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器用貧乏なスライムは異世界で自由奔放に生きていく?  作者: ねぎとろ


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76話 『スケルトンVSスライム3』

 大盾が振り下ろされるその前に、痛みが続きながらも安定しない思考と視界の中で私はスケルトンへとサンダーボルトを放った。

 もちろん倒せるなんて考えていない。

 これはただの時間稼ぎだ。私のやりたい事は一つ。


 覚悟もない。痛みも想像できない。今までこんなことをしようとも考えていなかったし、こんな状況になってもこの選択をするとは思っていなかった。

 だけど、今の私が足を切断される前に逃げるには覚悟を決めないといけないのだ。


 魔力を大量に込めたサンダーボルトはなんとかスケルトンへと直撃し、その態勢を少し崩させた。

 しかし、それでも盾を振り下ろすのをやめる気はないらしく、私はほんの少しの時間で覚悟を決めて、刺さっている剣へとサンダーボルトを放った。


 それに加え、態勢を崩すスケルトンを狙っている分裂体にも命令を出して、更にサンダーボルトをぶつけてもらった。


 その結果、落ちる雷の威力は剣を深々と地面へと突き刺す事になり、私の狙いは成功した。


 ーーあ、ぁぁ。う、がぁ。痛い、やばい。

 意識が飛ぶ。

 駄目。今意識を飛ばしたら駄目。

 でも痛みが、痛い、熱い、痛い。


 深い深海に沈むように、視界は暗くなっていく。

 脳が痛みを受け取って気を失わせようとしているのだ。

 けど、それはさせられない。

 痛いけど、私はそれを乗り越えなきゃいかないのだ。


 ……はぁ、はぁ。助かった。


 気を失いそうになっている私へと、容赦なくスケルトンは剣を持たない手で殴りかかってくるが、私はそれを浮遊魔法を使って回避した。


 ん? あれ? あんまり痛くない……?


 完全に痛みがないと言えば嘘になるが、気を失うほどの痛みは既になくなっていた。

 恐らくは必死だった事によってアドレナリンが分泌され、今だけ興奮して痛みがないのだと思う。


 でも、それはそれで好都合だ。

 腕がなく、地面に転がっているという現実は最悪以外のなにものでもないが、痛みがないのならばまだ戦える。

 魔法を使える手段も減って、体力もなく、興奮が切れたらきっと死にたくなるほどの痛みが襲う。

 絶望的だ。

 どうせ逃げられないし、いっそ潔く死んだほうが良いんじゃないかって思うくらいの絶望だ。


 でも、それは出来ない。


 なにせ、私が浮遊している間にも私の分裂体はスケルトンと戦っているし、そもそも私は死ぬ覚悟を持ってここまで来たのだから。


 上空から剣を抜かせないように攻撃を仕掛けている分裂体の姿を見つつ、私はスケルトンの隙を探し出す。

 そんな中で、自動で戦う分裂体を見て私は一つの発見をした。


 えっ!? 悪魔って爪伸びるの!? ってか、尻尾も上手く使いすぎじゃない!?

 も、もしかして、分裂体って、私より強い……?


 そ、それは嫌! なんか嫌だ! オリジナルは私なんだ!

 私だってアレくらい出来るし! 爪だってほら!


 えぇぇぇ! なにこれ、めっちゃ鋭いんだけど!

 ……ごくり。

 こ、これなら確かにスケルトンとも戦えるかも……。

 ってか、それよりも! 分裂体の戦い方がやばいんだけど!

 あんな戦い方をしたら死んじゃうよ!


 誰がどう見ても、分裂体の戦い方は酷いものだった。

 確かにスケルトンの装甲を凹ませたり、傷をつけたりはしているものの、わざと攻撃を受けてから反撃しているのだ。

 隙の少ないスケルトンに対して、攻撃後の隙を狙うのは正しいかもしれないが、それにしても狂気的に攻めるのは間違っている。


 止めないと。


 そう思って私が分裂体へと近づこうとした直後、私の眼前を剣が通り抜けた。


 はぁ!?


 剣は突き刺さっているはずだった。

 私が分裂体とスケルトンの戦闘を見ているときも間違いなく突き刺さっていた。

 ……なのにだ。

 今私の目に映るスケルトンは大盾を背中に背負い、剣を手に持っている。


 ーーはっ!? それどころじゃない! 分裂体は!?


 キャロキョロとスケルトンの辺りを見渡し、分裂体を探す。

 そして、私はその姿を見つけた。

 酷い姿だ。

 原型を留めてはいるものの、戦い続けた両腕は曲がってはいけない方向へと曲がっている。

 ステータス上に載っている体力も殆どなく、戦えるとはいえないだろう。


 だが、それでも分裂体は震える足で立ち上がり、フラフラになりながらもスケルトンへと向かっている。


 足取りは安定しておらず、スケルトンも最早分裂体へと興味を示していない。

 今まさに狙われているのは私なのだ。


 こうして分裂体を心配している今でも、空を飛ぶ私へとスケルトンは狙いを定めている。

 盾へと収納していたのか、どんなに強靭な力を持ってしても千切れそうにない太い鎖を剣へと巻き付けて、剣を振り回しているのだ。


 そして、振り回して回転させる事によって勢いを増した剣は、一切のズレもなく私へと投擲された。

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