表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

06 ランドマークの種

06 ランドマークの種


 そして始まるリンゴパーティ。

 真っ赤でツヤツヤのリンゴは歯ごたえもよく、ひと口かじるとジューシィな果汁が溢れ出す。


「うんっ! こりゃたしかにいいリンゴだ!」


 スズメはリンゴの山に咲いた花のような笑顔を浮かべていた。


「イエス! とっても美味です! ご主人様から頂いたリンゴだと思うとなおさらです!」


 地獄の住人たちは、リンゴを貪りながら泣いていた。


「ああっ、リンゴをまるごと食べられる日が来るだなんて、夢みたいだ!」


「あああっ、なんてうまいんだ! こんなうまいもの、生まれて初めて食べた!」


 父っちゃん坊やは穴の縁で跪き、絶叫しながら手を伸ばしている。


「ぷあぁぁぁぁぁぁぁっ!? くっ、食うなップ! それはハイランダー家に献上するリンゴなんだップ!

 頼むップ! 頼むから返してップ! でないと父上に殺されるップ! お願いお願い! お願いップぅぅぅっ!」


 俺は父っちゃん坊やを少し懲らしめるつもりで、残ったリンゴは返してやるつもりでいた。

 しかし用途を聞いたとたん、その気持ちはきれいさっぱり消え去る。


「はぁー腹いっぱいだ。みんな、良かったらお土産にも持って帰ってくれ」


「い……いいのか!?」


「俺は、寝たきりのばあちゃんに食べさせてやりてぇ!」


「ありがたや、ありがたや~っ! スカイ様はワシらの神様じゃあ!」


「スカイ様! この恩は一生忘れねぇ!」


「ああ! なにかあったらいつでも言ってくだせぇ! スカイ様のためなら、すぐに駆けつけますから!」


 住人たちは両手いっぱいにリンゴを抱え、ホクホク顔で帰っていく。

 父っちゃん坊やは泣き崩れていた。


「くぷっ……! くぷっ! ぐぷぷぷっ……! お、覚えてるップ、スカイ……!

 絶対に、絶対に許さないップ……! パパに……! いや、ソレイユ様に言いつけてやるップ……!」


「ああ、それならついでに、ヤツによろしく言っといてくれるか?

