シルビア14歳やらかします
薄暗い部屋の中、ピッピッとモニターの心音の音だけが響いていた。ピクリとも動かない体。指先さえも動かす事ができない。
僅かに開いている瞳に映るのは病室のような場所。
目を閉じることさえ出来ない。
ただただ、生きているだけ。そこにいるだけ。
叫びたくても声もだせない。
怖い。怖くて怖くて仕方がない。
静まった部屋の中で、心は恐怖で気が狂ったように泣き叫んでいるのに、静寂と共に何事もなく時は過ぎていく。
ここにいる!誰かいないのか!?誰か気づいてくれ!!
――
開いた目に朝の光が差し込む。
シルビアはゆっくりと息を吐くと身を起こした。
髪をかき上げると汗びっしょりだ。
僕は最近、たまに悪夢をみてうなされるようになった。
望んでいたはずの、元の世界で目覚めた夢。
それは幸せなものではなく、寝たきりの状態でベットに横たわり、身動きも出来ずただ暗闇の中にいるというものだった。
望んでいたはずなのに、僕は今目覚めるのが怖くて仕方がない。
こんなに長くこの世界で過ごしてるのだから、元の世界の僕はずっと眠った状態なのではないだろうか。あの夢のように。
あれが本当の僕の姿なら、目覚めたくなんかない。それならばずっと、死ぬまでこの幸せな夢を見続けていたい。
シルビアは息をつくと、ベットから降りバスルームへと向かう。
薄いワンピースのような寝巻きを絨毯の上に脱ぎ捨て裸になった。
サラが朝の用意をしに自分の元へ来るのはもう少し後だ。朝風呂の為に、わざわざ呼び出すのもあれなので1人でシャワーだけしてしまうことにした。
バスルームに入り、シャワーのノズルを捻ると温かいお湯が出てきた。水道もないのにこれが最初不思議だったが、溜め水に火の魔石を入れて温かいお湯を作り、水の魔石を使い水流を作りシャワーとしてるのだった。
汗を流してさっぱりすると、目覚めの不快さも薄らいできた。
考えたって仕方ない。やれる事なんて、今を生きるしかない。
シルビアはタオルで髪を拭きながら、ふと大鏡の前で足を止める。
僕は14歳になった。体つきも子供と変わり少しづつ成熟してきている。身長も168になりすらっとした長い手足、体は引き締まっているし、ふっくらとしてきた胸は大きくはないけどこの体のバランスとして丁度いいサイズだ。何よりこのお尻へのライン。
「美しい………」
シルビアは鏡の前で腰を捻り、お尻のラインをじっと見る。
こうゆう銅像があってもいいくらいの素晴らしいプロポーションだ。無駄なところがない。贔屓めとかでなく、芸術的な体だ。女女してなくていやらしくもない。
「この少女から大人への姿を形に残しときたいな。写真もないしどうするか………」
この過ぎていく一瞬の美を残しておきたい。誰かと共有したい。
その時、ノックの音と共に扉が開いた。
「お嬢様おはようござ…………!えぇっ!?」
「ああ、サラおはよう」
「どうして裸なんですか!?」
「シャワー浴びてね。それよりどう?美しい裸体でしょう?」
シルビアは頭の後ろで手を組みポーズを作る。
「勿論、自慢のお嬢様ですよ。でもお着替えしましょうね。あっ、他の人の前で裸になっては駄目ですよ」
「さすがに他の人の前は恥ずかしいよ。長年お風呂の世話をしてくれるサラだからなんだよ」
でもサラではないんだよな。いつまでもこの美しかった少女時代の姿を忘れないでいてくれるのは。やっぱり男かな、こうゆうのは。
シルビアはソファに腰掛け足を組んだ。
「サラ、招待状を書く。紙とペンを持ってきてくれ」
「その前に服着てください。下着も」
サラはシルビアの前のテーブルに下着と騎士服を置く。
シルビアはその服をじっと見ながら考えた。
裸は見せたくない。でもこの美しい裸体は記憶に残したい。
あれか?水着か?でもこの世界で水着を見たことないな。じゃあ下着?それじゃ、見た目卑猥だな。僕も下着で人前は恥ずかしい。
考えろ、シルビア…………。
