8話 ニートに私はなりたい
よしよし、楽園の入り口にはモンスターはいない。
これで私が奇襲をかけられる心配はない。あとはどこで待ち伏せして倒すか決めるだけだ。
えっ? 正々堂々戦わないのかって?
そんなの無理無理。私スライムだよ?
幾ら変身できたとしても勝てないって。威圧とか仲間意識は持たせる事できるけど、真正面で対峙してから変身した所で無意味だし、負けちゃうよ。
まぁ今までモンスターの攻撃をくらったことないから痛みとか分かんないけどさ。でも、万が一すぐ殺されちゃったり、潰されちゃったりしたら困るじゃん?
だから、私は待ち伏せするしかないのよ。幸い、スライムで足は遅いけど天井に貼り付けるからね。
さて、ここら辺で良いかな。少し楽園から離れちゃったけど、ここならモンスターは通りそうだし、なんなら人間が通ってた場所だから人間も通る可能性高いけどバレなきゃ問題はない。
うんしょ。うんしょ。
ふぅ。スタンバイ完了。後はモンスターを待つだけだ。
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うーん。そろそろ疲れてきたなぁ。一回降りて休もうかなぁ……。
ん? あっ! 来た来た! あれは、私が前に見た蟷螂型のモンスターだ!
ふっふっふっ。前回は逃げたけど今回は負けないよ。
さぁさぁ、こちらはカモン。
よし、今だ!
んー、我ながら完璧! 頭から取り込めるように落ちたから、焦って振り回してる鎌も私には当たらないね。
ふぅ。私の勝ちだね。やっぱりスライムは奇襲が一番だよ。こんなにも奇襲に優れてるモンスターはきっとスライム以外に存在しないね。
もしかしなくても、私って考えられるスライムだから最強なんじゃない!?
痛っ!
なになになに!?
えっ、なにこれ! ほんとに痛いんだけど!
ってか、私の体少し千切れてる!? なにこれ!
ギャァぁぁぁあ!!
なにこいつ! いつの間にここに居たの!? こんな熊みたいなモンスター見た事ないよ!
やばいやばいやばい。完全に勝った優越感で警戒してなかった。
逃げないと!
その振り下ろされる拳はホントにやばいって!
グェッ……。
もう死んだこれ。壁にベチャってなってるよ私。あー、もう無理。
あれ?
でもあんまり痛くないかも……。もしかして私がスライムだからかな?
って! そんな事今はどっちでも良い! それよりも逃げないと!
死んでないなら私は逃げきれるはず!
ガァァァァァァァァア!
ちょぉおおおお!
やばいやばいやばい!
確実に仕留める咆哮まで上げながら私の事追いかけて来るとか聞いてない!
はぁはぁはぁ。
ここまで来れば大丈夫かな?
さすがにスライムのままだと逃げられないし、咄嗟に蛇に変身して逃げたからなんとか撒けた……。
ふぅ。二度と外に出たくないなぁ。
あんなモンスターとかホント無理。
死にたくないからもう私は楽園から出ないもんね。食料も魚とかでなんとかしてやる!
こうなったら一生ニート生活だ!
……そういえば、なんで私はあの熊のモンスターの一撃で死ななかったんだろ。痛みもそんなになかったし、体が崩れた感はあったけど、今こうして元通りだしなぁ。
うーん。分からん! こういう時はステータスオープンだ!
ステータス
名前:なし
種族:ブルースライム
HP:34
スキル:変身 物理攻撃激減 再生
ん、んん!?
なんで私のスキルも体力も増えてるの!?
い、いや、落ち着け私。体力はまぁ分かる。ステータスを一回見てから何回かモンスターを食べたりしてるし、成長? したんだと思う。
モンスターが進化とか成長するのかとかいう話は別にして、今は成長したと思っとこう。
ただ、スキルはなんでだろ……。分かんないな。
とりあえず少し休んでから考えようかな。身体的には疲れてないけど、精神的に疲れちゃったし。