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研究者な俺と幼馴染が紡ぐイチャイチャ研究生活  作者: 久野真一
第2章 高校生研究者としての日常
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第14話 二学期の始まり(4)~お昼休み~

 午前の授業が終わった。あの後は、現国、日本史、政経といったところだった。


「はい、お昼」


 前に居た涼子(りょうこ)が、机と椅子をこっちと向かい合わせにしてくる。


「サンキュ。おお。今日は洋食じゃないのな」


 和食より洋食派なこいつだけど、今日は意外なことに、混ぜご飯に唐揚げ、サラダ、など、普通のお弁当だ。


「たまにはいいでしょう?」


 相変わらず涼しい顔のこいつ。


「いいけど、なんでまた」

「せっかく付き合い始めたから、ちょっと気分転換に、ね」


 こころなしか、少し照れているように見える。


「そういや、付き合い始めてからは、弁当、初めてだな」


 なにせ、国際学会が開催されていたのは夏休み真っ盛り。その後は、お弁当を作ってもらう機会がなかったのだった。


「ひょっとして、俺のために?」

「元々、お弁当自体、あなたに喜んで欲しいからだったのだけど?」


 睨まれてしまう。


「あ、ああ。そうだよな。すまん」


 あまりにも当然のように弁当を渡してくるものだから、そもそもお弁当自体が俺を意識してのものだということを忘れてしまっていた。感謝して頂かないとな。


 まず、好物の唐揚げをパクっと一口。


「おお、美味い!時間経ってるのにサクサクしてるっつーか」

「唐揚げは初挑戦だったのだけど、良かったわ」


 俺の感想にほっと胸をなでおろしている様子。


「これで初挑戦か。おまえなら、将来、料理人やれるんじゃないか?」


 本気でそう思えてくる。


「プロは無理よ。ただ、そうね……料理は結局は化学(ばけがく)なのよ」

「つーと?」

「結局、突き詰めれば、化学物質の合成でしょ」

「理屈はわかるが、なんていうか味気ないな」


 こいつにとっては、料理も化学実験の類なのだろうか。


「そうでもないわよ。チャレンジしてみると、意外に新しい味を作れたり」

「ふーん、そういうものか」

「今度、善彦(よしひこ)も一緒に料理やってみましょうよ」

「できなくはないけど、うーん」


 調理実習とか、お袋や親父が居ないときに簡単な自炊くらいはしたことがあるけど、いまいち楽しいと思えなかったんだよなあ。


「じゃあ、これまでのお弁当代払ってもらうわね」

「おま。それは卑怯だろ」

「冗談よ。それで、無理にとはいわないけど、どう?」


 あくまで一緒に料理に誘いたい感じのこいつ。普段さんざん料理ではお世話になってるし、たまにはいいか。


「わかった。とりあえず1回だけな」


 こうして、今度一緒に料理を作ることが決まったのだった。


「なんかおまえら、枯れてるなあ」


 会話に割り込んできたのは翔吾。


「どこがだよ」

「なんつーか、色々普通な感じが。それでも、付き合い立てか?」


 考えてみると、国際学会の時に告白してからだから、ざっと半月くらいか?言われてみると、キス以来、色気のあるイベントがない気がしてきたな。


「そういうのは人それぞれよ」


 相変わらず涼しい顔で返すこいつ。


「涼子ちゃんも淡白だなあ。イチャコラと朝に言ったが、撤回するわ」

「撤回されてもな」

「おまえら、熟年夫婦だわ」


 なんとも微妙な言い回しをされて、お互いに顔を見合わせてしまう。


(熟年夫婦、ねえ……)


 俺なりに、付き合いたての恋人として、色々やりたいことはあるのだけど、なかなかそういう雰囲気にならないんだよな。


 それが、最近の俺の悩みだった。

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