表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/15

14 天空の集落

14 天空の集落


 俺は眼下に広がる農園の大火事を眺めながら、いざとなったらスカイランドを降下させて救助をしてやろうと思っていた。

 しかし人的被害はクアップが髪を焦がした程度で、農夫たちは全員避難し終える。


 リンゴ農園はすっかり焼け野原になってしまい、こんな事なら『テリトリー』でもらっておけば良かったと思う。


 しかしスカイランドの住人たちは、もう誰も対岸の火事など気にしていなかった。

 誰もが空を見上げ、頬を濡らしている。


「お……おお……! これが、空……!」


「ずっと穴ぐらみたいな所から、隙間の空からしか見たことなかったけど……!


「空って、こんなに奇麗だなんて、知らなかったべ……!」


「澄み切った青が、どこまでもどこまでも続いてる……!」


「心だけでなく、身体までもを天に昇らせてくれるお方なんて、ご主人様だけです!

 わたくしの愛も、もはや天井知らずと言って良いでしょう!」


 盛り上がっている彼らに水を差すつもりはなかったのだが、いちおう言っておかないとな。


「天にも昇る気持ちのところを、邪魔して悪いが……。

 まわりにあるのは本物の空じゃない。魔導装置で作り出されたニセモノの空だ」


「えっ、そうなのですか、ご主人様?」


「ああ。塔のまわりは階層ごとに板のような大地が広がってるが、それは魔導装置によって作られたものだ。

 『地獄』は見せしめのために土の天井のままだけど、第1層より上は幻影魔法で空を映しているにすぎない」


「ええっ、上にある空は幻影なんですか!? どう見ても本物にしか見えないんですけど!?」


 翼をパタパタ、足をぴょんぴょんさせ、空に向かって手を伸ばすスズメ。


「ああ。もうちょっと上昇すると、第2層の大地である、土の天井が見えるようになる」


 コメッコはとても信じられない様子で、首がグキッと鳴るのもかまわずに真上を見上げている。


「スカイ様、それはホントにホントだか? ちゃんと、お日様も見えてるだ!」


「ああ、あれも幻影の太陽だ。幻影といってもちゃんと太陽としての機能は備わっている。

 それに天井には水が循環してるから、雨を降らせるこもができるんだ」


 スカイランドの住人たちは、それでもまだキツネに化かされているような表情だった。


「まぁ、無理もないか」


 この事実を知っているのは、『ハイランド魔法学校』に通う一部のエリートだけだ。

 屑人(くずびと)はもちろんのこと、尖人(せんじん)だってほとんどの者が知らない。


「信じるか信じないかは、お前たちの自由だ。

 今はそんなことよりも、ここで暮らしていくだけの準備をするのが先だ」


「ここで暮らす、って……もしかしてご主人様、空の上で生活なさるのですか?」


「ああ。安全な場所が見つかれば着陸はするが、いざとなったら空の上で長期滞在できるくらいの下準備だけはしておかないとな」


「なるほどぉ、さすがはご主人様、先見の明ありまくりです!」


「オラたちも手伝うだ! まずはなにをすればいいだか?」


「最初は住むところだな。家を建てよう」


 「家っ!?」とハモる住人たちをよそに、俺は第1層の大地を眺め回す。


 第1層は、森や草原などの自然にあふれ、畑や農場が多い。

 『ハイランド・タワー』で消費される野菜や果物のうち、2割をこの第1層で作っているという。


 少し離れたところに良さげな森林を見つけたので、俺はその方角に進路をとった。

 周囲に人の気配がないことを確認し、森林のど真ん中にある草原に降りる。


 ……ずずぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!


「それじゃあさっそく、木を切り倒しましょう! えいえい、おーっ!」


 錆びた包丁を手に、新人の鬼婆のようなやる気で森へと飛び込もうとするスズメ。

 俺はレイヴンを使って、彼女の身体をズルズルと引き戻した。


「慌てるな。包丁なんかで木を切ってたら、日が暮れちまうぞ」


「ご心配なく、ご主人様! わたくしはこう見えて『キツツキのスズメ』と呼ばれておりまして……!」


「まぁ、いいから見てろって。……ハウスっ! 建ち並べ!」


 近くの森に向かって手をかざすと、木々が根っこごと、ひとりでにスポスポと引き抜かれる。

 木々は、飛び立つ鳥たちを追いかける巨大な矢のように、次々と空に打ち上げられた。


 それは天変地異のような光景で、住人たちは「えええっ!?」とたじろいでいた。

 直後、さらに信じられないことが起る。


 木々は俺たちの所に向かって飛んできながら、樹皮が剥がれ、空中でバラバラになって木材となった。

 スカイランドの真上で、家の形に組み上がると、


 ……ずどどどどどどどぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーんっ!!


 空きスペースに次々と建ち並んでいく。

 1分もかからずに完成したとはいえ、どれも立派な木造の家屋ばかり。


「よし、お前たち、好きな家に住むといい」


 と俺は言ったが、住人たちはポカーンと立ち尽くしたままだった。


「あ……あっという間に、家を建てるだなんて……」


「しかも、俺たちが見たこともないような、立派な家を……」


「す、スカイ様はどんだけの力を、持ってるんだ……!?」


「あ……ありがとうございますぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」


 住人たちは一斉に膝を折り、俺を拝みはじめた。


「瓦礫のボロ屋で生きてきた俺たちに、こんな立派な家を授けてくださるだなんて……!」


「間違いねぇ! やっぱりスカイ様は神様だ!」


「私たち、なんとお礼を言ったら良いのか……!」


 俺は長いこと感謝なんてされたことがなかったから、どうにもくすぐったい。


「あー、礼はそのへんでいいから、家を選んでくれるか。

 お前たちにやってもらうことは、そのあとに指示するから」


「はいっ! スカイ様!」


 キビキビと立ち上がり、新築の家に走っていく住人たち。

 その背中を、スズメはひとつ上の先輩のような余裕で見送っていた。


「スズメ、お前も好きな家を選んでいいんだぞ」


 するとスズメは、「とんでもない!」と目を剥く。


「スカイ様は、最初に建てた石のお家に住まわれるのでしょう!?

 でしたらわたくしも、そちらでご一緒させていただきます!」


「べつに、そこまで一緒にいる必要は……」


「必要あります!

 おはようからおやすみまで、ご主人様を見つめるのが奴隷というものです!

 もしダメだとおっしゃるのなら、家の壁に生き埋めになってでも見つめますからね!」


--------------------------------------------------


 翼の愛 ♥♥♥♥♥♥


  浮遊魔法

   LV07 レイヴン

   LV06 ストライク

   LV05 チョッパー

   NEW! スコール


 スカイランドの規模 天空の集落

  総人口 13人

  最高度 20メートル


  スカイランド

   LV06 ランドマーク

   LV05 ハウス

   LV04 テリトリー

   LV03 グローアップ


--------------------------------------------------

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