門家である先生と話していて、この国に特許ってあるのか図書館で調べてたんだ」

「特許って?」

「他国の言葉で、凄い技術が無断で誰もに使われないようにする法の名前みたいなものかな。僕の発明は画期的すぎて、きっと大人気で真似する人も沢山出てくるだろうから」


コソコソと話しているとティーエが顔を輝かせて身を乗り出してきた。


「さすが会長ですね!でっ、何発明したんですか?」

「ちょ………声デカい!」


シルビアは慌てて手でティーエの口を塞ぎ、周囲を恐る恐る見た。


遅い時間なのもあって、生徒はまばらにしかいない。


「ふふっ君達には時代を先取る僕の功績を先に見せてあげよう」


シルビアはポケットから魔石を1つ取り出し机に置くと、それを隠すように手で覆った。


「映像記憶機能とでもいおうか。覗きこんでごらん」


シルビアの言葉に、手の隙間から覗き込むと、そのシルビアの手に石からの光が反射して何かの映像が映しだされ動いていた。


「あっ、これ生徒会室だ!」


思わず声が出たティーエを、動かせない手の代わりに殺気のこもった目でシルビアは睨んだ。


「誰も聞いてないから落ち着けよ、シルビア。でっ、これどうしたんだ?」


一応周囲を気にしながらコソッと聞いてみた。


確かにこんなの見た事がない。風景を魔石に記憶させて反射させて映しだしてるのか?


「こうゆうのがあったらいいなと強くイメージしたら出来ちゃったんだよ。何魔法かはさっぱりだけどね。そこで魔導研究の専門家である先生に解明してもらおうと相談したんだ」


ニッコリとシルビアに微笑まれ、カディオは複雑そうな表情になった。


「どうやってこんな複雑な魔法を思いついたのか知らないが、ザッと見ただけでも50種類以上の魔法が複雑に絡み合ってる。これを1人で、1つ1つ何の魔法か、どのくらいの割合の配合か解析してくとなると何年かかるか………」


カディオも周囲を気にしてボソボソと話した。


「先生、それはごめんって。少しの間1人で頑張って下さい。他の人関わると絶対この魔法技術を盗もうとするでしょ」


シルビアは申し訳なさそうな顔をしたものの、その目は希望に満ちて爛々としていた。


「父上と話して、魔導研究所を1つ丸ごと買収しようと思うんだ。うちの家業は専門外だから、1から作るよりいいでしょう。そして、特許のような法を作ってもらってこの技術が他国からも無償で利用できないようにしないと。これは父上に働きかけてもらうけど、王国にとったって売り上げの1部は税として入ってくるし、自国の技術を守るのも国の為になるからきっと問題はない。そして我が家門は、魔鉱石の鉱山を持ってるだけでなく、とうとう魔導具の研究にまで手を出して誰も太刀打ち出来ない程の高嶺へと、ぐふふふ…………」


最後の方は聞き取れないくらいの独り言で、シルビアはニヤリと笑った。


それが本当なら、公爵家はいよいよ王国にとっても脅威になっていくな。日用に使う魔導具の発明をしていようが、誰もが魔導兵器開発の恐れを考えるだろう。最も必要な魔鉱石だって、公爵家はいくらだって手に入るのだ。


けど、王太子との婚約もあるし、公爵家が王国に反する事はないか。いや、かえってこれを好機と内側からどんどん勢力を伸ばし、王家はアルビシス家の傀儡となる可能性も………。


って、俺がこんな事考えたって仕方ないか。

俺には関係のない事だし。


「会長〜、凄いです。才能ありすぎて僕感動でもう涙でそうです」


瞳を潤ませながら、ティーエはシルビアを熱い眼差しで見た。


「ありがとう、元はこれ生徒のいざこざがあった時録画してもらいたいなと思って作ったんだ。今度、内緒で生徒会の皆んなには作って渡すね」

「まだ発売もされてないこんな凄いものをいいんですか?」

「何かあったら賠償してもらう誓約書は書いてもらうけどね。あっ、僕これから生徒の相談のる約束があるんだ」


シルビアは魔石を手に掴み、ポケットにしまうとカディオを見た。


「研究所を買収したら、先生には研究所の所長についてもらいたいと思ってるんです。僕の頭は他のアイデアも沢山詰まった宝の宝庫ですよ。だから、それまでは僕を裏切らないで渡した魔石の解析お願いしますね」


シルビアはカディオに悪戯っ子のような笑みを向け、ナイルとティーエに手を振ると元気よく走って行った。


あいつの人生楽しそうでいいな。

類稀な才能と、それを実現させる力と実行力。


もはやかけ離れ過ぎていて、嫉妬も妬みも感じない。


「先生も大変っすね。でも、将来安泰じゃん。魔導研究が専門だし、教師なんて気まぐれでやってんでしょ」


そう言うと、カディオの顔が僅かに曇った。


あれ?ヤべッ、失言か?


