86話 『沢山の情報を入手しました!』
必死に頭を捻り、どうにか言葉が話せないものかと試してみても、やっぱりスライムの姿じゃ喋る事は出来ない。
幸いにもドラゴンたちの声は何故か日本語で聞こえているからこそ、もしかしたら私が話せればなんとかなったかもしれないが、結局のところ希望などない。
そもそも、私が日本語として聞き取れているのは転生した影響だと思う。
勝手に日本語として聞いているだけだし、以前見た人間たちも日本語で話していて聞き取れたものの、文字なんかは読めなかった。
だから、転生特典的なやつで私だけが日本語に変換出来てるんだと思う。
つまり、よく良く考えてみればさっき思ってたもしかしたらなんて事も通用しない可能性のが高い。
ま、どっちにしてもスライムじゃどうしようもない。
……あ、でも、待てよ?
悪魔形態ならどうなんだろ。
ドラゴンなら悪魔の言語も分かるんじゃないかな?
『ふむ。安心しろ。敵意のないものとは戦う気はない』
私が慌てているのを見て察したのか、ドラゴンは優しく声を掛けてくれた。
勿論、戦う気がないというのならそれはそれで普通に助かるが、それでも私は悪魔へと変態する。
危険かもしれないが、話さえ出来ればきっとなんとかなるはず。
『ほぉ。特殊なスキルを持っているからここまで来れたというわけか』
『他のモンスターに変化するスキル……確かに珍しいわね』
どうやらドラゴンたちは私を見た直後にステータスを確認していたらしく、スライムとしての私があまりにも弱すぎたからこそ、この最深部まで来れた理由が知りたかったらしい。
それに加えて、この階層では強いモンスターしか生まれる事はなく、スライムという最弱モンスターは生まれないという事も教えてくれた。
『悪魔か。ステータス的にはこの階層でも平均くらいだが……それでも守護者には勝てるステータスではないな』
『そうね。守護者は私たちより少し弱い程度だもの。普通のモンスターじゃまず勝てないわ。どうやって勝ったのかしら?』
疑問をぶつけられ、私は久しぶりに話す緊張感で死にそうになりながらも、口を開き、なんとか言葉を紡いだ。
「自爆スキルを使って、なんとか勝ちました……」
伝わるかなんて分からない。
自分としては普通に話しているだけだ。
後はドラゴンが言語を理解してくれるかどうかに賭けるしかない。
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結果だけ言えば、ドラゴンたちは私の言葉を理解してくれた。
長い時間を生きているからこそ、ありとあらゆる言語は分かるとの事だ。
だから、私はドラゴンたちと沢山の話をした。
今まで孤独だったからか、最初は緊張したものの、話していくうちにむしろ楽しくなっていたのだ。
それに、ドラゴンたちの知識は豊富であり、私の知らない事も沢山教えてくれた。
モンスターの弱点や、スキル、種族についてもだ。
その中で最も重要だったのは種族についてだった。
私の生まれた種族は当然のことながらスライムであり、この世界においてスライムが最弱の種族である事は私も分かっている。
ただ、私が進化した先の種族は特殊だった。
希少種と書いてあるものは基本的にそれ以上の進化は出来ない筈だったのだ。
それなのに、私は一度進化しようとしている。
有り得ない現象を引き起こしているのだ。
原因はドラゴンたちでも分からず、私も分からない。
有り得ない事だからエラーが起きたんだとは思うけども、最初っから出来ないんだったら、正直言って、進化しますか? とか聞いてくるなよって感じだけどね。
それと、ドラゴン達と話した中で気になる情報が一つ。
ステータスについてだ。
私や他のモンスターはモンスターを食べれば食べるほど成長し、ステータスが上昇していく。
正直言って、これは自分自身で体感していたし、成長限界とかを何回か突破しているから分かる。
だが、人間は成長方法が違う。
例えばゲームかなんかで、レベルという数値があるけども、それが人間には存在する。
モンスターは成長限界で止まり、進化なんかが出来るけど、現状においては人間の成長限界ーーいわゆるレベルに上限はない。
それが私の気になる点だ。
モンスターの方が基本的には強くなると思っていたが、この世界は別。
モンスターは早熟なだけで、人間の方が素質もあり、強くもなれる。
まぁ一部のドラゴンやら伝説のモンスターとかはまた別の話になってくるらしいけどね。
ともかく、強くなれるのならどうして人間として私を転生させてくれなかったのと、いよいよ本当にレベルまで出てきて、ゲーム感が増してった事が本当に怖い。
……いや、マジで私を操ってるプレイヤーとか、ずっと監視してる人とか居ないよね?




