主人公では地獄を見るので俺は端役になります
神と神、どちらが間違っているなんてことはないのだろう
が、方針の一つで争いが起きる
――神話の時代に
ある神は
『力を持ち自らの手で道を一人で斬り進む者こそ誠に必要なのだ』と
ある神は
『力を持つこと必要であるが支える物があるからこそまたは支えてくれる者がいるこそ。そんな存在が必要なのだ』
とお互いの意見を掲げた
お互いの意見に対峙し、いつからか神々での争いとなった
これが天地神闘と呼ばれる古の大戦
人の歴史では神霊族と呼ばれる神が勝ったとされるが……
真実は異なる
戦争は終わっていない
代理戦争だ
神霊族は人に勇者を地神族は魔王を作り上げた
本当に傍迷惑な話だ
「勇者様~!」「勇者様ーー!」
「賢者様ーーーーーー!」
「きゃ~聖女様!」
「英雄達ありがとう!!」「戦士様~!!」
数々の言葉がかけられる
それもそうだろう
魔王討伐の凱旋行軍だからな
勇者、賢者、聖女、戦士、そして俺
この五人で世界を巡り人に仇を成す魔族、魔王を討伐する旅が今日終わった
あぁ、いつもそうだ。ここまでは本当にいいものだよな
これで果たして何回目だろうか
指で数えれる数よりは多い、だろう。まぁそこまでは数えたからな
勇者は人の味方、魔王は敵で魔族の取り纏め
よくある話だろう?
でもこれは現実だし魔王は完全には消せていない
これも流れ通り
勇者は生まれた瞬間から勇者である
この世界には必然的に二人の勇者がいる
俺と俺以外
『何キモイこと言ってんの?』
なんて思って欲しくないため言うがこれは呪いに近い……いや、もう呪いだな。神から受けた
今から5,000万年前に俺は神に選ばれた
当時の魔王は多くの地神族が力を合わせて作られた存在で過去最強だった
よって勇者に勇者そのものの力とそれプラス三つの力が与えられた
『七刻の魂』
『永劫輪廻』
『無限魔力』
『七刻の魂』は七つの魂を一刻の内に消し去らねば死なないという力
『永劫輪廻』は死んでも生き返る、この力のおかげで七刻の魂を使える
『無限魔力』は実際に無限に魔力があるわけではなく日頃のうちから魔力を貯め続け使えるという力
どうだろうか、最強だと思うだろ?
俺も最初は最強だと思ったさ、今じゃ最凶だよ
欠点を挙げよう
『七刻の魂』は一つの魂が消される度に逃げられない痛みが広がる。気が狂うことは勇者の力によって出来ないため逃げ場がない
『永劫輪廻』は自動で行われるため自分じゃ何も出来なくて記憶が来世に繋がれる。昔の記憶も今の記憶と同じになるのはほぼ不老不死に近い
生き返る度に大切な人の死に耐えないといけない
『無限魔力』はいつも魔力を一律で吸うため魔力が少なくなるとほんとにすぐに無くなる、しかもこの力は魔王にしか使えないのだ
この力をくれた神は神霊族の中でも高位の存在という事で他の神は俺からこの力を外すことが出来ない
じゃあくれた人にやってもらえって?
そうなる予定が狂ったから出来ないのだ!
最強魔王は歴代で初めての神へ攻撃が通った
地神族は代理戦争の中でも神に攻撃する目的を持っていた、そのため神霊族は必然的に受け身に近い
神に通ったのがたまたま俺に力をくれた神でそのまま神は殺された
いや、うん
ほんとネ
よって勇者の生を繰り返し続けることになった
最初は良かった
勇者として生まれ変わり勇者として死ぬ
その繰り返し
でも気づいたのだ
毎回人に殺されてることに!
1度目はまぁ最強魔王だ、相打ちだった
しょうが無いわ
2度目は普通の魔王で勝てた、国王から言われていた王女との婚約という報酬だと思っていたのに帰る途中で農村にて殺された
問題があったんだよな
魔王討伐時に多くの街を救う為に駆け回りそれでも救えない村町はあった
最後の方は魔族が俺を恐れることで来なくなっていた地域があったのに遅らせたことで恨みに繋がりそして殺された
3度目はサクサクと進めることにした、サクサク魔族を最低限且つ最大限の痛手になるように動いて魔王討伐してサクサク俺、殺された
最低限過ぎたらしい
まぁ3回目でイラッと来た
魔王に勝てると言っても絶対じゃない、確実じゃない、俺が何人もいるわけじゃない。手から溢れ漏れる命があるのにそこを責められる
巫山戯るな
という事で旅に出る前に宣言をした
必死に敵と戦うが救えない命もあるかもしれない。自分の命もかけていると
そうした4回目、市民に殺されませんでした
今回は貴族でした
はい、イラ~
知能がある分、御しずらいと判断され不意打ちを何重にも重ねられ死にました
5回目、貴族に程よく制御できると判断されるように動いていたら王女と幼馴染の騎士団長に殺されました
不倫かよ……いや、結婚してねぇや。なんで殺されたん?