「そう見えるか………。それでも、ここにいる間は手は抜かないようにするから」

「嘘嘘。先生、生徒会の事にも力を貸してくれて他の先生より相当いい先生してるよ。ただ、魔導研究で若くして名も知れてるから、ずっとはやらないんだろうな〜って思っただけだって」


ははっと笑ったが、カディオの表情は固いままだ。

気まずい。話題変えるか。


「先生はさ、この学園出身じゃないんだろ。7年前ってどこにいた?学都にいた?」


確かティーエの姉さんと同じくらいの年齢だよな。


「7年前………?そうだな、確かに学都にいたな」

「嘘、本当に?」

「飛び級で他の地域の魔法学院を卒業したけど、成績が優秀だったから学都にいる魔導研究の権威みたいな人に1年従学してた事がある。よく分かったな」


おおっ、聞いてみるもんだな。


すると、すかさずティーエが問いただした。


「あの、先生はその時貴族の令嬢が学都で行方不明になった事件って聞いた事がありますか?」


そのティーエの真剣な表情に、カディオは不思議そうな顔をした。


「いや、記憶にないけどそれが何かあるのか?」

「そうですか…………。いや、知らないならいいんです」

「あれ、でも待てよ、そんな事件もあったような………」

「えっ!?お、思い出して下さい、どんな事でもいいんで!」


席を立ち、話に食いついてきたティーエに、カディオは困惑した顔を向けた。


「思い出してっていっても、そんな事があって物騒だなと思ったくらいしか…………」

「え〜、それだけですか!?」

「俺には関係なかったし……あっでも確か花屋の娘が泣いてたな。お客さんで歳も近く仲良くしてたとか言ってたような」

「花屋!?どこの花屋ですか!?」

「知らないよ。俺の従学してた先生の家に定期的に花を届けに来てたって事しか。この学都のどこかの花屋だろ」

「んじゃ、その先生宅に行って聞きます。どこですか?」

「先生は3年だけの依頼で、学都の学校で教鞭を奮ってたんだ。今はもういない、王都の研究機関に戻ってる。ついでに言うと、花を頼んでたのはその奥方で今は離婚してるとか」

「え〜…………そんなぁ」


ティーエはガックリと肩を落とした。


そんな落ち込む程の手がかりでもないだろ。

期待してるティーエには悪いけど、会ったって友人として心配してるといった話が聞けるくらいだろうな。行方を知ってる訳ないし、手がかりがあるなら、もうとっくに治安部に連絡してるだろう。


けど探したがるんだろうな。

学都の花屋ねぇ。どれだけあるんだか。

まぁ、仕方ないから時間の空いた時にでもつきあってやるか。

学都にいた時の姉の話が聞けるだけでも、残された者にとっては多少の慰めにはなるだろうし。


ふと気づくと、カディオがじっと俺を見ていた。


「ん?何、先生?」

「あ、いや………その、カトリーヌ嬢がこの前君にデートに誘われたとか………」


それ以上は言わず、カディオは口籠った。


「へー………それカトリーヌちゃんから聞いたの?」

「そうだ。その、お前は手慣れてる感じだから、遊びとかそうゆうのなら…………」

「先生には関係ないじゃん。ってか、もうとっくに断られてるし。心配しなくたってカトリーヌちゃんの俺に対する警戒はかなりのもんだよ」

「そうか、ならいいんだ」

「それと、俺もう遊びはしないから。自暴自棄になってたっていうのかな、自分でも馬鹿な事やってたと思うよ。今更生中だから、俺を見るたびにそうゆう警戒するような目いい加減やめてほしいんだけど」


