91話 『これが最強のモンスター』
ドラゴン達が居た場所を抜け、歩き続けていた私はようやく一人になった。
相変わらず最後の別れを思い出せば胸が苦しくなってしまう。
なにせ、ドラゴン達にとっても、私にとってもお互いに友好を築くことが出来たモンスターなのだ。
ただ殺し合うだけじゃなく、話が出来た。
私がここに転生してから初めての経験だ。
だからなのかもしれないが、例え短い間だったとしても私はとても悲しくなってしまった。
きっともう二度と会う事はないだろう。
その事実が更に私の胸を締め付けた。
それから程なくして、奇跡的にもモンスターに襲われる事なく、私は上の階へと戻る階段を見つけた。
ここを上がってしまえば本当にもう二度とドラゴン達に会う事は出来なくなる。
けど、どっちにしても私は合わせる顔がない。
少し仲良くなったとはいえ、私はドラゴンを騙しているのだ。
身勝手にも自分の力の為にドラゴンを騙し、力を手にした。
だから私に戻るという選択肢はなく、上へ上へと進むしかない。
なにせ、もうこのダンジョンに私は用がないのだ。
ほんの一時の悲しみに浸っている場合ではなく、今の私には突き進む以外に道はない。
階段を上がり、別れを心の中で告げた後、私は変態スキルを発動した。
相変わらず変態スキルを発動した時には眩しいほどの光が発生し、その光は私を包み込んだ。
そして、光が消えると同時に私の姿は変化し、いつもの悪魔の姿ではなく、ダンジョンコアと共に封印されていたモンスター。ーー麒麟へと姿を変えた。
おおっ。
これがあそこに居たモンスターか……。
姿形は悪魔の時よりも圧倒的に大きく、あの時見た通り、ドラゴンよりも一回り小さいくらいだった。
ステータスは見るまでもなく、悪魔の時よりも強いって感じだけど、一つ欠点を挙げるとすれば、正直言って髭が長いし浮いているのが邪魔。
けど、そんなのは些細な事だ。
今はとにかくスライムとか悪魔よりもどのくらい強くなったのかが知りたい。
という事で、恒例のステータスちょっとチェックのお時間です!
さぁ、やってまいりました!
お楽しみのお時間!
さっきまで自分の中でブルーな気持ちになってたけど、もうそんなのはどうでも良い!
今はとにかくステータスが気になりすぎる!
いざ! ステータスオープン!
ステータス
名前:霧香
種族:コピースライム『希少種』(変態状態)
HP:34000/34000
MP:27000/27000
攻撃能力:10380
防御能力:9860
魔法能力:9420
速度能力:12610
スキル: 威圧 魔法激減 光の吐息 状態異常無効 透化
魔法: ライトニングハンマー チェーンバインド フレイムボルト ミスト ライトニング デス ホーリーライト エクスプロージョン グランドクロス メテオインパクト エクストラヒール
うわっ!
なんだこれ!
全部のステータス殆ど5桁いってるじゃん!
悪魔とか比べ物にならないんだけど!
えっ? えっ……これほんとに私? 強すぎない?
本当に私この世界で生きてて大丈夫?
いやマジで、心配になるくらい強いと思うんだけど……。
あーでも、あそこに居たドラゴンとかもホントはこれくらいのステータスなのかなぁ。
そう考えると他のモンスターのステータスが見れないって案外不便なんだよね。
だって、私が強いかどうかも分からないし、勝てそうな相手に挑まないってのも怖いし。
ま、でもこのステータスは多分強い方でしょ!
なんたって、ダンジョンコアと一緒に封印されてたモンスターなんだし!
……んー、それじゃそろそろスキルとか試しちゃって良いかな?
モンスターが周りにいないから壁に当てるだけだけど良いよね?
……よし。やっちゃおっと!
躊躇しないで全力でいくよ!
スキル発動! 『光の吐息!』
あら? あらら?
これまずいんじゃない?