6回目、前部分を省いて王女との婚約は要らないと言って街に住もうとしたら「あれだけの脅威だった魔王を討伐しかも手際が良すぎるそんな危険な存在が存在するのは危険だ!」なんて言われて殺されました
まさかの存在否定!?
7回目、栄誉なんて要らん!
と王の前で栄誉章を壊したらぶっ殺された
いや、これは1番悪手だったわ
8回目は栄誉が要らないことをやんわりと言って森に逃げると魔族、うじゃうじゃ、リンチ
失敗だった、移動を全力で行ったら魔力切れになってしまったことが悪かった
とりあえず踏んだり蹴ったりだな
最終的に気づいた
俺以外にこの役目代わってもらおうと
参戦名『なんも要らんから世界守らせろ作戦』
この力を無駄にするのは多分駄目だしでも死にたくないしという事でやってみるも辛いことは辛い
旅で付き合うことを誓ってもなんか奪われる
なんか散々
という事で憂さ晴らしの方法に気づいた魔王を一人で討伐という快感
勇者の代役とそのパーティに話をすると多くの代でやらして貰えた
まぁ少し力で言葉をねじ伏せてるけどね!うん、少し!
人に殺される最悪を何度も繰り返し最近じゃつまらなくなってきたな
俺も1回目の魔王みたいに神殺し目指そうかなー
俺なら地神族かー
なんて最近は考えるだけ考える
まぁ行動には移さないな
めんどくせぇ
生きる意味が見いだせない生活は辛いことだ
もう何年……じゃなくて何回目の転生からだろうか飯を食べても味がしない
昔は美しいと思った景色を美しいと心から思えない
なにかが抜け落ちたんだろうな……
面倒な行進中馬に乗る勇者の馬の先導役としてついている中で考えていた
いつ出ようかなー
◇◇◇◇◇
王様の長々しい話の途中で眠くなりすぎたので普通に出ましたー
なげぇ~
転生する度に長くなってないか?
なんの遺伝だよ
森に入った
いつものルート
まぁいつもの理由もあるんだけどね
この森には大きな湖がある
誰も入れない、というか誰もここにあることを知らない可能性もある
無限魔力を上手く使った
大変だったけどここを守りたかった
なんでだろう? 今でも分からないけどここを守る結界は永続じゃない
ここの結界を作った時のような魔力をもう使うことは出来ないかもしれないが魔王討伐直後にほぼほぼの魔力をここに注ぎ込む
ここは思い出があるはずだ
最後の――分からない
今回も今回として結界の中に入るといつもと違う。
小さな子どもが湖を見て座っている
小綺麗な服を着ている
貴族? いや、それにしては少し服の型が古い?
「誰だ?」
その声に反応してこちらを見る幼女
その目は久しぶりに綺麗だと思った
そして……なにか懐かしさを感じた
「今回もご苦労様です」
「今回も?」
「はは、忘れてしまいましたか?」
そういう幼女は幼女に似合わないような悲しげな顔で微笑んでいる
というか言葉の一つ一つはよく聞くはずなのになにかが懐かしい
「君は、誰だい?」
「……ふふ、今の年を聞いて驚きました、アナタと約束したのにここまで遅れれば忘れてしまいますよね……200年かかりました。いや、こちらの方が早いですね」
そう言って光球を俺に見してきた
いや、俺に精神攻撃は……
◆◆◆◆◆
「綺麗なとこだな……」
枯れ草色の景色、自分の声? でも出すつもりがないのに声が聞こえる
「そうでしょ?」
「はは、大丈夫かよ、貴族なのにそんな言葉遣い」
楽しそうに笑う俺
その隣に服はキャビキャビして無駄な装飾をつけた服ではなく素材が高そうと思えるくらいに素材を活かす作りをしている
どことなくあの幼女の服に似ている
「で? 影の勇者様はいつになったら名前を教えてくれるんですか?」
「お前の性格は知ってるよ、名前、教えたら呪詛でもつけて俺を追うんだろ?」
「あら? そんなんじゃ足りませんよ、私の命をかけて呪詛をつけます、それならアナタも跳ね返さないでしょ?」
「やっぱやべ~奴」
そう言って笑う俺にその記憶が無い
でも、何となく
幸せを感じる
あとこの結末は知らないけど多分名前を言わない理由って
「私は裏切りませんよ?」
「ッ!?」
「知らないとでも? アナタに関することを必死に探しました」
「公爵様のご令嬢に知られるなんて光栄ですね」
「心にも無い言葉はいらないですよ。私はアナタの為なら命をかけれる、なんなら不倫できない呪いでもかけてくださいよ」
