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第十話 事の顛末とこれから・・・・・・

「どうやら、間に合ったようね」

「誰だ!?」

「誰だとはとんだ挨拶ね」


 すると、明かりがつきここがどこかの部屋だということが分かる。


 眩んだ目をこすりながら辺りを見渡すとまさかの人物がそこにいた。


「ね、姉ちゃん。何でここに?」

「何でって、ここは私が経営してるギルドの地下室だからよ」

「そんなことを聞いてるんじゃない。何でここに・・・・・・」

「ちょっと待って」


 そう言うと姉ちゃんはおもむろに歩いて行き、魔法陣に手を翳す(かざ)

 パリンッ!!!

と、砕け散った。


「姉ちゃん、なんてことするんだ。これじゃキサラと騎士団のみんなが」


 レオスは地上へ向けて歩き出すと


「レオス、どこに行くの?」

「決まってるだろう。みんなを助けに行くんだ」

「落ち着きなさい。今のあなたが言っても足手まといになるだけよ」


 レオスは反論できなかった。


「そうだぞ。あまり姉ちゃんに心配かけるなよ、レオス」


 突然響いた声の方向を見ると、一階と地下をつなぐ階段に一人の男が立っていた。


「た、隊長!?」


 隊長と呼ばれた男が階段を降りて歩いてくる。そう、この男はレオスの前の騎士団の隊長だった男だ。一年前に突然騎士団を抜けて旅に出たはずだが何でここに・・・・・・


「よぉ、レオス。一年ぶりぐらいか。暫く見ない間に体が萎んでないか。ちょっと、体を調べさせてもらうぞ」


 暫く俺の体をチェックしたかと思うと、


「レオス、お前のレベルが一に落ちてるぞ。覚えてる魔法もなくなっちまってる。これでは、一般人以下だぞ。よくこの状態で、ここまでこれたな」


 レオスは王城で起きたことを二人に話した。


「そう、やっぱりアーサーが魔王だったのね。それにフレデリカも敵の支配下に落ちるなんて・・・・・・でも、聞く限りではまだ、精神を支配するには時間がかかるはず。早いうちにフレデリカを精神支配から解放するわよ。魔王を倒すには絶対フレデリカの持つ潜在能力が必要になる」

「助けるにはどうすれば、それに・・・・・・」


『みんな、来てくれ。アルヴィス王国から緊急メッセージだってよ』


 外から何やら騒いでる声が聞こえた。レオスたちは急いで外に出ると、空に立体映像が映し出されていた。立体映像は町中に仕掛けられているカメラから映像を飛ばしている。これは、生の映像でよく使う手法だ。


 映像に女性が映し出された。フレデリカだ。


(みんなは、どうなったんだ。無事でいてくれ)


『大陸全土のみなさん、突然のご無礼をお許しください。(わたくし)はアルヴィス王国、女王アルヴィス・フレデリカ・グレイスです。私は先ほど戴冠式をおこない、正式に女王になりました。突然のことでさぞ驚いておられることでしょう。これには理由があるのです。実は今から数時間前、我が王城に魔物が侵入し、父、アルヴィス八世を暗殺しました』


「なんてことだ」

「魔物が・・・・・・」

「まさか魔王が復活したのか」


 街には動揺が広がっていた。


「まだ、女王の演説が続いてるぞ」


 みんなはまた、映像の方を向いた。


『・・・・・・しかし、これだけではなかったのです。何とそれらを使役している者がいたのです。その者とは・・・・・・私に最も近しい人物ダリアン・レオス・バッハです。彼は、私の父を殺し、仲間である騎士団の皆さんにも手をかけ、婚約者の私を殺そうとすらしました。こんな、裏切りがありますか? 私は許せません。ここに宣言します。私自ら、敵を討つと。ですが、チャンスを上げましょう。彼が自らの行いを悔い、私のもとにやってきた場合は、すべてを許しましょう。あ、そうそう、忘れていました。こちらを見てください』


 画面が切り替わると、一人の女性が磔になっている。


「あ、あれはキサラ」


『この者は私の専属のメイドだったのですが、あろうことがレオスと組んであろうことが主である私の命を脅かしました。そこを、宮廷魔術師の方が返り討ちにして捕まえた次第です。そして、この者は今から三日後の正午に処刑します。もし、助けたい方がいたらいつでもどうぞ。その時はこちらも抵抗させていたたぎますが。最後にレオスを捕まえて私の前に連れてきてくれた場合は白金貨百枚、そして、レオスを匿ってるであろう姉のクリス、白金貨五十枚差し上げます。この場合の生死は問いません。賞金稼ぎの方は頑張ってください。では、死にたくなかったら、私の元に来てくださいね。レ・オ・ス』


