6話 私の見つけた居場所
うむ。
どうやら私の住む場所はここが一番良さそうだね。水もあるから最悪飛び込めば一体化して隠れられる。スライムだから何故か睡魔も来ないし、寝る必要はないから警戒も出来る。入り口は二つあって、一つは隠されてるから私以外知らないはずだし、隙間もあるから隠れられるね。
それに、なんとこの水の中には見たこともない魚もいるし、少し隠れて過ごしてみた感じだと、どうやら水を飲みに他のモンスターもたまにここにやってくるみたいだから、餌には困らない!
どうしてこんな場所を見つけられたのかって?
それを話すにはちょっと遡って私の進んできた道を振り返らないといけない。
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さて、人間たちも去ったし、私もあいつらが向かった道とは別方向に進もう。
万が一にも鉢合わせなんてした日には死を覚悟して逃走しかないし、同じ道を進むという危険は冒したくない。
ん? あの狼なんで口元が濡れてるんだ? この辺りに川なんてあったかな?
私の視界に映るのは壁ばかりであり、どう見ても狼が水を飲めそうな川なんて見つからなかった。
幸いにも狼にこちらは感知されてないから襲われることはないが、そんな事よりも私は水の在り処を知りたい。
だって、どう考えたって隠されている水の在り処なんて、私の住みやすい場所になりそうだし、初めて巣を見つけられそうな予感がしてるんだ。
頑張ってでも見つけだしたい。
けど、もしも在り処が分かったとして、そこに危険な巨大生物とかが住んでたりしたらたまったもんじゃない。
でも、ここは明らかに地球ではない異世界だし、安全だなんて保証はどこにもない。
あの人間たちですら、今の私がすればめちゃくちゃ脅威なんだけどね……。
あんなの私が倒すとはいかずとも退けられるようになるのかな?
あ、でも、変身を使って騙し討ちとかすればなんとかなるかも?
わからない。
けど、人間から身を守る手段がないと多分私はこの先生きていけない。
っていうかさっきからどうして私はこんなに人間を敵視してるんだ?
自分がモンスターだからかな?
うーん。まぁ確かに私のことを人間が見れば襲ってくるのは明らかだし、それに対応はしなきゃならないんだけど、私はこの世界の情報とか欲しいんだよね。
出来たら人間と敵対せずに教えて欲しいけど、流石に難しいかな。
ま、地道に歩いてる人間や自分で見つけだした情報でなんとかするしかないか。
それに、最悪外に出れた時に色々調べれば良さそうだしね。
さてさて、狼に隠れて観察しながら考えてたのは良いけど、どうやら狼さんはなにかを食べた後にもう一回どこかに消えちゃったみたいだね。
私が見てた限りだと、どう見ても壁でしかないところに歩いてた訳だけど、そこに道が隠されてるのかな?
……えーっと、狼さんはまだ出てこないのかな? 結構時間経ったはずだけど遅いなぁ。
こうやって天井に張り付いてるのは良いけど、流石に疲れてきたから気を抜いたら落ちちゃいそう。
おっ! やっと出てきた! 今度は魚を咥えてどっか行ったみたいだね!
よし、これでハッキリした、あの狼が出てきた場所が私の向かうべき場所だ。
さぁ、私の住処を見つけにレッツゴー!
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という感じで、冒頭に戻るわけなんだけど、今私がいるのは正真正銘私にとってのオアシスなんだよね。
まぁ、絶対にモンスターに襲われない保証はないけど、身を潜められる場所もあって、餌もあって、最悪入り口の天井に張り付いていればモンスターを撃退して捕食できるのは結構良いと思う。
ただ、人間が入ってきた時に困るのと、私が恐らく初めて見つけた入り口から東側に進んだ壁がもう一つの入り口ってことがバレたらこの住処も危険になっちゃうんだ。
と言っても、両方の入り口ともにさすがファンタジーということもあって、壁の幻影? みたいなので隠されてるから匂いでわかったりするモンスターはともかくとして、人間はきっと来れないと思うんだよね。
とにかく、ようやく私の住処を見つけることが出来たわけだし、強くなれるかはわからないけど、ひとまずはここで生活していくことにしよう。
さしあたっては、お腹を満たすところから。