そうして3日後、その時はきた。
「ようこそ!」
公爵邸の広い玄関口でシルビアはにこやかに客人を出迎えた。
普段は出迎えないシルビアの行動とその満面の笑顔に、そこにいたエディスとルオークは不審げにシルビアを見た。
「えっ何?なんか企んでるのか?」
ルオークの問いにギクッとしながらも笑みをつくる。
ルオークのくせに鋭いじゃないか。
「企んでるなんて酷いな。僕が友人の君達に何かするとでも?急な招待に都合合わせて来てくれる友情に感謝こそすれ何かをしようだなんてとんでもない」
「うさんくさい言い回しだな」
疑うようにじろっとルオークが見てきた。エディスも何も言わないながら疑いの眼差しだ。
企んでないといえば嘘になるけれど、彼らに何かをする訳ではない。むしろ思春期男子には刺激的な体験をさせてやるつもりだから、感謝してほしい。
「僕の部屋で新作魔法を見せてあげるからさ、ほら早く行こう」
シルビアは2人の手を取りグイッと引っ張って歩きだす。
出迎えの為、うやうやしく頭を下げていた従者やメイド達には用がある時に呼ぶから近づくなとあらがじめ言ってある。
完全なる密室に年頃の男女が3人。
ごくっと喉が鳴った。
珍しく緊張しているのかもしれない。
「そういえばさ、赤髪どうなった?」
歩きながらルオークが聞いてきた。
サウロがどうしたって?どうもして……なくはないな。
返事のないシルビアにエディスが追加して聞いてくる。
「この前の剣術大会でうちのソードマスターに勝っただろ。ゲストで来て戦う予定もなかったのに、毎年サウロ卿が連勝してるから対戦させてみようってなったら勝っちゃうんだもんな」
「ああ、あれね………。毎年父上の計らいで魔剣とかご褒美欲しさにサウロ出てたからね。ソードマスターに勝っちゃったから、新たなソードマスターに任命される動きとか出てきて本人嘆いてたよ」
「うちのソードマスターは称号を辞退すると言いだして大変なんだよ」
その話題にルオークが目を輝かせて入ってきた。
「俺も大会見に行ったんだよ!圧勝だったよな、そりゃソードマスターとして自信なくすわ!」
嬉しそうなルオークをエディスは横目で不服そうにジロッと睨む。
僕は暑いから見に行かなかったけど、2人はサウロの試合見てたんだ。男の子はやっぱり剣術好きだなあ。
「ちょっと剣を交わしあってからソードマスターが身体強化したから、あっこりゃ勝てる見込みなくなったと思ったら一瞬で勝負が終わったよな。スパッと腕切り落としちゃってさ。おまけに赤髪は身体強化なし」
はしゃぐルオークに言い返す言葉も見つからずエディスはムッとしながらルオークを無言で睨むが、ルオークは止まらない。
「あいつ今23で、夏の終わりに24だったよな。ソードマスターの最年少記録が22歳だろ。それもずーっと昔の。俺が思うに赤髪20歳くらいでいけたんじゃないか?惜しいよな〜、あいつ名を上げる活動全然してないから機会なかったけど、その頃にソードマスターと戦ってたらな〜」
「その頃勝てたとは限らないだろ」
「実力的には最近伸びたんじゃなくて前からあっただろ。絶対いけたって」
ルオークは楽しそうだが、エディスは面白くなさそうだ。
「カーロは王室所属のソードマスターとしてずっと仕えてくれてたんだ。今は35歳で限界を感じたと言ってるけど、騎士団の誰も敵わない。ソードマスターを返上する必要なんてないんだ」
エディスは真面目な顔でシルビアを見る。
「サウロ卿にソードマスターの任命は絶対受けるよう伝えてくれ。それで誰よりも特別だった事を証明してほしい。うちのカーロが弱かったんじゃないって事を知らしめてほしいんだ」
そんな事を僕に言われてもなあ。
そう思ってると今度はルオークが詰め寄ってきた。
「なあなあ、お前の用が終わったら俺赤髪に稽古つけてほしいんだけど。頼んでくんない?」
あっ………こいつら急な招待に応じてくれたと思ったら、それぞれ思惑があったわけだ。