まぁ、無理か。そうゆう奴だったし、俺。

警戒すんなって方が難しいよな。


「ごめん、そんなつもりじゃなくて………。教師なのにこんなの駄目だよな」


ハッとしたカディオの顔に、かえってこっちが申し訳なくなる。

誰が悪いって俺が悪いんだけどな。それが責めるような事言っちゃって、何様だよ。


「いや、いいんですよ。僕なんてしょっ中軽蔑の目で見てますよ。クズい先輩が悪いんですよ」


そんな中、平然とティーエがそう言った。


「ちょ………お前がそれ言う?こんだけ俺に世話になっときながら何だその言い方は」

「だって、キリッと遊びはしない、とか言っときながら、カトリーヌさん以外にも可愛い人や美人に声かけてますよね」

「だってそれはあれだろ、別にカトリーヌちゃんと付き合ってる訳じゃないし、どの子と運命があるか分かんないじゃないか」

「はぁ?言ってる意味分かんないんだけど。カトリーヌさんが好きだからちょっかい出してるんですよね?なら何で他の人に声かけるって話ですよ」


言うより早く、軽蔑の眼差しをティーエは向けてきた。


「えっと……俺は声かける相手とは全員、将来添い遂げてもいいと思ってるよ。遊びじゃなくて本当に。あっ、付き合ったら勿論他には声はかけないし…………」


話してる途中から、あからさまに何言ってんだこの野郎的な顔になっていくティーエに言葉が続かなかった。


俺の答えはティーエの望む答えじゃなかった訳だ。


「だってどの子も可愛いし好きだなって思うよ。結婚しても楽しくやってけそうだし………。その顔やめろって、じゃあお前の言う好きってどんなだよ?」

「軽っ、先輩の好きって軽すぎ。どの子にも運命感じてるんですか?そんなの全然運命じゃないんですけど。好きってもっといつもその人の事考えたり、楽しいだけじゃなく苦しさもありつつ、その人無しじゃ生きていけないような、時には自分より大切で命さえ投げ出してしまえるような………」

「あははっ!乙女かっ、そんな恋愛あると思ってんの?何の物語の影響だよ」


夢見過ぎ。うっとり語っちゃって可愛い過ぎるんだけど。


すると、赤くなったティーエはぷくっと頬を膨らませ、みるみるふくれていった。


「だいたい誰かと付き合ったり、恋愛したことあんの?どうせ本の受け売りでしょ」

「く〜……、先生!めちゃくちゃ腹立つんですけど!この下衆に大人の恋愛ってやつを教えてやってくださいよ!」


ティーエに突然話題を振られ、カディオはビクッとした。


「いや、俺もそんな経験豊富な訳じゃないし………」


困り顔のカディオに、ナイルがニヤリと笑って声をかけかる。


「先生も命をかけれる相手じゃなきゃ付き合わないの?そんな人と恋愛出来る人ってどれだけいるのかね。なら離婚だって起きないよね。俺の言い方が悪かったんだろうけど、可愛いから好きから入ってく恋愛ってそんないけない?皆んなそんなもんじゃないの?」

「ま、まあ、命をかける恋愛はそうそうはないな。可愛いとか興味を持つ事から恋愛になってくんだろうけど」

「だよね。俺は間違ってないよね〜」

「でも、多数に声をかけるのはどうかと思うぞ。相手は自分だけじゃなく、他にも声をかけてるのを見たら本気と思わないだろ。カトリーヌ嬢と付き合いたいと思うなら、誠意を見せないと」


その言葉に、ティーエもそうだと言うように、うんうんと頷いた。


急に教師らしい事言っちゃって。

まぁ、言われてみればごもっともではあるけど。

カトリーヌちゃんだけでいくには脈もない感じで、それでもいいから好きなんだ、とまではいかないんだよな。

他に可愛い子がいたら、その子との未来を考えてみたり目移りしてしまう。


本当は分かってる。相手がどうのってより、俺が幸せになりたいんだ。俺にはなかった、見た事のない幸せがほしくて堪らないんだ。その相手は可愛い方がいいってだけなんだろうな。


黙り込んでしまった俺を、少し心配そうな顔でティーエが覗き込んできた。


「あの、クズだとは思うけど更生しようと先輩努力してるんですよね。その努力は認めますよ。貞操観念は壊れてるけど、あとは正常、むしろ根は真面目だと思います。面倒見はいいし、責任感もあって細かくてうるさくて、すぐお小言言うし、お母さん気質あるんじゃないですかね」

「お前、ここは褒める流れだろ。誰がお母さんだ」

「え〜、今の褒めたんですよ。世話焼きで心配症で、やる事は真面目にこなそうとするからもう僕のお母さんだっけ?と思うくらい親身にうるさく面倒みてもらって感謝してるんですよ」

「お前の母さんじゃねーよ。全く………」


あんなに遊びまくっていたような俺がお母さんだって?


「そうだな、悪い所じゃなくいいとこを見ないとな。確かに、生徒会の仕事も真面目にこなしているし、授業もサボらず態度も悪くない。生徒仲も良いし、人の事を上手く円滑に回してくれるようなとこもあるな。まぁ、女性関連はだらしないけど」


カディオまでそんな事を言いはじめた。


こいつら人のことを真面目真面目って…………。

俺がそんな訳ないだろ。

人の事をよく見てるのは確かだけど、それは相手をよく知る為だ。自分の求めてる事を言ってくれる男には女もコロッと落ちる。他の奴らだって同じだ。承認欲求を満たして、必要なことを先回りしたり力になってあげ、親しい振りをすれば大抵上手くいく。ただの円滑な世渡りだ。


なんて事を、言い訳がましく伝えるのも面倒だな。


気を使っているのか、俺を気にしている2人を見てふっと笑ってしまった。


まぁ、いっか。そう思ってるならそれで。

悪意のない言葉だからか、不快ではない。


ずっと俺に向けられてきた、汚い言葉の数々。あれに比べれば、全てが大した事ない。


救われたいとずっと願って生きてきた。

でも、もう俺はどうしようもない人間でいいんだ。

本当にそうゆう人間なんだから。

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