「はは、笑えないね、俺は作る方じゃなくて破る方しか出来ないしね」
「では、信じてください!」
短く心からの叫びが女性から出た
短い沈黙が湖を制した
湖に住む魚の呼吸の泡が爆ぜる音が響く
「……」
「あの時救ってくれたアナタの背中を忘れない、私は絶対にアナタと一緒に生きていく」
「怖いんだ――」
あれ……この言葉……は覚えがある
精神だけが飛んでいるはずなのに頭が痛い
記憶が……
「怖いんだ、今の幸せがあっても次に君は居ない俺はまた次の魔王を倒すために転生する、俺の輪廻は永劫だから、今、幸せを知れば次を一人で生きていく自信がない!」
また、一つの沈黙
まぁ彼女の顔が全てを台無しにしてる気もするが
「良かったーーーーーーーーー!」
「ふへ?」
「そんなことなら大丈夫です」
「え? いや、え?」
くく、思い出した、いや、これは俺が忘れない為に記憶を刻んで隠したんだった
そこまでコイツ見据えてたしな
「いいですか? まずアナタが私を殺す」
「いや、なして!」
「聞いてください、最後まで」
「う、うぐ……」
「私を殺す際に『永劫牢獄』を発動して私を閉じ込めてください」
「はぁ?」
『永劫牢獄』は相手を閉じ込める勇者の力の一つ
でも、閉じ込めたら出て来れない
「そこで私がアナタと一緒にいられる方法を探します」
「いや、そんな方法――」
「探す。私はアナタのことが好きだから」
「……うぐ……」
な、なんかめっちゃはずい
傍から見ると更に恥ずいな
「さぁ、どうぞ。と言いたいですがこのまま死ぬと父と兄がうるさいので少し工作をしないと行けませんね」
「あ、あぁ」
「ん? 何か?」
「いや、離れるのが寂しいなって」
「……昇天しますよ?」
めっちゃ真っ赤、記憶にある時に思ったものより真っ赤やな
この後本当に彼女を『永劫牢獄』に入れた
その後国に持って帰った魔王の首を盗んでここに持ってきて『無限魔力』を使えるようにしてここに結界を張った
◆◆◆◆◆
「思い出してくれました?」
「あぁ」
「あれから200年ですか~」
「いや、200年では無いぞ?」
「え?」
「年の計算方法が3回くらい変わったから今で5,000年くらい経ったな」
沈黙が支配する
幼女の顔が見る見る真っ赤になっていく
「ま、まだか、体が小さいですけどそういうことします?」
「そんな性癖ないわ! 急でびっくりだわ」
「遅くなりました」
そう言って小さな頭を下げる
「いや、おかえり」
「はい、ただいま」
「お前のことだ完成してるだろ?」
「まぁはい」
「まぁそれがなくても言いたかったことがある」
「え?」
「ユキナ、俺と死ぬまで、死ぬその瞬間まで俺の隣にいてくれ。俺を……1人にしないでください」
「………んふふふ、あら、失礼。当然ですよ、アナタが――ユグラ様が離してと言っても離れないですよ」
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「私を閉じ込める前に名前を教えてくれませんか?」
「いや、戻ってからでも」
「『永劫牢獄』でアナタの名前を支えに生きますというかそれがないと私発狂して狂っちゃいますよ」
「俺の名前は……ユグラ、ユグラ・トーラ」
「ユグラ……ユグラ様」
「あぁ」
目の前の彼女は幸せそうな顔で俺の名前を何度も復唱している
「じゃあ私も」
「知ってるぞ?」
「いいじゃないですか。早めの結婚式と行きましょう」
「神父いないけどな」
「私よくわからないですけと牧師と神父って何が違うんでしょう」
「さぁ? よく知らない」
「ユグラ様らしいですね。私はユキナ、ユキナ・フレブレット。ユグラ様、私が恋しくなって狂いそうならここに記憶を置いてくださいね」
「ここ?」
「ええ、ここの湖は私と貴方の誓いの場所ですから」
「はは、そうか、早く戻ってきてくれよ?」
「……いつもツンツンのユグラ様が甘えてくれる。あぁ幸せで死ねる」
「え? 何?」
「なんでもう1回言わせようとするんですか?どうせ聞こえてますよね?」
「まぁな、ちょっと嬉しかった」
「まずいですよ、早くしてください、私が幸せ死します」
「……待ってるなユキナ」
「はい、次会うときは私が幸せにしますね」
フッと目の前からユキナが消えた
いや、俺が消したのか
…………………………………ここを守らないと
ユキナ
No.2