くそっ、乙女の一大決心をサウロのついでにしてくれるとは。
「……サウロは怠惰だからソードマスターになったら義務や責任が生じてやる事も増えるしやりたくないそうだ。そこそこ稼いでのんびり生きてきたいと言ってる」
シルビアはハァァと深いため息をつく。
「どうしたの?急に暗くなって」
エディスが聞くがシルビアはまたため息をついた。
「テンション下がるわ〜。はいはい、僕の用はさっさと済ましてサウロに会いに行きましょうね〜」
あー、やる気なくすわ。
剣術大会が10日前の事だから、今話題の人であるサウロに関心がいくのは仕方ないと言えるが、関心のもたれてない僕が今決死の披露をするというこの状況にモヤモヤするわ〜。
「さっさと済ましましょうね〜」
そう言うとシルビアは足早に歩き出した。
部屋に着くと、シルビアは2人にソファに座れと手で示す。
だがルオークは壁にかけてある魔剣に興味を示しそちらに行ってしまった。
エディスも部屋の隅に置かれた歪な鎧の山の方に行ってしまう。
「この鎧どうしたの?」
「それ試作品。ちゃんと作り直すから取っておいてあるんだ」
シルビアは鎧の方に行き、その横にあった塊の金属を持ち上げる。
「鋼だ。これが今日披露する僕の魔法だよ」
「これで鎧を作ったんだね。凄いな、こんな細かな作業や使い方できるなんて上級職人の域だ」
「そんな大層なもんじゃないよ。ただこうしたいなとイメージしてるだけだし。土属性なのか金属?属性もよく分からないけど、出来ちゃうからさ。魔法の教育者にはなれないな、説明出来ないよ」
「でもそれを可能にしちゃうんだから羨ましいよ。僕ももっと魔素量があれば良かったのに」
鎧の山をじっと見つめるエディスの瞳にかげりが見えた。
も〜こいつはウダウダと考えてるんだろうな。
「天才と比べるな。お前の不幸は僕という天才が身近にいた事だ。嫌でも比較しちゃうだろ、可哀想に」
「何その上から目線」
「後にきっと名を残すから、今からシルビア様と呼んでもいいんだぞ」
シルビアは鋼の塊をエディスに渡す。説明しようと思った時に、ルオークが1本の魔剣を持ってやって来た。
「なあなあ、これカッコいい!10本もあるんだからこれくれよ!」
「はあ!?魔剣がいくらするか知ってんの!?馬鹿高いんだよ!それにルオークまだ魔法も使えないんだから必要ないじゃん!」
「いいじゃん。後から必要なるんだし」
「僕の魔剣は相当の魔力に耐えられる特別性だから、更に破格の高さなんだよ!絶対に駄目!」
シルビアはルオークから魔剣を取ると、ささっと元の壁にかけてくる。
「この魔剣は血の滲むような努力の末に手にしたものなんだ」
だからそう簡単に譲れない。
「聞きたいか?なら聞かせてやろう。安めの魔剣で魔力流し込む訓練をしてたら、魔力に耐えきれなくなって砕けた剣の破片が眼球に突き刺さったんだ。そりゃあ絶叫でのたうち回ったよ」
魔力暴走の後から、僕の訓練には必ず従医が付き添うようになったが毎回大活躍してくれていた。
「僕も治療魔法が使えるから、すぐ治すんだけど治らないと思ったら破片が刺さったままだったんだ。暴れる僕を騎士達が押さえつけ破片取って治療された。またある時は、剣が砕けるだけでなく、腕まで裂けた。これでもその魔剣が欲しいと?」
じーっとルオークを見ると、ルオークはうっと怯んだ。
「そんなん言われてくれって言えないだろ。お前危ない事やってんなー。怖くないのか?」
「怖いに決まってるだろ。でも扱いに慣れる為にはやるしかないし。それに治ると思うと大抵のことは出来るよな。前の世界じゃ魔法なんてなかったから、怪我は命取りだったし」
でも腕を切られたってくっつけられるこの世界に慣れたら、だんだんセーブする事も忘れていった。一瞬の痛みに耐える勇気さえあれば、どこまでだってやれる。気をつけなければいけないのは、致命傷だけ。それさえ避ければ治せるのだ。
