ルオークとアンネローゼ
秋のよく晴れた昼頃、華やかな庭園には少年と少女の2人の来客があった。
侍従の者に庭園の透明なドームの中へと案内された2人は、真っ赤赤なテーブルセットに面食らったものの、とりあえず椅子に腰掛けた。
「これが有名なマリアン夫人の庭園なんですね」
少女、アンネローゼ・ブルービーはキョロキョロと珍しそうに周囲に目をやる。
「凄いとは思うけど独特だよな。見てて面白いけど」
少年、ルオーク・ギルテスも周囲を見た。
ドームの周りには動物の形にカットされた大きな植木がいくつもあり、そのどれもが宝石のネックレスをつけていたり王冠やティアラ、腕輪、ベルトなどで着飾っていた。
「贅沢ですわね。宝石の鉱山をお持ちだからこうゆう使い方もできるのでしょうね」
「だからって木を着飾ってもな」
ルオークは手持ち無沙汰そうに、プラプラとさせた足を見つめる。
アンネローゼはそんなルオークをじっと見た。
シンと沈黙が生じる。
ルオークは少しの間足をプラプラさせたままボーっとしていたが、溜まりかねたように席を立った。
「あいつ人を呼んどいて何してんだよ。普通ゲストを出迎えるだろ、どんだけ遅刻してんだよ」
「準備に時間がかかってるんですわ。女性は男性と違っていろいろとありますから」
「あいつが女性?確かに性別は女だけど、俺と大差ないぞ。準備なんてするもんあんのかよ」
「ルオーク様、失礼ですわよ。シルビア様の前ではそのような事言わないでくださいね」
「うっせーな。そんなの気にする奴じゃないんだよ。俺の方が分かってんだからな」
ルオークは拗ねたように口を尖らせると、ドームの扉に向かって歩き出した。
「どちらに行かれるんですか?」
「散策でもしてくるよ。シルビアが来たらそう言っといてくれ」
「なっ招待されてるというのに………」
「あいつが遅いのが悪いんだろ」
ルオークはアンネローゼに構わず歩きだす。
そして扉に手をかけようとした時、歩いてくるシルビアが見えて手を止めた。
「あいつめ……わざわざ2人で呼び出して何するつもりだ」
ボソッと言い、ルオークはまた席に戻る。
「遅くなってごめんね〜」
すぐに全く悪びれない態度でシルビアが現れた。
実は2人きりにさせてあげようとわざと遅れてきたのだ。
「遅いんだよ!ちゃんと出迎える準備しとけよ!」
ルオークは声を荒げてからまた文句を言われるかと、アンネローゼの反応を見るように伺い見た。するとアンネローゼはシルビアを見ながらプルプルと小刻みに震えていた。
「おい、どうしたんだ?」
ルオークはアンネローゼの肩を掴み揺さぶる。
「……この方がシルビア様なのですか?」
腰までのポニーテールの黒髪に、騎士服に身を包んだ美しい少年をアンネローゼはまじまじと見た。
「そうだよ、アンネちゃん」
シルビアは瞳を細め、アンネローゼへとニッコリ笑いかける。
途端にアンネローゼは顔を真っ赤にした。
「アンネちゃん、顔赤いよ。大丈夫?」
そっと、その頬に触れると熱を持ったように熱かった。
「こ、こんな事女性に言うのも変ですが、とても……とても美しいですわ」
「美しいなら言っていいんじゃないのかな」
クスクスと笑うシルビアをアンネローゼは頬を染め目を潤ませながら見惚れる。
「おい、気軽に触れるな」
ルオークがアンネローゼに触れている手を掴んで引っ張ってきた。
おや、これはもしや嫉妬?それとも独占欲?
