98話 『集落に辿り着いた?』
人間の姿に変身して姿を現した私。
そして、突然草むらから出てきた人間に驚いているゴブリン達。
ま、そりゃ当然の反応だよね〜。
あからさまに今まで姿が見えなかったのに、唐突に草むらから人間が現れたら驚くしかないもん。
『ニンゲン、コロス?』
『ニンゲン、エサ、コロサナイ』
ほうほう。その判断は凄く良いと思いますよ。
貴方たちが私と戦ったら確実に私が殺しちゃうからね。
無理な戦いは挑まないのが懸命だよ。
……あれ? もしかしてこれ自分にもっと言い聞かせた方が……。
い、いや、私は現に無謀に挑んだけど勝って生きてるんだし、セーフだよセーフ!
それよりも、早くこのゴブリンたち私に武器を向けるのやめてくれないかな?
どうせ攻撃してこないんでしょ?
話してる内容が私に聞こえてるんだからもうバレバレだよ。
あー……どうしよっかな。
なんかずっと警戒されてるのイライラしてくるかも。
わざわざこっちが下手に出て捕まってあげるって言ってんのにどうして理解してくれないのかなぁ。
もういっそ殺しちゃうか。
うんうん、殺そう。
よーし、とりあえず威圧スキルを発動!
『コイツ! ヤバイ!』
『オチツケ!』
あらあらあら。
慌てちゃってどうしたのかな? もしかして怖いのかな?
大丈夫。痛いのは一瞬だよ。すぐに終わらせてあげるからね。
ん? 待てよ?
そういえばゴブリンの集落には人間が居るんだった。
こいつら殺しちゃったら集落を探すのに手間取って、助けて恩を売ることが出来なくなっちゃうんじゃ……。
うーむ……はぁ。
殺さないでいてやるか。感謝してよねゴブリン達。
君たちが人間を捕まえてなかったら今頃ミンチだよミンチ。
私の慈悲深さと、踏みとどまった理性に最大限感謝しなさい。
「あ、あー、よし。捕まってあげる」
『シャベッタ!?』
『イイカラオチツケ。ソレヨリモコノニンゲン、マタヨワクナッタゾ』
『デモキケンナキガスル。ドウスル?』
『トリアエズシバッテツレテイク』
よしよし。
ようやく私を連れて行く気になったか。
ちょっと扱いが荒っぽいけど、もうどうでも良いや。
とりあえず今はこれから先の恩の売り方について考えたこーっと。
「くっ……殺せ! ゴブリンに辱められるくらいならいっそ殺せ!」
「そうよ! 早く私たちを殺しなさい!」
『ダマレ! キサマラハアトデチャントコロシテヤル!』
おっ? なんだなんだ? 集落に辿り着いたのか?
むっ。ふむふむ。
間違いないね。さっき叫んでた人間もちゃんと囚われてるし、ここがこいつらの話してた集落か。
さてと、それじゃ一仕事始めますか!
っと、その前に、おおよその数だけ確認しとこうかな。
「ねぇ、ここにゴブリンって何匹いるの?」
相手がモンスターだからなのか分かんないけど、さっきから結構喋れてる自分に驚きつつも、私は威圧スキルを使いながらゴブリンへと問い掛けた。
しかし、集落のど真ん中で威圧スキルを使った影響か、まさかの大物が私の目の前に現れたのだ。
『ほう。貴様の力、中々のものだ。俺の伴侶にしてやっても良いぞ?』
えー。まさかのそういうお誘いですか。
いやいやいや、すいませんお断りです。
っていうか、折角威圧スキルで質問してんのに、違うゴブリンが勝手に入ってこないでくれませんかね。
やめてください! 貴方に私は興味ないんです。
それに日本語が流暢すぎて凄く気持ちが悪いです!
『俺の言葉を無視するとは生意気な人間だ。……まぁ良い。ゴブリン族の長である俺は寛大だ。もう一度だけチャンスをやろう! 俺の伴侶になれ!』
「ふーん。長なんだ。じゃ、殺すね。バイバイ」
偶然にも出てきてくれたゴブリンの長。
知能はなさそうだけれども、日本語が達者に話せる時点で周りのゴブリンよりはきっと賢いのだろう。
だからこそ、こいつが集落を率いていたのだ。
しかし、逆に言えばこいつさえ殺せば集落はパニックになって統率を失うはずなのだ。
だからこそ、こいつを真っ先に殺すしかない。
そうと決めた後は本当に一瞬だった。
『ーーっ!? こいつをーー』
変態スキルを使用し、ゴブリンの長が驚いたその数秒。
その間に私は麒麟の姿で飛び上がり、上空からの魔法でゴブリンの長を殺したのだ。
他のゴブリンに命令すら出せずに、塵すら残らずゴブリンの長はこの世から姿を消した。
そんな異常事態に周囲にいたゴブリン達の時間は止まってしまったが、そんな中でも私は上空から何食わぬ顔で元の位置へと人間として降り立つのだった。




