表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
器用貧乏なスライムは異世界で自由奔放に生きていく?  作者: ねぎとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/161

63話 『圧倒的なまでの個体』

 えっと、もしかしてあの魔法で死んじゃったのかな?

 だとしたら嬉しいけど、それはそれで困るような……。

 オーク達の軍勢は厄介だし、けどあのまま戦われてもこうして見ていることしか出来ないしーー


『ブハハハハッ! キサマホネデハナイカ!』


 えっ? 骨?

 あのフルプレートが? 人間じゃなかったの!?

 どれどれ〜。

 うわっ! ホントじゃん!


 魔法によって生じた土煙が晴れ、そこから姿を現したのは未だ健在のスケルトンだった。

 鎧は相も変わらず傷一つ付いていないが、驚くべきはその顔だ。

 今まで兜をかぶっていたからこそ、てっきり強い冒険者なのだと思っていたけど、それは私の勘違いだった。


 その姿は紛れもなく骨であり、肉はない。

 ゲームやアニメ、そういった物によく出てくるスケルトンだったのだ。

 だが、良くある雑魚敵としてのスケルトンではない。目の中からは殺意の籠もった青い光が浮かび上がっており、姿を晒しても尚、手に持つ両刃剣と自らの体を覆い隠す程の大盾を離していない。


『キサマ、マダタタカウトイウノカ。イイダロウ、ホネスラノコサズコロシテヤル! モウイチドマホウダ!』


 オークの行動は間違ってはいないが、私からしてみても愚策だと思う。

 そもそもとして、同じ攻撃が格上である相手に通用するはずがないのだ。

 それも、さっきは偶然相手の隙を突いたからこそ成功した攻撃。

 既に構えている相手には通用する確率は低い。

 なのにも関わらず、焼け死んだオークを踏みにじりながら優雅に歩いているスケルトンへと、オークの王はもう一度足止めする為にオークを放ったのだ。


『グ、キサマハナンナノダ! オカシイダロ!』

 口汚く叫び、唾を撒き散らしているオークの王。

 けれど、その言葉にスケルトンは耳を貸していない。いや、私が見るに、聴こえているが無視しているのだ。


 そしてスケルトンは歩くのをやめ、走り出した。

 目の光が宙に残るほどの速さで動き、瞬く間に魔法を放とうとしているオーク達を蹂躙したのだ。


 有り得ない。

 幾ら個の強さが圧倒的だとしても、数には負けるのが自然の道理だ。

 私もそれは分かっている。

 確かに、私は個で見てみれば相当強い……と思いたい。

 まぁ悪魔の力だけども。


 っとまぁ、それは置いといて。

 仮に私がさっきの蜂と戦ったとしても恐らく、いや、奇跡でも起きない限り殺されてしまう。

 けれども、それが普通なのだ。


 数は力。

 それは紛れもない事実。

 しかし、あのスケルトンを見れば嫌でも理解してしまう。

 圧倒的すぎる個は群よりも強いのだということを。


 やばい。

 震えが止まらない。

 怖い、怖すぎる。無理だよ、あんなの戦うべき相手じゃない。

 上の階層にも居たけど、あいつもこの階層に存在しちゃいけない生物だよ。

 ダメなんだ。早く動かないと。


 分かっているのに、私は見ることをやめられない。

 体が震え、音を出さないように息も殺し、動けないのにも関わらず、私はスケルトンの戦いに魅了されてしまっているのだ。


 スケルトンであるにも関わらず、両刃剣を軽々と扱い、寄ってくるオークは美しいと言えるほどの太刀筋で両断していく。

 囲まれて放たれた槍は身を屈めながら構えた槍で弾き、逆にオークの態勢を崩していく。

 同じように、降り注ぐ魔法も躱していき、やがて残るはオークの王とそれを守るようにして立つ二体のオークだけになった。


 うわっ。

 ぐちゃぐちゃで気持ち悪い……。


 戦いの最中で巻き込まれたオークは死に絶え、死んだオークは踏まれてぐちゃぐちゃになり、そしてその上から更に死体が積み重なっている。

 そんな光景は広場中に広がっており、スケルトンの強さはこれを見るだけで嫌でも理解出来る。


 そんな無残な光景が広がっているにも関わらず、私は目を逸らす事ができずにスケルトンとオークの王を見ていた。

 そうして、オークの王の長い長い命乞いが終わると同時に、王冠は空を飛び、オークの首は綺麗に撥ねられた。


 残された王冠は宙を舞い、やがてスケルトンの前に落ち、甲高い音を立てながら木っ端微塵に砕かれるのだった。


 こうして、オークの軍勢VSたった一体のスケルトンの戦いは私の脳裏に焼き付けられながら、幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