57話 『災厄の人形』
嫌ぁぁぁぁあ!
誰かー! 助けてー!
やばいよ! 通り魔だ! 殺人鬼だよ!
助けてー!
って、こんな茶番をやってる暇なんてない!
考えろ私。どうする? 戦うか逃げるかどっちにする!
うーん。
幸いにも最初から距離があったおかげで今は逃げ切れてるけど、既に距離はどんどん詰められてる。
時間が経てば経つほど追い詰められるなら、もう戦うしかない!
大丈夫。蟹さんとの戦いで消費した分は既にある程度回復してるし戦えるはず!
よーし、覚悟を決めたし人形さんと向き合うぞっ!
ーーーヒュンッ。
ひぇ……。
あっぶなぁ。なに今の。
えっ? もしかしなくても剣だよね?
えっと……私の頬が抉れたんですけど……これ私勝てます?
い、いやいやいやまさかただ剣を投げるだけでこの威力はないでしょ!
きっと特殊なスキルかなんかを使ったに決まってる。
うんうん。
ま、でも2回目は使わせないけどね!
『……!?』
ふぅ。間に合って良かった。
アニメみたいに凄い回転しながら剣と一緒に腕が飛んでいったね。
なんか投げる構えをしてたから勢いよく突撃して吹き飛ばしたんだけど、もしかしてこの人形って耐久性がないんじゃないかな。
当たりどころが良かったのかもしれないけど、ひとまず攻撃手段を一つ減らせたから良し!
さーてと、一瞬は私の動きに驚いて止まってくれてたけど、私という獲物が近くにいるんだから当たり前だけど剣を振ってくるはず!
うおっ!
マジか。まさか相手から距離を取るなんて。
どうしよう?
相手の動きに合わせて反撃しようと思ってたし、距離を取られると厄介だなぁ。
ん?
腕を拾って……えー! 嘘でしょ!?
距離を取ってきた理由って腕を直す為なの!?
まじかー。
ってことは腕を全部吹き飛ばしたりしないと隙を見て簡単にくっつけられちゃうって事ね。
うーん。強敵すぎる。
おっと、また剣が飛んできた。
けどさっきよりスピードが落ちてるし、直した腕で試してみたって感じっぽい。
正直スピードの落ちてる剣だったら避けれるし、いっその事残り4本の剣を全部試してくれないかなー。
はぁ。
ま、そういう訳にもいかないよね。
人形に知能があるか分かんないけど、どうやら人形も私と戦いながら考えてるっぽいし、簡単に避けられる攻撃はしてこないか。
っとなると人形の次の行動は接近戦だよね。
よし!
予想通り!
思ってた以上に私へと突き進むそのスピードは速いけど、対処できないほどじゃない。
ほとほと悪魔様の体に感謝だね!
悪魔と人形の戦い、近づいてくる時に魔法を撃って、当たって腕が吹き飛んでも突っ込んでくる。もはやお構いなし。
私驚愕、そこに剣を振り抜いてく?けど、間一髪顔をずらして、肩に当てる。
刃がなまくらだからこそ痛みはあれど斬り落とされることはない。
そして、肩にめり込んだままの剣を抜こうとしている人形に対してやることは一つ。
至近距離からの魔法。
しかし、それを読んでいたのか人形も抜くより先に攻撃を優先した。
全ての剣を使い、私へと三連撃を加えるが、全てが致命傷には程遠い。
防御力という面においても悪魔が人形に勝ってるのはこの時点でわかるが、それも物理半減のおかげだ。
が、そんな事今はどうでも良い。
とにかく今は至近距離で放った炎魔法、ファイヤーボールで吹き飛んだ私と人形の決着が優先だ。




