61話 『毎度毎度追われるのはなんでなの!?』
さぁさぁ。ゆっくりと進んで行くよ!
とりあえず念のため変態していた悪魔の姿からスライムの姿に変えてっと。
よし。次は天井に張り付いて、あとはゆったりと道なりに進むだけ。
いやー、余裕だなぁ。
さすが私って言っても良いくらい余裕。
というかバレないように進むだけとかこんな簡単な事はないよね。
おっ、ここからなら部屋の中がくっきり見えるね。
うーん。やばいなこれ。
部屋の中央に巨大な蜂の巣があって、正直それ以外は特になにもなさそう。
ってあれ?
なんかさっき一瞬覗いた時には居たはずの蜂が居なくない?
もしかして巣の中に戻っていったのかなぁ……。
でも全部の蜂が戻るなんて思えないし、そもそも蜂の習性がよく分からないけど、働き蜂的なのが常に動き回ってるんじゃないの?
むむっ。
巣から一際大きい蜂がひょっこり姿を現したぞ。
こいつがアレか。女王蜂ってやつか!
凄い! 日本に居たら駆除出来なさそうなくらい大きい!
うわぁ。こんなのに私がバレたら逃げきれないな。
蜂の巣を初めて見た私は、天井に張り付きながらもその場に留まって見続けてしまっていた。
そして、それが間違いだった。
女王蜂も見れた事だし進もうと思っていた私と、巣から顔だけ出した女王蜂の目が合ってしまったのだ。
お?
おお?
おおお!?
蜂が大量に巣から出てきた!
私の視界はスライムということもあって全方位見る事が出来る。
想像してもらえば分かると思うけれど、常に全てを見れているからこそ死角というものが存在しないのだ。
だからこそ、私は気づいてしまった。
既に私が後ろへと退けないように蜂が道を封鎖していることに。
だけど、私も蜂を観察してわかった事がある。
偶然にも蜂がまだ警戒してくれているからこそ分かった事実だが、この蜂達は数個の群れで活動しているのだ。
一個の群れに一匹居る巨大かつ色が明るいのが隊長。そして、それよりも小さく、逆に色が普通のやつより暗いのが副隊長ということ。
おおよそこの蜂の進化系だとは思うし、正直こんな情報を今手に入れたところで数の暴力には勝てないからどうしようもないんだけど、いざとなったらリーダーさえ潰せばなんとかなるかもしれない。
だから、囲まれてるのに観察し続けたのは決して無駄じゃない。
うん。
無駄じゃないんだ……。
逃げた方が良かったとか全然思ってないから……。
うぇ。
遂に蜂が刺さったら絶対にやばい針をこっちに向けながら突撃し始めやがった。
とりあえず私に黒いスライムのような耐久力はないから、変態スキルで逃げよう!
うーむ。
偶然にも光が弱かったのか、変態スキルによって生じた光で包囲網が崩れたからなんとか逃れてるけど、目視で数百匹は居る蜂に追われてるこの状況って結構絶望的だよね。
どうしようか。
このままだと距離を詰められてめった刺しされて死ぬかもしれないし、ひとまずは後ろを向いて炎魔法で牽制かな。
走りながら後ろを振り向き、狙いをつける必要もないくらい多い蜂達へと向かって私は『ファイヤーボール』を放つ。
けれど、そんなものは焼け石に水だ。
確かに蜂に直撃し、数匹は落としたと思うけれど、数自体はさほど変わっていない。
なにより、先頭に居る隊長蜂には焦げ跡も本当に当たったのか不安になるくらい傷がないのだ。
けれど、私の炎魔法一発で何匹か撃墜出来た事から、隊長蜂や副隊長蜂はともかくとして、普通の蜂は弱い。
でも、仮に魔法を連発したとして、私の魔力が尽きるのが先か、蜂が死ぬのが先なのかは予想がつく。
私が先に動けなくなるだろう。
あ、待てよ。
そういえば私も数を増やせるじゃん!
よしよし。いけ! 私の眷属達!
……。
…………。
えぇ……。
瞬殺ですか。そうですか。
ま、まぁでも眷属達の犠牲によって距離は離せたわけだし、ここは距離を維持した状態で魔法を連発するとしましょう。
当然倒す目的じゃなく、目眩しやあわよくば脅威と判断して逃げてくれることを祈って。
はぁはぁはぁ。
ふぅ。やっぱり私の魔力のが先に尽きるよね。
ってか、こいつらいつまで追ってくるんだよ!
もう自分が走ってるのがどこか分かんないし、ずーっと追われ続けてもう辛い!
涙が出ちゃうよ! もうやめて! 私をこれ以上いじめないで!
ん?
あれ?
急に音が消えた?
うーん。とりあえず疲れたしここら辺でひとまず休憩かな。
音もないしきっと蜂さんも帰ったんだろうし!
作者です。
今絶賛スランプ中です。
でもご安心ください。ストックがありますので更新はします!
ただストックが尽きた時は……。
とにかくがんばります!