「ヤバい感覚だとは思うんだけど、それさえも慣れちゃってさ。剣術でも腕や足の1本くらいは捨てられる。捨て身も使うようになってきちゃってサウロにもそれは駄目だって怒られた」
捨て身のきっかけは魔封具が外れ、いくらでも魔力が引き出せるようになり、痛いと思ったら勝手にセルフ治療が開始された事だった。
切られた腕の傷がその瞬間すぐさま治っていく様は、さながら不死身のようだった。あれは13歳の終わり頃の事だったか。
捨て身というよりは、もしかすると僕は試してみたいのかもしれない。どこまで大丈夫なのかを。
「万が一って事があるんだから、捨て身は止めた方がいいよ。死んでしまったら治せないんだから」
少し怒ったように真剣な顔でエディスは言った。
本当に心配してくれてるのだろう。ありがとうね!
「そうだね、気をつけるよ。少なくともサウロ相手だと、うっかり首はねそうになるから絶対止めてって釘刺されたし。ソードマスターの時も、一瞬で力が跳ね上がったから瞬間的に動いちゃったらしいよ。本当に殺されそう」
さて、この話はもういいからいよいよ本題にいくか。
シルビアはもう1個の鋼の塊を持ち上げると、それを今度はルオークに渡した。
2人は鋼の塊を持たされ、戸惑った顔をした。
これをどうするのか不思議だろう。さあ、見せてやる。
シルビアはルオークの持つ鋼の塊に手を触れた。
その途端、鋼がぐにゃりと形を変えルオークの体にまとわりつく。
「うわっ!」
「大丈夫!体にフィットするオーダーメイドの鎧作製だから!」
ルオークにまとわりついた鋼は尖ったり、段をつけたり自由に動き回り、徐々に鎧のような形になっていった。
「キツい!おい、締めすぎ!」
「本当?ごめんごめん、人ごとするの初めてだから」
「そんなん俺で試すな!」
「まあまあ、ほらいい感じ」
シルビアはパッと手を離し、全体を見ようとトンと後ろに飛ぶ。
40秒作品にしては、うん、いい出来だ。
「あまり見ない形の鎧だね」
珍しいものを見るようにエディスが鎧に触れる。
「分かる?これ前の世界のゲームってので出てた鎧なんだ。細部までは思い出せないから何となくの作りなんだけど」
僕はゲーム機なかったから、小中学生の時友達の家に遊びに行って見てたりやらせてもらったりだったけど。記憶に残ってるものだな。
「ゲーム………?」
「遊ぶものの名前。これは一般兵の鎧だから、エディスには聖騎士の鎧を作ってやろう」
シルビアはエディスの持つ鋼に触れた。
それはエディスの体にまとわりつき形を変えていく。
「ずるいの〜。俺ももっとカッコいい鎧が良かった」
ルオークが形作られていくエディスの鎧を見ながらぼやいた。
「聖騎士のは豪華だからな。って言っても鋼だけで色もないから寂しいけど」
シルビアは鋼から手を離すと、また数歩下がる。
うん、これもいい出来だ。まあ見かけだけはね。
「ふふっ、見かけは鎧だけど構造は全く理解してないから、脱ぐには壊すか僕に解除してもらうしかないんだよね〜。股間ガードとかつけちゃったからさ〜、おしっこ行きたくなったら言ってね」
そのシルビアの言葉に、2人はうわっと顔をしかめた。
「今すぐ脱がせよ」
すぐにルオークが詰め寄ってきたが、そうはいかない。
これは布石。ここからが本番なのだから。
「折角だから3人鎧にしようよ。すぐだから、すぐ。ちょーっと待っててね」
言うが早いか、シルビアはダッシュでバスルームに駆け込んだ。
鎧なんか本当はどうでもいい。この流れにもってくための布石でしない。自然に違和感なく披露に持ってくための手段だっただけだ。
いざ、いくか…………。
未だかつてない緊張に、バスルームの扉の取っ手を掴む手が震えた。心臓もバクバクといってる。
ウエッとえずきそうだが、ここで躊躇っていても仕方ない。成るようになれだ。
シルビアは扉を開き2人の前に姿を現した。
そのマントに包まれた姿に、2人は鎧は?という顔をした。
いいぞ、見せてやる。たんと拝みな!!
