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器用貧乏なスライムは異世界で自由奔放に生きていく?  作者: ねぎとろ


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55話 『蟹VS悪魔の決戦』

 魔法を使いすぎた結果として動けなくなった私に対し、無慈悲にも迫る蟹さんは、私を確実に逃さないとばかりに泡のブレスを数発放ってきた。


 くっ。


 少しの痛みと、倦怠感を無視して私は動き出す。

 前方に体を屈める形で動き、泡のブレスを紙一重で避けたあと、自ら蟹さんの懐へと潜り込んだ。

 しかし、そんな私へと蟹さんは大きなハサミを振り下ろしてくる。

 まるで私の動きを予測していたかのように素早い動きだ。


 けれど、私はそのハサミすらも体を無理やりズラして避け、そのまま蟹さんへと手を当てて魔法を放つ。

 雷の魔法。サンダーボルトだ。

 蟹さんの甲殻によってダメージ自体が通っているのか定かではないが、それでも一時的に動きを止めることは出来た。


 こうなればやることは一つだ。

 もう魔法を放てないと叫ぶ体に鞭を打ち、蟹さんのハサミと体の接合部分を風魔法で分断し、蟹さんの攻撃手段を奪い取る。


 けれど、疲労によって狙いすらも定まらないのか、私が考えていた場所へと風魔法は飛ばず、接合部分とは少しズレた位置に直撃してしまった。

 だが、私の視界の端には飛んでいくハサミが見え、それに気を取られた一瞬。

 蟹さんの口元が動きだした。


 その動きを見た私は、度重なる魔法の使用によって更に重くなった体を持ち上げ、全力で駆け出した。

 背後から迫る泡を感じ、たまらず私は体を横へと投げ出してそれを回避した。


 ふぅー……。

 泡のブレスがマグマに吸い込まれたのを確認したあと、私は一度深呼吸をして体勢を立て直す。


 泡のブレスはもう飛んでこない。

 つまり追撃はなく、尚且つ蟹さんはもう泡のブレスを放たないという事だ。

 近距離にも遠距離にも対応できる泡のブレスが使えなくなった事や、攻撃手段であるハサミが消えたことにより、蟹さんは私へと背を向けて逃げ始めた。


 逃がさない。

 ここまで私が自分の体を酷使したんだから、そう易々と逃す筈がない。

 さっき風魔法でハサミを切った時、私の狙いが少し外れたにも関わらず上手く切り飛ばす事ができた。

 これは恐らく、私の使った雷魔法によって甲殻が柔らかくなったんだと思って良いだろう。


 既に魔法を発動できる限界は突破しているが、それでもまだ気力を振り絞ればなんとか一発だけは放てる。

 上手くいくかは分からない。それでも、私は背を向けて颯爽と走っている蟹さんへと氷魔法、アイススピアを放った。


 体が悲鳴を上げながらも、完成した氷の槍はぐんぐんと突き進み、やがて蟹さんの後頭部を突き刺す形で刺さり、不意を突かれた蟹さんは痙攣するかのように動いたあと、その場へと伏して絶命した。


 勝った。

 酷使した体から意識が消えていくのを感じながら、私は勝利した余韻に浸り、そのまま倒れ込んでしまった。



 それから幾らかの時間が経ち、私が慌てて目覚めた時、周囲には敵影もなく、目の前には私に倒された蟹さんが未だ残っていた。

 動かないと。


 痛っ!

 痛い痛い痛い!

 体が軋むように痛い!

 やばいよこれ! 動けないよ!


 くぅ……。

 どうしよう。さすがに蟹さんを食べて体力を回復しないと死ぬ可能性があるし、これ以上モンスターが現れても戦えない。

 だから、這いつくばりながらでも進まないと!


 はぁ、はぁ、はぁ。

 やっと、ようやく辿り着いた。

 後は一旦変態を解除して、無理やりにでも蟹さんを飲み込まないと……。


 もぐもぐ。

 もぐもぐもぐ。

 あー、味がないなぁ。

 まぁでもわざわざ変態して食べる程の気力はないし、このままスライムで溶かしていくしかないかぁ……。

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