 そこで映像は切れた。


「クソッ、早く、キサラを助けに行かないと・・・・・・痛っ!」


 振り向くと姉ちゃんにげんこつされていた。


「いきなり何するんだ」

「ちょっとは落ち着きなさい。今すぐにどうこうなることは無いわ」

「だけど」

「だから、落ち着きなさいって――アサルト、頼める」


 俺は首をかしげて、


「アサルトって誰だ?」

「俺だよ。レオス」


 声のした方を見ると隊長だった。


「隊長が」

「おいおい、今の隊長はお前だろ。今は、クリスの元で冒険者をやっていて、名はアサルトで通ってる。これからはアサルトで頼むよ」


 レオスの肩に手をポンッとすると、


「俺の任務は、アルヴィス王国の偵察と、できればキサラの救出でいいか?」

「ええ、お願い。それと、できればフレデリカの様子も探ってきてほしいのよ。その結果によっては懸けられた暗示を解けるかもしれないから」

「分かった。準備出来次第、すぐ向かう」


 アサルトはいったんこの場を離れた。


「姉ちゃん、隊長・・・・・・いや、アサルトだけで大丈夫か」

「その心配は無用よ。あなたもアサルトの強さは知ってるでしょう。それに今は、あの時と比べ物にならないほど強いわよ。何せS級冒険者なんだから」

「S級冒険者!?」


 この世界にいる人はギルドで申請すれば誰でも冒険者になることはできる。ランクはEランクから始まり、D,C,B,A,AA,AAAランクと続き、その上にS,SS,SSSランクがある。その中でもSランクは一人でも国を亡ぼせると言われている。なるほど、アサルトはS級冒険者だから心配ないってことだ。

 ちなみにSSSランクは三日三晩で世界を亡ぼすと言われているが、誰もその姿を見たことは無いらしい。昔姉ちゃんが冒険者をやっていたが、たしかその時のランクはSSランクだったはずだ。




「ギルマス、大変だー!」


 武具を装備した男が駆け込んできた。


「どうしたのよ、慌てて」

「こ、これを見てくれ」


 渡されたのは一枚の紙だった。

「どれどれ・・・・・・思ったより早かったわね」

「どうしたんだ?」


 俺は姉ちゃんが持っている紙を覗き込むと、俺の顔写真だけじゃなく、姉ちゃんの写真も載っている。『この者たち、捕まえた者には懸賞額の白金貨を渡す。なお、生死を問わず。ただしその場合は本人を証明できるものを持参すべし』とある。これで、俺たちはお尋ね者である。


「ところでギルマス。さっきから気になってたんだが、そこにいるのが・・・・・・」


 先ほど駆けてきた男が聞いてきた。


「ええ、私の弟よ」

「何だ。今ここで、俺を捕まえるつもりか?」


 レオスは警戒心をあらわにすると、男は


「そんなことはしねえよ。お前のことはさんざんギルマスから聞かされてたからな。それにギルマスの弟っていうなら仲間であり家族だ。そんな奴を売ったりなんてこのギルドには一人もいねえよ」


 レオスはどう反応したらいいか困っていると、


「安心しなさいレオス。このギルドはあなたのために作ったんだから」

「・・・・・・どういうことだ?」

「それはいずれ話すわ。今は猶予が三日間しかない。やれることをやるわよ。グリム、レオスを二日間でレベル三十ぐらいまで鍛えてあげて欲しいの」

「それは、きついぜ。だけどギルマスの頼みじゃ断れねえな」

「お願いね。私はレオスのギルドカードを作ってくるわ」


 クリスはギルドの奥に引っ込んでいった。


「俺はAランク冒険者のグリムだ。風魔法全般が得意だ」

「俺はレオスだ。魔法はとある理由でほとんど使えないんだ」

「そいつは災難だな。そうだ、いいものがあるぞ」


 そう言ってグリムが奥の部屋に行って戻ってくると手のひらに水晶を持って戻ってきた。


「こいつに手をかざしてみな。それで、得意な魔法属性が出るからな。一応どの属性も覚えられるけど得意な系統を知っといても損はないからな」

「それもそうだな」


 レオスが水晶に手をかざすと色がカラフルな虹色になると膨張してパリーンッ!!!と割れてしまった。


「そ、そんな。ちょっとやそっとでは割れるはずがねえんだが」

「ちょっと、今の何の音よ」


 クリスが奥から戻ってきた。


「悪いギルマス。今のレオスの魔法属性を調べようとしたら割れちまった」


 クリスは床に散らばった水晶の破片を見ると、ハア~とため息をついて、


「レオスの魔法量は私以上よ。そんな冒険者になりたての人が使うのを使ったら水晶が耐えられないわ」

「それはすごいな。さすがはギルマスが自慢するだけはあるぜ」

「グリム、ちゃんと片付けておきなさいよ」


 俺は、姉ちゃんから冒険者カードを渡された。


 (待ってろ。アーサー。レベルを一に下げたことを公開させてやるからな。そして、フレデリカは絶対取り戻す)


 ここから、後に英雄となり、後世に語りつけられるレオスの新たな冒険譚が幕を開けたのだった。

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