身を包んでいたマントをバサっと大きく脱ぎ捨てる。
そのマントが下へ落ちるのと、唖然としたエディスとルオークの顔を腕を組みながらガタガタと震えないよう平静を装いながらシルビアは見ていた。
言葉はなかった。2人はただ唖然としていた。
こっちも心臓バックバクだ。
着てるよ。着てるけど、エグい露出してるよ。
「こ、こ、これも友達がやってたゲームのベリウスちゃんて魔王の右腕の子が着てたんだけど、どうかな?キャラ的にこうゆうの着ててもエロくなくて印象に残ってたっていうか、ははっ……」
膝より少し上の鋼のブーツに、鎧といってもバニーガールのような形だ。しかも結構なハイレグで、後ろなんてとんでもない事にTパックになってる。ほぼ尻丸出しだ。
人様の前でこんなあられもない姿を晒すなんて……!
頭に血が昇って、顔が熱くなってきた。
力尽きる前にやるしかない。
「ぼ……防御力なさそうだよね、ほら」
一瞬の勇気を!!
シルビアはクルッと後ろを向いた。
ぐあっーっ!!恥ずか死ぬーっ!!でも見てくれーっ!!
真っ赤な顔でシルビアはギュッと目をつぶる。
だが、いつまで経っても2人は何も言わなかった。
チラッと振り返ってみると、2人共赤い顔で視線を逸らし、あさっての方向を見ていた。
おい、ちょっと!見てくれなきゃ勇気を出してこんなカッコまでした僕が報われないじゃないか!
「ねえ、感想は?異世界の鎧の感想」
ズカズカと歩いていき2人の間に割り込む。
2人は驚いた顔をして一瞬こちらを見たが、慌てて目を逸らした。
「わ、分かったから早く着替えてこいよ!」
こちらを見もせずにルオークが叫ぶ。
おいおい、恥を偲んでの姿なのに見ないってのはないんじゃないのか。普通年頃男子は照れながらもチラチラ見ちゃうもんだろうが。
「エディス、こっち見てよ」
露出はあるけど、そんなエロい感じではなかったはずだ。もともとの体がエロくないから、さながら女将軍みたいな感じだった。
「シルビア……その格好はちょっと無理……」
目の前にいる僕を見ないようエディスは目をつぶっている。
見てくれないとこんなカッコした意味がないだろ!
「……無理ってのは何だ!?紳士かこのヤロー!お前ら男だろ!今見ずにいつ見るんだよ!?」
もお怒った。強制的にでも目的だけは達成してやる。
「この手は使いたくなかったが仕方ない」
シルビアは2人に向けバッと手を突き出した。
金縛りだこのヤロー!