 『お前のものをふたつも奪ってわるかったな』って」


「キャッ! わたくのハートも、すっかり奪われてしまいました!」


 頬を赤らめながら寄り添うスズメとともに、俺はまた歩きだす。

 その途中、またしても身体が光に包まれた。


--------------------------------------------------


 翼の愛 ♥♥♥


  浮遊魔法

   LV04 レイヴン

   LV03 ストライク

   LV02 チョッパー


 スカイランドの規模 なし


  スカイランド

   NEW! ランドマーク


--------------------------------------------------


 歩きながら魔法ウインドウを見ていた俺は、首をかしげる。


「新しいステータスに、魔法ツリーも増えてる……。しかも、どっちも聞いたこともない内容だな……」


 新しく増えた魔法の効果はこんなものだった。



 ランドマーク

  『ランドマークの種』を出現させる



 さっぱり意味がわからない。

 試しに魔法を使ってみると、空中に米粒くらいの大きさのクリスタルが現れ、七色の光を放つ。


 スズメはその輝きに負けないくらい、瞳をキラキラさせて見入っている。


「うわぁ、とっても奇麗です……! これは、何なのですか!?」


 クリスタルを指でつまんで取ってみたら、光は消え去った。


「わからんが、『ランドマークの種』らしい」


「種!? ということは植えるものなのですか!?」


 スズメの一言で、はたとなる俺。


「そうか、種っていうからには植えて使うものかもしれないな。

 しかしここじゃ足元はゴミだから、土がある所まで移動しよう」


「イエス、かしこまりました!」


 俺たちはさらに歩く。

 塔のまわりはゴミの海だが、さらにその外側は荒れ地になっていた。


 陽が差さないので草もほとんど生えておらず、コケと岩だらけ。

 湿った風が吹きすさび、ところどころに拾ってきた瓦礫で作ったような掘っ立て小屋がある。


「なにかを植えるにはイマイチな場所だが……他に良い場所もなさそうだな」


 俺は適当な更地を選び、地面をほじくって『ランドマークの種』を植えてみた。

 しかし、なにも起らない。


「種というからには、お水をあげてみてはどうでしょう?」


 スズメは近くにあった沼から、濁った水をすくってきて、種のある地面にばしゃっと撒いた。

 すると、湧き水のように光がこんこんと生まれ、ひとまわり大きくなったクリスタルの頭が、ボコンと飛び出す。


 種は明らかに『成長』した。


「よし、スズメ。もっと水をかけてみよう」


「イエス! かしこまりました!」


 俺とスズメは沼を何度も往復し、種に水をかけまくる。

 種は水を吸収するたびに、どんどん膨れ上がっていく。


 洞窟に埋まる大ぶりな水晶のように伸び上がり、ついには俺の腰の高さくらいまでになった。

 『ランドマークの種』が放つぼんやりした光を吸収し、俺はまたレベルアップする。


--------------------------------------------------


 翼の愛 ♥♥♥


  浮遊魔法

   LV04 レイヴン

   LV03 ストライク

   LV02 チョッパー


 スカイランドの規模 更地


  スカイランド

   LV02 ランドマーク

   NEW! ハウス


--------------------------------------------------


 スカイランドの規模が『なし』だったのが、『更地』になっている。


「もしかして、『ランドマークの種』を植えた場所が、『スカイランド』になったってことか?」


「スカイランド……? ご主人様の国、という意味でしょうか?

 ふわぁ……! ご主人様がいっぱいだなんて、それこそ夢の国です! わたくしにとってのエルドラドです!」


 ウットリした表情のスズメをよそに、俺はあたらしい魔法の効果を確認する。



 ハウス

  最寄りの素材で家をつくる



「最寄りの素材……岩と土ってことか? まあいいや、ハウスっ!」


 俺は地面に向かって手をかざし、さっそく魔法を使ってみた。

 すると、近くにあった大岩がズボッと抜けて舞い上がり、切り出された石のように空中で真四角に成形される。


 そして積木のように、目の前で積み上がった。


 ……ずどどどどどどどぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーんっ!!


 もうもうとあがる砂煙と地響きに、スズメは妄想を中断させられ「キャッ!?」と飛び上がる。


「うわあっ!? な、なにがあったのですか!?

 ちょっと目を離したスキに、こんな立派なお家を建ててしまうだなんて!?」


 俺たちの目の前にあったのは、石造りの家。

 石の窓や扉があり、しかもウッドデッキならぬストーンデッキがある本格的な家だった。


--------------------------------------------------


 翼の愛 ♥♥♥


  浮遊魔法

   LV04 レイヴン

   LV03 ストライク

   LV02 チョッパー


 スカイランドの規模 一軒家

  総人口 2人


  スカイランド

   LV03 ランドマーク

   LV02 ハウス

   NEW! テリトリー


--------------------------------------------------


 石の家を建てた途端、スカイランドの規模は『一軒家』となった。

 『総人口』の2人はおそらく、俺とスズメのことだろう。


「おおお! なんという立派な玄関なのでしょう!

 広くて使いやすいうえに、ホッとするような安心感があります!

 それに見て下さい、こんなにたっぷりの収納! 素晴らしいお宅ですねぇ!

 これを建てたのは、きっととんでもない匠に違いありません!」


 妙な口調で石の家を見てまわるスズメをよそに、俺は新しく増えた魔法の効果を確かめてみる。



 テリトリー

  ランドマークに隣接している、『10平方メートル×レベル』の広さをスカイランドにすることができる

  スカイランドにしたテリトリーは、浮遊魔法の効果を与えることができる



 ……これは、どういうことなんだろう?

 説明からするに、今まで以上に異質な魔法のようだ。


「まあ、習うより慣れろ、だ」


 俺はさっそく『テリトリー』の魔法を使ってみることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] もともとの天上人もこうやって 高みに登っていったのかもしれませんね そして段々と廻りをおべっか使いに囲まれて……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