73話 『邂逅』
ほー。これは凄い。
見事に私と同じだ。
あ、でもちゃんと動くのかな? 命令とか必要な感じ?
勝手に動いたりとかしてくれないよね?
ひえっ。
動きだしたんだけど。えっ、怖っ! そしてキモっ!
なにあれ私!?
動き方とか音とか、色々キモいんだけど!
もしかして周囲から見た私ってあんな感じなの?
うわぁ。なんかショックだ。
知りたくない事実を知っちゃったよ……。
はぁ。
一応勝手な動いてくれてるみたいだけど、命令してみるかぁ。
命令を一切聞かなかったら問題あるし、今後の戦いにも支障が出そうだしね。
よーし、第二の私よ、動け!
止まれ! 天井まで移動して張り付いて待機!
……ふぅ。
大丈夫そう。
私の命令にも忠実か。ってことは、さっき動きだしたのは勝手に動いてくれたらって思ったからかな?
ふむ。
分裂っていうスキルだし、自分のステータスを確認してみよっと。
名前:霧香
種族:コピースライム『希少種』
HP:1500
スキル:変身 物理攻撃激減 再生 変態 分裂 捕食 自爆
名前:なし
種族:コピースライム『希少種』
HP:1500
スキル:変身 物理攻撃激減 再生 変態 分裂 捕食 自爆
備考:分裂体
おー。
こういう感じね。なんか予想通りって感じ。
それで、こいつはどうやって私に戻せば良いのかな?
もしかしなくてももう一回分裂?
んー、考えても仕方ないしやってみるか。これ以上増えたら困るけどね。
ふむふむ。
成功って所かな。分裂は半分に分けるだけで、これ以上は増やせないって感じか。
なるほど。
……強くない? このスキルチートじゃん!
私が二人とかもう完璧でしょ! スケルトンにも勝てそうな気がするんだけど!
待て待て待て。
落ち着け私。毎度テンション上がりすぎだ。
そもそもスライムの状態で分裂したところで勝てるわけがない。
問題は変態状態で分裂が出来るかどうかよ。
いや、どっちにしても悪魔状態だと使えるスキルが変わるし、分裂した後に分裂した私が使ってくれるかどうかだね。
これが出来るのと出来ないのじゃ天と地の差だ。
頼むから出来てよね……。
ほっ。
良かった。私が命令すればしてくれるね。
よーし、これであとはスケルトンと戦うだけだ!
勝てば生き残れる、負ければ死ぬ。
元々そんな弱肉強食の世界で生きてきたんだから、覚悟は決まってる。
もう逃げださないよ。私は絶対に勝つ!
うーん。
意気込んでスケルトンが進んだ道を歩いてはみたものの、なにもないなぁ。
蜂のお陰でお腹はいっぱいだけど、こうも静かすぎると怖いっていうか、警戒し続けて疲れてきたって感じ。
おっ!
なんか明るい場所!
うげっ!
そういう感じですか。そうですか。
一本道を突き進んだその先にあったのは、下に続く階段と、明るい広場。隠れる岩もなく、逃げられる場所は私が来た道以外にない、そんな場所。
戦うには充分な広さではあるものの、そんな広場の中心に剣を突き立てて立つスケルトンを見れば戦う気力は薄れていく。
威圧が辺り一面に広がっているのだ。
一歩足を踏み入れれば殺すという殺意と威圧。
常に鎌を首へと押し付けられるような、あのとき感じた殺意と同じものが広場中に充満している。
だが、私は逃げない。
幾ら怖かろうが、私の心はもう屈しない。
そうして、私はスケルトンと戦う為に広場へと足を踏み入れた。
戦闘の合図なんてものはなく、始まりは唐突だった。
スケルトンにとってのフィールドに私が足を踏み入れたのだから、お互いに戦闘態勢に入る不思議ではなく、必然。
そして、開幕からスケルトンは殺す意思を私へと刻み込む為に突き刺した剣を投げ、盾を構えながら突進し始めた。




