74話 『スライムVSスケルトン』
入り口で立ち往生している私目掛けて両刃剣が飛び、それ以上にやばいスケルトンは私を狙って走りだしている。
そんな戦闘から始まった事により、私の足は未だに動いていなかった。
なにせ、開幕から武器を飛ばしてくるなんて考えていなかったのだ。
だからこそ、一歩遅れた私に取れる行動は二つ。
自分の体を信じて攻撃を受けるか、一か八か悪魔形態の魔法で剣とスケルトンの軌道をズラすかだ。
どうしよう。
いや、迷っている暇なんてない。
スケルトンの圧倒的なまでの力は理解しているし、最初からダメージを負うことは後々を考えればリスクになり得る。
だとすれば、取れる行動は一つだ。
間に合うかどうかは賭けだけど、やるしかない。
スライムだった私はすぐさま変態スキルを発動し、悪魔状態に移行し真っ先に三つの魔法を発動した。
一つは浮遊。もう一つはファイヤーストーム。そして、残りはアイススピアだ。
闇雲に発動したのではなく、ファイヤーストームはスケルトンの動きを阻害する為に、アイススピアは少しでも剣の軌道をズラす為に発動した。
瞬時に三つの魔法を発動した所為で、多少のタイムラグが生じ、浮遊の発動が遅れてしまった。
アイススピアは剣と衝突して間もなく崩れたが、奇跡的に剣のスピードは少し遅れさせることは出来た。
それにより、私の浮遊魔法の発動のが早く、紙一重で私は剣を避けることが出来た。
よし!
頭上を取った!
これで後は上から狙い撃ち……する……はぁぁぁぁ!?
おかしいでしょ!
なんで剣がまだ私を追いかけてきてるの!?
ぐぬぬ。
蜂の針と同じ系統のスキルを使って剣を投げたって事ね。
はぁ。
こうなったら仕方ない。
全力で剣を撃ち落としてやる。
浮遊で動き回りながら、私は何度も何度もサンダーボルトを剣へとぶつけた。
これで落とさなければ私に逃げることは叶わない。
現状スケルトンは上を飛び回っている私に手を出してこないが、その気になれば盾を投げる事だって出来るだろう。
しかし、それをしてこない。
可能性としては低いが、もしかしたら地上で戦うことを望んでいるのかもしれない。
一縷の望みにすぎないが、数発以上撃ち込んでも落ちる気配がない剣を相手にするよりはまだ希望は持てる。
ただ、今の状態で普通に地面へと降りれば間違いなく剣は突き刺さるだろう。
それだけは回避したい。
だったらやることは一つだ。正々堂々戦うという意思表示の為にも、敢えてスケルトンへと近付く!
怖いけどやるしかない。
盾で撃ち落とされませんように!
迫る私と剣をジッと見つめるスケルトンは、一度盾を持ち上げるが、魔法すら発動させようとしない私に違和感を覚えたのか、そのまま素通りさせてくれた。
そして、私を追っていた剣はスケルトンの手元へと戻り、私は浮遊魔法を解除して地上へと降り立つ。
まるでさっきまでの攻撃など軽い挨拶に過ぎないと言っているかのように、スケルトンは武器をしっかりと構えて私と対峙する。
既に魔法を結構な数使っている私と、ただ剣を投げて様子見していただけのスケルトン。
正直、勝てる気はしない。
今の攻防だけでも圧倒的にスケルトンのが上。
なによりも辛いのはオークの時のように、私の最初の一発の魔法を受けても無傷だという事だ。
スキルも全く分からないし、魔法が使えるのかも分からない。
分かることは単純に強いということだけ。
だだ、勝算が全くないわけじゃない。
敗北の可能性のが高いけれど、分裂スキルを上手く使えば勝てる可能性はある。
もしくは、リスクを冒して後ろにある階段へと逃げる事も出来る。
けど、私がそれをする事はない。
確かに、死ぬ可能性が最も高い今、取るべき選択は逃げる事だろう。
でも、私は覚悟を決めた。
逃げない覚悟を、スケルトンを殺す覚悟をだ。
最初からここで死ぬ確率が高いなんて事は理解している。
だが、私は簡単に殺される気はない。
死をも恐れぬ私の覚悟だ。
スケルトン、私はお前を本気で殺す!