シルビアはニンマリと笑ってルオークを見る。
「うわっ気味悪い笑いすんなよ」
「どうして婚約のこと黙ってたのかな〜?もしかして僕に会わせたくなかった?取られちゃうとか心配した?」
「はあ!?馬っ鹿じゃねーの!?こうやってうるさそうだからだよ!」
「照れちゃって」
素早くルオークの脇腹をツンツンと突くと、ルオークは大きくのけぞった。
「さあ、2人共席について。すぐに食事がやってくるよ」
シルビアはエスコートするように、アンネローゼの椅子を引く。
「あ、ありがとうございます。シルビア様は所作も優雅で美しいのですね」
「レディにお褒め頂けて光栄です」
「何がレディだよ。紳士か?お前だってレディだろっつーの」
突っかかりながら、不満げにルオークも椅子に座った。
いやに突っかかるな。お子様と思ってたけど、婚約者の前では男として見栄はってんのか?そうなら面白い。
席についてからもアンネローゼはじっとシルビアを見ていた。
「アンネちゃん、僕はそんなに魅力的?」
「は、はい、とても。見入ってしまいます。騎士服がこんなに似合う女性はきっとシルビア様以外にいませんわ。男性とも違いますし、何て表現したらいいのでしょう。美しいしか言葉がありませんわ」
冗談で言ったのだが、アンネローゼは頬を赤らめている。
薄々メイド達の反応からも感じていたが、僕の男装はかなりの高評価だ。いや、男装ではないけど、動きやすいから着てただけだけど。
やっぱりこの顔かな。父上似で男顔であるし、目もキリッと切れ長だし。作りは整っていて悪くないよね。肌もメイドに磨きあげられてツヤピカだし。
あれか?いわゆる男装の麗人ってやつか?
「何が美しいだよ。全然美しくもないし、可愛くもないだろ。こんなんポーっと見つめちゃって変なの」
ルオークは面白くなさそうだ。
シルビアは手を伸ばし、ルオークの顎に手をかけクイッと上を向かせた。
「お前も褒められたいのか?ほらルオークだって充分カッコいいぞ、自信を持て」
「だーっ!離せ!」
ルオークはシルビアの手を払い除け、フンと腕を組んだ。
そこへ使用人達が料理や飲み物を持ってやって来る。
今日のルオークはピリピリモードだな………。婚約者が、というより女子がいる環境に慣れずにテンパってるんだろう。いつものようにも振る舞えず、かといって女子を構う事も出来ず、小学生男子にありそうな照れ臭くって、ってのね。ぷぷぷ、可愛い奴め。
シルビアはフルーツジュースの注がれたグラスを持ち上げる。
「照れ屋のルオークが内緒にしてたせいでお祝いが遅くなってしまったけれど、改めて未来の夫妻を祝福したい。これから共に幸せな人生を歩んでいってくれ、おめでとう!」
乾杯のようにグラスを高く掲げてから、それを口に運んだ。
アンネローゼは照れたように頬を赤くし、ルオークは不機嫌そうな仏頂面になっていた。
「何が腹立つって、お前のそのニヤついた顔だよ。ここぞとばかりに面白がって、あー腹立つ!」
ルオークはガツガツと料理をヤケ気味に食べ始めた。
「ちょっとルオーク様、はしたないですわよ。もっと丁寧に…」
「うるせー!腹が減ってんだよ!」
「だからといって妥協しては駄目ですわ。大切な場でその習慣が出てしまうかもしれませんわよ」
「分かってるよ。あーもう、お前本当にうるせーな。毎回お小言ばかりでうんざりするよ」
はい。イエローカード。
アンネローゼがその言葉にビクッと一瞬震えた。
「もうちょっと可愛い事言えないわけ?口開けばいつも文句ばっか。お茶会で他の奴らから聞いたけど、お前性格悪くてキツいって有名らしいな。俺の事言う前に自分を見直せよ」
はい。紛う事なくレッドカード。
本当お前こそ女心の分からない残念なお子様だよ。
まあそれでこそ、ルオークってものなんだろうけど。
アンネローゼはギュッと固く唇を閉じ、体を硬らせた。
シンとその場は静寂に包まれる。
あえてここは黙った。さあ、どうするルオーク。挽回できるか?
