表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
研究者な俺と幼馴染が紡ぐイチャイチャ研究生活  作者: 久野真一
第2章 高校生研究者としての日常
13/46

第13話 二学期の始まり(3)

 1時間目の授業は数学、なのだけど、正直、退屈だ。そういうことを言うと、クラスメイトには「この優等生が」と言われるに決まっているので、黙っているけど。


 問題なのは、高校数学までの《《ローカルな》》技法しか使えないので、俺には《《かえって面倒くさい問題》》になっていることだ。研究の必要上、《《大学以降の》》数学、特に《《証明》》に関する技法もある程度学んでしまったので、まどろっこしく感じる。


 昔、何かのアニメで、今いる学年よりも下の学年に入ったら、天才児扱いされたみたいなエピソードがあった気がするが、こういう気分なのかとふと納得する。


 ノートPCを取り出して、論文を読もうかとも思うが、論文執筆の締め切りが近いわけでもないのに、《《特権》》を行使するのは罪悪感があるので自重する。その代わりに、紙にプリントアウトした論文をこそっと読む。研究者にとって、既存研究の調査(サーベイ)は必須だ。今、読んでいるのは、


LL(*): the foundation of the ANTLR parser generator. Terence Parr, Kathleen Fisher

※実在の論文です


 というものだ。2011年に発表されたもので、ある程度、俺たちの超文脈自由文法にも関係してくる問題を取り扱っているので、一度読んでおきたかったのだ。論文の著者が主張するところによれば、文脈自由言語ぶんみゃくじゆうげんごのいい感じのサブセットを、比較的少ない計算量で取り扱えるらしい。理論だけでなく、実際に動く構文解析器を世に出して既に広く使われているところは凄い。


 前の席を見ると、涼子(りょうこ)の奴も似たようなことをしている。こういうことをするから、妙な目で見られるんだろうな。


 特権というのは、研究者としての活動をする時は、ある程度授業をスキップして良いと学校から認められた事だ。俺たち若造(わかぞう)だけでは到底認められなかっただろうけど、増原(ますはら)先生が説得してくれたのだ。


 それを知っているからか、先生も特に何も言ってこない。


(しかし……)


 授業で内職して論文を読んでいる高校生も、あまり普通ではないだろうな。


 授業後の休み時間のこと。


「はー。数学の授業、ついてくのが、最近きつくなってきたぜ」


 翔吾(しょうご)がそうぼやく。


「そうか。良かったら、教えてやれるけど」

「いや、別にいいわ。善彦(よしひこ)は、教え方がわけわからんし」

「自覚はあるけどな。今更難しいんだよ」


 大学以降の数学では、基本的に「公式を学ぶ」類の話はほとんど出てこないだけに、高校の範囲の問題を解くにしても、解法からしてかなり違って来てしまう。


「私が教えてあげましょうか?」


 割って入ってきたのは、さっきまで同じように論文を読んでいた涼子。


「助かるー。涼子ちゃんは、こいつと違って説明わかりやすいんだよな」

「こいつがおかしいだけだと思うんだけどなあ」

「おかしいとか失礼ね」


 いつものやり取りを交わしつつ、涼子が翔吾に教えているところを覗く。こいつは、俺以上に数学ができるのに、相手にうまくレベルを合わせて教えられるところは正直凄い。


 こんな風に、理系科目、とりわけ数学に関しては、おそらく、普通の高校生とは全然違う授業風景を送っている俺たちである。文系科目はまだまだ学ぶところがあって、面白いのだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 同じことは中学入試とかでもありますね。なんで方程式使っちゃいけないのって。 でも実際には●とか△とか使って実質方程式したりするんですが。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