71話 『まさかの進化……?』
蜂を燃やし尽くしてから大体数日が経ち、ようやく私の目の前から蜂の巣は跡形もなく消え去った。
巣がなくなって残された部屋はただただ広く、何もない空間だけだ。
ふぅ。
お腹いっぱい。もう蜂は当分の間食べなくて良いかな。
『コピースライムとしての成長限界を迎えました』
『スキル:分裂を取得しました』
『コピースライムの成長は最大です。進化しますか?』
ふぇっ!?
えっ!?
なになになに!?
もう成長限界を迎えたの!?
やばいやばい。
蜂の巣を食べただけなのに2回も迎えちゃったよ!
ラッキーすぎる!
ってか、待って。
テンション上がったせいで見逃しそうになったけど、進化ってなに?
もしかして私は更に違うスライムになれたらするの?
……。
はい!
ダメですよね!
進化先とか教えてくれないですよね。分かってましたよ。
なんとなーく分かってたから!
ぐぬぬ。
こんなのもう賭けじゃん!
これで今より弱くなったら終わりだし、変態スキルとか変身スキル、それに今覚えたばっかの分裂すら使えなくなったら終わりだよ!
幾らスライムとして強いスライムに進化してもこのスキルがなかったら私もう生きていけない。
どうしよう。これあとで選択とかさせてくれないかな。
……。
うん。
ま、ですよね。
これも無理ですよね。
『進化する際、進化前のスキルは引き継がれます。また、コピースライムは特殊な個体である為、進化先はスライムからかけ離れる場合があります』
えぇぇぇ!!
なんで突然教えてくれるの!?
デレた! 唐突にデレたぞ!
奇跡だ。これは紛れもない奇跡だ。こんな良い情報を教えてくれるなんて、どうして頭の中に機械音声が響くんだという今更ながらの疑問を無視しても、感謝しかない。
さてさて、そろそろ落ち着こう。
深呼吸深呼吸。
すー……はぁ。すー……はぁ。
よし。落ち着いた。とりあえずこの部屋は今のところ安全だし、私も成長限界に達してるからスケルトン並みに強い敵が来ないか、もしくは大群さえ来なければ問題ない。
冒険者は滅多に見ないくらいレアな存在だから無視するとして、今の私はこの部屋に居ればちゃんと考えて選択出来るわけだ。
進化か。そのままか。
迷うなぁ。スキルとか引き継ぐって考えれば進化一択なんだろうけど、スライムからかけ離れるってのが気になるポイントだなぁ。
虫とかになったら嫌だし、オークとかゴブリンも嫌。
うーん。
悩ましい。この選択がいつまで出来るか分かんない今、早く決めるべきだと思うけど、一応私のこれからの未来の話になって来るわけだし。
焦って決めて後悔だけはしたくない。人間でいう人生だからね。
やっぱり焦るべきじゃないよ。
とりあえずここはステータスを見て自分を再確認しようかな。
名前:霧香
種族:コピースライム『希少種』
HP:2000
スキル:変身 物理攻撃激減 再生 変態 分裂
おおっ。
やっぱりめっちゃ強くなってる……。
それにようやくスキルのところに分裂の文字が!
ただ、このステータスを見ても私がどう進化するのかなんて分かんないや。
うーん。誰か教えて!!
……はぁ。
ダメか。もうデレてはくれないのか。
ホントにどうしようかな。進化しちゃおっかなぁ。
んー。
私の予想としては変態スキルを使うことが多いし、もし仮にスライムじゃなくなるとすれば変態時の姿になるとか、かなぁ?
だとしたら悪魔?
えっ? 悪魔になれちゃうかも?
そうなったら嬉しい!
悪魔状態で分裂とか絶対強いもん!
なんかテンション上がってきたー!
このままの気持ちで進化しちゃえ!
私の予想よ当たれ!