だが、誰も何も言わないまま静寂が続いた。
さすがにルオークが気まずそうに切り出す。
「えっ何この空気?俺変なこと言った?」
異変には気づいたようだな。仕方ない、この僕がこの気の利かない幼稚なお子様ルオークを男にしてやるか。
「ああ言った、お前は完全アウトの男だ。剣を鍛えたり勉強を頑張って上辺を磨いたって、お前は下の下の男だ」
シルビアは席を立ちルオークの前に仁王立ちに立った。
「この最低男!女の敵!鈍感男!」
「なっ………!」
ルオークはビックリと目を丸くした後、意見を求めるようにアンネローゼを見る。
だが、アンネローゼは何も言わずプイッと横を向いた。
「何だよ!?何とか言えよ!」
「久々にシルビア先生の出番がきましたね。ルオーク君、男友達じゃないんだから女子に声を荒げない。これが集団生活なら、やだールオーク君って乱暴でガサツ〜、最悪なんですけど〜などなど非難の的ですよ」
シルビアはルオークに詰め寄り、人差し指でそのおでこをツンツン突いた。
「やめろよ!うざっ!お前うざっ!」
「ルオーク君、僕は前から思った事をそのまま口にするなと言ってましたよね。悪気がなければ許されるなんて大間違い。言っていい事と悪い事の区別も出来ないのはただの馬鹿だ」
シルビアはギュッとルオークの鼻をつまむ。
「もう分かる年齢だろ、ルオーク」
「痛っ!」
ルオークはシルビアの手を払いのけると、ムッとした表情で睨みつけてきた。
「強い男になりたいって言ってたな。誰もが認める男ってのはなあ、力だけじゃなく中身も伴ってるんだよ。女子に対抗して言い負けないよう傷つけるような発言して、あげくに他人の噂話鵜呑みにして真実みたいに話しちゃってさ、クソだっせぇの」
「うるせぇ!」
「それが本当にアンネちゃんの真実だと思ってんのか?今まで何回も会って分かってるだろ。他の奴らが何て言ったって、お前だけは味方になってやんなきゃいけないんじゃないのか?」
アンネちゃんのショックを受けた顔を見たら、ついテンションが上がってしまった。もっと先生的アドバイスをしたかったのに。
婚約者のお前がそんなままだと、アンネちゃんが可哀想だ。
これからずっと一緒に生きてく事が約束されてるのに、こんなお子様で無神経男なんてあんまりだ。
怒ってすぐ言い返してくると思ったルオークは、口をつぐんでいた。まさか昔みたいに泣いたりしないよな?
「ルオーク、怒ってるんじゃないんだよ。立派な男になってほしくて言ってるだけで………」
「分かってるよ。そんな悲しそうな顔して言われちゃ、まるで俺が悪者みたいじゃないか……」
いや、この場合悪者なんだけど。間違ってない。
「ちなみにルオークはアンネちゃんどう見えてる?」
「どうって……いつも口うるさくて、無愛想だし……、お茶会での事も、性格悪いとは思わないけどキツいのは本当だし、そう言われてしまうアンネローゼも悪いんじゃないのかなって………」
一応気を使ってるのか、アンネローゼの方をチラチラと見ながらルオークは言った。
「なるほどなるほど。見える表面をそのまま受け取っちゃう単純なパターンね。まあ仕方ないか、お子様だからな。経験値が足りないよね」
「まるで自分は違うみたいに言ってっけど、お前にはどう見えてんだよ?」
あっそれ聞いちゃうの?もう答え聞いちゃう?
シルビアはニマニマとしながらアンネローゼを見た。その視線にアンネローゼはビクッとし、居心地悪そうに目を逸らした。
「お互いにこの前のお茶会で初めて会ったばかりだけど、僕にはすぐ分かったよ。この子はツンデレ属性だってね」
「ツンデレ………?」
ルオークが何言ってんだ?という顔をする。
「ツンデレが分からないか。例えるなら、真面目で融通の利かない意地っ張りさんだ」
「何かよく分からないけどそうなのか?」
「それと共に、めちゃくちゃ照れ屋さんでもある」
「え〜、アンネローゼが?」
「お前照れさした事ないだろ、癖になるぞ」
ニヤっと笑いシルビアがアンネローゼを見る。ルオークもどれどれと見た。2人に見られ、アンネローゼはカアッと赤くなる。
「か、からかわないでください」
「ほら照れた〜。アンネちゃん可愛いね〜」
「もお、止めてください!」
「ふふっほっぺた真っ赤。色白いから鮮やかに出ちゃうね」
シルビアがアンネローゼの頬に優しく触れると、さらに赤みは増した。アンネローゼの瞳が潤む。
「もおやだ、からかわないでください!」
「見て見て、ほら可愛いでしょ」
シルビアに言われルオークも席を立ち覗き込む。
「確かに照れまくってんな。いつもと違う」
ルオークにまで見られ、アンネローゼは泣きそうな真っ赤な顔で席を立った。そして、ドームの入り口の方へダッと走りだしたが、途中でドレスの裾が絡みそのまま前に倒れ込んだ。
シンと静まった中、アンネローゼはピクリとも動かない。
「お、おい、アンネローゼ大丈夫か?」
すぐにルオークが駆けより、アンネローゼを抱き起こした。
だが、アンネローゼは両手で顔を覆って無言だ。
「どうしたんだ?顔打ったか?」
それにも何も答えないアンネローゼにルオークは戸惑い黙り込む。
そこにシルビアがやってきて、横に座った。
「まずは治療だな。ちょっとアンネちゃんごめんね」
優しく手をどけようとしたが、物凄く力を入れてるのでびくともしなかった。抵抗が凄いな。
でも、ごめん!
