60話 『もしかしたらの私の姿』
はぁ。
ため息が溢れちゃう。
せっかくのご飯だと思って急いでやってきたのに、蓋を開けてみれば私とは少し系統の違うスライムが居るだけ。
こんなのってないよ!
もっと私に優しくしてよ!
ご飯を! ご飯をよこせ!
ぐぬぬ。
もういっそのこと同類だけどスライムを捕食してみようかな。
食べれるとかは分かんないけど、私がスライムで逃げ回ってた時も色んなモンスターが追ってきたし、多分食べれるでしょ!
あ、でも待った。
あの黒いスライムに私が勝てるかな?
悪魔の形態だったら戦えるけど、あのスライムは見た感じやばいくらいの防御力を持ってるんだよね。
なにせトラップで降り注ぐ矢とか、鉄球、炎の柱とか全てを一切のダメージなく涼しい顔で尚且つゆったりと進んでるんだもん。
こんなやつに私の魔法が通るとは思えないね。
ま、でも道中で見た黒い塊は動いてなさそうだったし、多分死ぬことはあるんだろうな。
いや、分かんないけどね! スライムにももしかしたら冬眠的ななにがあったりとか、全部が寝てただけかもしれないし!
……うーん。
諦めるかぁ。
無駄に体力使いたくないしね。
もしあのスライムがスキルがなんかで物理と魔法無効化とかいうチートを持ってたら勝ち目ないし、うん。やめよう。
それに、もしかしたら私のあのスライムに進化してたかもしれないからね。
そう考えるとやっぱり同族は殺せないかな。
けど、こうして私以外のスライムを見てじっくり考えてみると、私ってやっぱり恵まれてるよね。
あの黒いスライムもこの階層にいるのを考えると相当強い部類だと思うけど、結局スライムから姿を変えれないし、そう考えれば変態とか変身が使える私って相当運が良いんだと思う。
変態スキルは言わずもがなチートスキルだし、変身も使いようによってはやばい能力。
最近は変態スキルばっかで変身スキルは使ってないけど、
あとはスライムに最後頑張って生き残るんだぞ!と心の中で伝えてから、私は別の道に行く。
この道に来る前には三つの分かれ道があったし、一つはあのスライムのお陰で罠だらけってのがわかったから、別の道へ。
それを教えてくれただけでもあのスライムには感謝しないとね。
私の予想だとこれから先使う機会があると思うし!
いやー、スライムにも色んな種類があるんだなぁ。
もしかしたら水に特化して泳げるスライムとか、普通に近接戦闘出来るスライムも居るのかな?
うーん、考えるだけで楽しい!
いや、まぁ私は別にそっちのスライムになりたいとか、今更違う系統のスライムに進化できるとは考えてないけども、なんていうか同種族の色んな特性って面白いと思わない?
ま、これは私だけかもしれないけどね〜。
さーてと、スライムを無視して進み続けてたら遂に自分のいる位置が全く分からなくなってきちゃったぞ!
ゲームとかでよくあるマップもないし、方向感覚も同じような道で狂うからもうなにがなんだか分からない!
何回分かれ道を進んだかも分からないし、頭の中ぐーるぐる!
……はぁ。
今までも散々迷ってきたけど、こう何回も同じ道をぐるぐる回ってる感覚は苛々するわぁ……。
あ、待て待て!
ここ違う道だ!
部屋がある! 罠臭いけど部屋だ!
よし! とりあえず扉とかはないし覗いてみるしかない!
あーはい。
はいはい。分かってましたよ。
罠っていうかこの部屋自体がモンスターの巣になってるのね。
しかもブンブンうるさいし、蜂だよ蜂。
これはバレたらやばい予感しかない。
仕方ない。私のスニーキング術を見せてやるとしますか!