2人はビクっとした後、そのまま固まったように動かなくなった。
表情だけは信じられないものを見る顔だ。
「ごめんね、ちょっとピリッとしたかな?5分くらいですぐ動けるようになるからね〜」
2人の前に立ちながらシルビアはニッコリと笑う。
「シルビア、何でこんな事を?」
顔は動かせなくても、喋れはするのでエディスが困惑しながら聞いてきた。
シルビアは何と答えようかと考えたが、ドキドキももう収まってきてすっかり平常心だ。この姿でいるのも何だか慣れてきた。
「僕をくまなく見てほしくて」
「えっ………何で?」
「お前達が年老いた時にでもふっと、少女時代の美しかったシルビアを思い出してほしくてさ。こうゆう記憶って鮮明に残るだろ」
「そ、そんな理由?」
覗き込まれてエディスはカアァと赤くなるが、動けないので見るしかなく更に赤くなった。
「この変態!ど変態!」
ルオークが声を荒げると、それに反応しシルビアはルオークの元へ歩いていく。
「何とでも言うがいい。目に焼き付けろ。記憶に残せ。もう取り繕うのは止めだ」
「お前………もう本当最悪!何考えて生きてんの!?」
「この人生では好きなことして生きてくんだ」
「たまには我慢しろ!恥じらいの1つくらい持て!」
ルオークは目前にあるシルビアの胸元を見て、ボンと顔を赤くした。可愛い反応だ。
「恥ずかしいに決まってるじゃないか。かなり悩んで勇気がいったんだよ。でもそれよりも、この美しい姿が誰にも記憶されず衰えていってしまう方が怖かったんだ」
シルビアはルオークから離れ、全体が見えるように数歩下がってあげた。すると、ゴリっと何かを踏んだ。
ペンだ。何でこんなとこに落ちてるんだ?僕のじゃないな。
シルビアは向きを変え、ペンを拾う。
だが、その瞬間ハッと気づいた。
今、僕とんでもないポーズしてないか!?
身を屈め尻を突き出すような……この丸出しの美尻を!
バッと振り返ると、2人は真っ赤っ赤になっていた。
「ワザとじゃないからな!そんな顔したって開脚とかはしてあげないからな!」
2人に釣られてシルビアも赤面した。
動揺したのがきっかけか、金縛りが緩み2人の体が揺れる。
それに気づいたルオークがすぐさま動き、落ちてあったマントを素早く拾った。
「こんのど変態!変態変態!!」
言いながらルオークはマントをシルビアに被せて見えないようにした。
さすがに、それを剥ぎ取ってまた披露するのもどうかと思ったので、シルビアは大人しくマントで体を包んだ。
それを見たエディスのホッとした顔。ちょっと失礼じゃない?
お礼言われてもいいくらいなんだけど。
「もう何だか一気に疲れちゃったよ」
エディスは心底疲れたようにぐったりしてソファに座る。
「俺も。シルビア疲れだよな。あいつ羞恥心とないんじゃねーのか。あ〜も〜最悪」
ルオークもエディスの隣りにドカッと座った。
「最悪言うな。むしろ貴重なものお見せ頂きありがとうございますだろ。この世界じゃプールもないから水着見る機会もないし、本来お前らの年頃は大はしゃぎものだぞ」
シルビアも向かいのソファに座ると、2人は座るの?という顔で見てきた。さっきから失礼だな。
「もう充分見たから着替えてきたら?」
「エディス、がっつきが足りないぞ。中学生の時の僕の友達の勇太なんて電車で寝てるお姉さんのパンツ見たさに、座席に横になってガン見してたぞ」
「よく分からないけど、凄い世界だね」
「高校の時の近藤もいつもエロに飢えてた。お前らが奥手なだけで、僕は変態じゃないからな」
ちょっと露出の高い服を着ただけで変態変態騒いで。
だが、2人は呆れたように笑っただけで同意はしてくれなかった。
まあ、この世界の基準もあるからな。
水着もないし、イベントで露出の高い服着てる人も見る機会ないし、イレギュラーではあったのかもしれないな。
でも当初の目的は果たしたわけだから良しとするか。
半ば強制的だったけど、2人の目に焼き付けといたから記憶に残っただろう。この腰のくびれからのなめらかなヒップラインは是非覚えておいてもらいたい。
2人は他の人のこうゆう姿なんて見た事ないだろうから比較なんて出来ないだろうけど、雑誌のグラビアや水着女子を見てきた僕から見てもシルビアの体は凄く絶妙なバランスでツボにくる。
僕1人だけで満足してしまうには勿体無かったんだ。
いずれ僕が大人の女性になった時にも、歳をとってからも、この14歳という輝いていた少女時代を思い出してほしいな。