一気に力を込め、顔を覆う手を引き剥がした。
あ………鼻血出てる。
シルビアはサッとアンネローゼの鼻に手をかざし、治癒魔法をかけると素早くハンカチを取り出し鼻血を拭き取った。
「ほら、元通りだよアンネちゃん」
だが、アンネローゼの瞳からは涙がポロポロと溢れだした。
アンネローゼは再び顔を隠すように両手で顔を覆った。
「シルビア治癒魔法なんて使えたんだな」
感心したようにルオークが言う。
「殆どの魔法使えるよ。苦手なのはごそっと魔素使われるけど、魔素量凄いあるから普通に使える。って今はそれよりアンネちゃんでしょ」
僕でなく、この状態のアンネちゃんに声をかけないでどうする!?
だが、ルオークは腕の中のアンネローゼを見てブッと吹き出した。
え?いや、それは駄目でしょルオーク………。
「ルオーク、笑うとこじゃないでしょ」
「いや、違う、ごめん!だってさ、普段のアンネローゼと全然違うから、ぶっ……面白くて」
ルオークは笑わないよう堪え、ぶるぶると震えた。
「わ、悪い意味じゃない!いつもすまし顔で文句やお小言ばっかのアンネローゼが、あんな真っ赤になって狼狽えて転けて鼻血って……ぶぶっ」
「え〜?笑う要素ある?」
「いや、ごめんって。お前面白い奴だったんだな」
ルオークはアンネローゼを見て堪えきれずにあははと笑いだす。
そんなルオークを指の間の隙間からアンネローゼは覗き見た。
こんなに楽しそうに笑いかけられるのは初めてだったので、状況は最悪だったが胸は高鳴った。
「もう泣くなよ。治してもらったんだし、どこも痛くないだろ?さては、転けて恥ずかしいんだろ」
ルオークはアンネローゼを抱えたまま、片手で顔を覆う手を掴み顔から離した。
その途端、悪戯っ子のような笑みで自分を見てくるルオークの顔が視界に飛び込んできて、アンネローゼは真っ赤になった。
「こ、こんな恥ずかしい姿見ないでください。みっともないわ」
アンネローゼはルオークの腕から逃れるように立ち上がろうとし、またドレスの裾に引っかかり転びかけたが、それを慌ててルオークが支えた。
「ぶはっ、お前動揺しすぎ!ちょっと落ち着けって、いつものお前はどうした?あっ、もしかしてこっちが素か?」
からかうような笑みをうかべるルオークを、驚いた赤い顔で目をパチクリさせアンネローゼは見る。
「ぶぶっ。お前……何なんその顔、ギャップ凄くて……」
ルオークはうつむき、肩を震わせクククと声にならない笑いをもらした。
「わ、笑わないでくださいませ!」
「だって、もうどうしたんだってくらい違くて可笑しくって。お前可愛…………」
可愛いと口にしかけて、ハッとしルオークは口をつぐむ。
別に言葉に出しても問題はないだろうが、それを口に出してしまうと急に意識してしまいそうで怖かった。
「どうせ……可笑しいですわよ。いいですわ、カッコ悪いと笑ってくださったって」
アンネローゼはふくれて、プイッと横を向く。
「ははは、拗ねんなよ。こんなふくれちゃってさ」
ルオークは笑いながらアンネローゼの頬を軽く摘んだ。
だが、すぐに手を離しビックリしたような顔をする。
「うわっ、柔らか………」
自分を見つめる潤んだ瞳のアンネローゼと目が合い、瞬間ルオークはボッと赤面した。
「ちょ、待て、これ無し。そんな顔で見んな、反則だろ」
ルオークはアンネローゼをその場に置くと、立ち上がり手で顔を仰ぐ。そして、チラッと横目でアンネローゼを見た。
アンネローゼはじっとルオークを見ていた。
「………ん」
ルオークはそれだけ言い手を差し出す。
アンネローゼは黙ってその手を取った。
