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第六話 フレデリカの嬉しい誤算!

 あれから七年たって、俺は騎士団屈指の実力者となって副団長にまで登り詰めた。ソード系スキルもレベル七十となった。剣だけは姉ちゃんにも引けを取らないだろう。これも姉ちゃんとキサラに毎日しごかれたおかげだろう。二人は俺が副団長になったときに免許皆伝だとか言って、今は何をしてるのか毎日忙しそうであんまり見かけなくなった。


「それにしても、この甲冑を着て歩くのはまだ慣れないな」


 俺が来てるのは全身白に統一された甲冑に、金色の騎士団のエンブレムが入っている。さらに、ちょっとした魔法なら跳ね返してしまう。


「相変わらず、似合ってないね。レオス」

「お前もだろう。アーサー」


 王城を闊歩しているとアーサーが話しかけてきた。アーサーは魔法の才能がずば抜けていて今は、宮廷魔術師になった。アーサーが実力をつけえるたびに姉ちゃん

が警戒してたような気がする・・・・・・何でだろう


「これから、フレデリカのところかい?」

「ああ、お前も一緒に来るか?」

「いや、僕は遠慮しとくよ。二人の邪魔をしたら悪いしね」

「邪魔って何が?」

「・・・・・・はぁー、実力がいくらついても、それ以外は全くだね」


 アーサーは手を振りながら向こうへ行ってしまった。


 俺は気を取り直して、フレデリカの部屋のドアをノックした。


「フレデリカ、俺だ。入るぞ」

「えっ! レオス!! ちょっ、ちょっとま――」


 フレデリカがなんか慌ててるような気がしたが俺はドアを開けて中に入った。


「フレデリカ、何をそんなに――」


 俺が目にしたのは全身ヒラヒラとしたピンクのラグジュアリーに身を包んで手で胸元を覆て顔を真っ赤にして涙目になっているフレデリカだった。その横にキサラがいて手にはドレスを持っている。ちょうど着替え中だったようだ。


「レオス様。ラッキースケベにかまけてずっと見てるなんて、そこまでいくと清々しいですわね」


 フレデリカをぼぅーと見つめてたら、キサラの一言に我に返って慌てて後ろを向いた。


「わ、悪い。まさか、着替えてたなんて」

もう、バカ!! 一国の王女のあられもない姿を見て、ただで済むと思ってないわよね」

「どうすればいい?」


 すると、キサラがフレデリカに耳打ちをしていた。


(これはチャンスです。このネタでゆすって既成事実を作りましょう)

(既成事実!? それは、ナイスなアイディアよ。キサラ。でもうまくいくかしら?)

(そこはご安心を。今のレオス様は昔と違って性格が丸くなっています。このことに責任を感じているからどうすればいい? と聞いてきたのです。昔私とクリス様が性根から叩き直したからうまくいきます)

(・・・・・・あなたたち、どんな訓練したのよ)


 フレデリカは呆れつつドレスに着替えると息を整えて、


「もうこっちを向いていいわよ」


 レオスは振り向くと


「本当にすまん」


 改めて頭を下げて誤った。


「そんなことで許さないわ。一国の王女を辱めたんだから」

「俺に、そんなつもりは」

「おだまり!! そうねぇ・・・・・・」


 フレデリカは考えるそぶりをしながら先ほどのキサラの助言通りに既成事実をどう切り出そうか悩んでいると、


「わかった!」


 レオスが納得したように言った。何か真剣な目で見つめてくる。


 なんだかドキドキするじゃない


「な、何よ?」

「フレデリカ。俺と結婚してくれ!」

「えっ! えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっーーーー!!!」


 


 私は、パニックっていた。同既成事実を作ろうか悩んでいると、突然レオスから結婚してくれと言われたのだ。聞き間違いだろうか。レオスに確かめた。


「も、もう一度言ってくれないかしら?

「俺と結婚してくれ!」


 き、聞き間違いじゃなかったぁぁぁ!!!


 私は、内心ガッツポーズを決めた。今にも卒倒しそうだったが、何とか踏みとどまって冷静さを取り戻そうとした。


「本気なのね?」

「ああ。前にも言ったと思ったんだけどな。その首にアクセサリーをあげたときに」


 私は三日月の形をしたネックレスを見た。これは、何年か前にゴロツキを退けた後にレオスからプレゼントされたものだ。私の一生の宝物だ。しかし、あの時にプロポーズなんてされただろうか。されてたらうれしかったはずだ。私は当時からレオスが好きだった。やんちゃで無鉄砲だったけど私に気さくに話すし、国王にも遠慮がなかった。裏表がなく、昔は卑怯な手でクリスに挑んでは返り討ちにあっていたけど、今は、副団長にまで登り続けて私を守ってくれる。あの時の誓い通りに。だが、思い出せない・・・・・・ここは、恥を忍んで聞くことにした。


「レオス、いつプロポーズしたの?」

「覚えてないのか?」


 やはりショックよね。仮にもその相手が覚えてないんだもの


「襲われた後だったし、しょうがないか」


 レオスは話してくれた。あの時に泣きじゃくって自暴自棄になっていた私に、こっそり露店で買った三日月のネックレスを渡しながらもう泣かせないために『そんなこと言うなよ。俺はフレデリカと一緒じゃなきゃヤダ。それにやられたのは俺たちがふがいなかったからだ。だから、もう、お前にこんな顔をさせなくていいくらい強くなってやる』と、レオスに言われた。このことは覚えている。その誓い通りに強くなった。だが、これはプロポーズではないはずだ。この後にレオスが言ったらしい。その言葉は・・・・・・


『お前のことが好きだからだよ。だから、ほうとけないんだ。いつも、笑っててほしいんだ』


 思い出した。確かに言われたわ。あの後、しばらくは私が襲われた事件であわただしかったから忘れてたわ。一度しか言わないとか言ってたから、本当に今まで言わないんだもの。でも、やっとこの時が来たのね。早く返事をしなければ。

 私は落ち着いて口を開いた。


「レオス、あなたの気持ちは分かったわ。返事は・・・・・・」


「ここにいたのか。レオス」


 突然廊下から声がした。


 今度は何! と廊下を見るとアーサーが隊長が呼んでるとレオスを引っ張って行ってしまった。

 嵐の前の静けさのような部屋に取り残された私は恥ずかしさで顔がプルプルしていた。

 それを見ていたキサラは、「なんて、魔の悪い。姫様も不憫ですね」とメイド服をなびかせながら部屋を出ていった。絶対、今夜あたりにクリスに話して笑いの種にしてワインでも飲むはずだ。


 私は一人残った部屋で、溜まった鬱憤を晴らすように大声で


「レオスのバカ―!!!!!!!!」


 城内に響き渡るのだった。この後、声を聞きつけて、近くの森に見回りに行く騎士たちが駆けつけて、その中には、レオスとアーサーがいて、私は二人に氷結魔法をぶちまけて凍らしたのは別の話。

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