ルオークは力を入れ、アンネローゼを立ち上がらせると少し照れ臭そうな顔で笑った。アンネローゼもつられたように笑う。
「気をつけろよな」
「今回はたまたまですわ。私がしっかりしてるのはご存知でしょう?」
「そう思ってたんだけど、動揺すると一気に崩れんのな。ぷっ、思い出すだけで笑える」
「もう、ルオーク様、あんまりからかわないでください!」
楽しそうに会話をする2人を、1人席に着いて食事を食べながらシルビアは見ていた。
あいつら僕の事忘れてない?何だか雰囲気もいいしさ。
まあ、これから共にある2人が上手くいくのはいい事なんだろうけど。
「はーい。2人共仲良くチューでもすれば?」
「チュー?」
振り返ってルオークがキョトンとする。
「口づけってこと。婚約者なんだから、ブチューと………」
「お、お前何言ってんの!?はあ!?頭おかしいぞ!」
「ばっか、年頃なったらもっと凄い事すんだぞ。誤解の解けた今日という記念日にチューしてもいいんじゃないかと思ったまでだ」
「お、思ったじゃねーよ。そんな気軽にするもんじゃないだろ」
「そっかー。そうゆうもんか。ごめんね、アンネちゃんも」
真っ赤になっているアンネローゼへと、とりあえず謝っておいた。
ちなみに、前の世界での僕のファーストキスは小学生だ。
積極的な女子のキスしてみよっか、との誘いに乗っかっただけで、好きとかでなく、こんなもんかと思った記憶がある。
ある程度年頃なってからの方が、キスに別の意味も加わり興奮や特別感はあった。
この年代のキスなんて、形だけの軽いものと思ったが、真面目なアンネちゃんには悪いことしちゃったな。
「とにかく2人のわだかまりも解けたようで安心したよ。アンネちゃんはとにかく真面目で融通きかなそうだから、キツいように思われがちだけどただ不器用なだけだから。その点、ルオークは不真面目だし遊びばっかだし、お互い足りないとこ補い合えてお似合いだと思うよ」
シルビアは2人へとにこやかに笑う。
「不真面目で遊びばっかって、何だよ」
「そのまんま。いいか、アンネちゃんの言う事ちゃんと聞いとけよ。うるさく思ったって事実ルオークの足りないとこを言ってくれてんだから。文句じゃなくて助言してるつもりなんだよ、アンネちゃんは」
「分かりにくいんだよ」
「分かれや。だいたいお前こそ、好き勝手な事口にすんな。アンネちゃんに僕のこと変態って言ってるんだって?」
「だって………変態だろ?」
そうだよな、というようにルオークはアンネローゼを見た。
すると、アンネローゼはチラッとシルビアを見てからコクっと頷く。
「実際にお会いして他の方とは違うものを感じました。ルオーク様のおっしゃる通りかと」
アンネちゃん………さてはさっきのチュー発言を恨んでるな。
真っ赤な顔で信じられない!みたいに睨まれたからな。
あーあ、何2人意気投合しちゃってんのさ。
せっかくアンネちゃんと女の子友達として仲良くなろうと思ったのに、変態認定って………。
まあ、いっか。これから誤解も解いてけば。
シルビアは顔を見合わせて照れたように笑う2人を見ながら微笑む。
からかうの好きなルオークのことだから、絶対デレたアンネちゃんに食いつくと思ったんだよな。
アンネちゃんが思い悩んでるようだったから、仲を取り持ってあげるつもりではいたけど、こんなに上手くいくなんてな。
ルオークがアンネちゃんの魅力に気づいたから、アンネちゃんの実力ではあるけど、こうゆう場を設けてアシストした僕の功績も大きかったよな。
そう思うと、この甘酸っぱい青春を見るのもなかなか乙な気分だった。




