26話 トカゲさんは強いのです!
ふっふっふっ。
さぁかかってこい狼!
今の私がただの最弱スライムだと思うなよ!
正々堂々だろうがなんだろうが、私は負けない!
って、ちょぉぉぉぉ!!
人がカッコよく歩き出そうとした瞬間に噛みつこうとしないでよ!
ひゃぁぁぁぁ!
嫌だぁ!
トカゲのまま死にたくない!
……あれ?
あれれ?
痛くないし、なにやら狼さんは私に攻撃が通らなくてビビってる感じ?
もしや、私の岩に噛みついちゃったのかな?
キマシタワー!
これで私の反撃チャンスがやってきた!
さぁさぁ、私のタックルをくらうがいい!
うぎゃ!
なにこれ!
止まらないんだけどぉぉぉぉおおお!
ドンッ!
うへぇ。目が回るぅ……。
幸い今回はひっくり返らなかったけど、私戦ったトカゲさんは今私が味わってる気持ちを味わっていたのか……。
はぁ。
今のタックルが当たってれば完璧に倒せたと思うんだけど。
まぁ違う手を使えばいっか。
うん。
多分使える。大丈夫だと思うけど、ここは念のため睨んでおこう。
よし。踵を返して逃げようとする狼さんを引き止めることに成功したぞ。
あとは、感覚的に口から炎を出すだけ!
大丈夫かな。吐けるかな。私スライムだったし、炎とか扱ったことないし、不安だけど、やってやる!
3、2、1、ファイア!
ゴオオォォォォオ!
ゲホッゲホッゲホッ。
はぁ。
なんとか炎は吐けたみたい。
なんか口の中も熱いし、喉の方がもっと熱いけど、狼さんは見事に倒せたね。
にしてもトカゲさんが放ってた炎と、私の炎を比べて見て思ったけど、私の方がだいぶ威力高くないかな?
だってさ、私が炎を吐いたら一直線に地面まで焦げてるし、なんなら逃げ場なんてないくらい広範囲に吐けたよ?
うーん。
なんでだろ。
試しにもう一回吐いてみるか。
むっ。
吐けない……。
あー、これはアレか。一回で全部の炎を吐いちゃったから威力が高くなっちゃったのか。
ってことはトカゲさんは意図的に調節して炎を吐いてた訳ね。
確かに燃費って言って良いのか分からないけど、調節した方が扱い易そうだし、次からは頑張ってみようかな。
というか、結果的に私は特に苦戦もなく狼さんを倒せた訳なんだけど、そもそもとしてなんで私は炎を吐けたんだろ。
変態してトカゲになった時からなんとなーく吐けるような気はしてたんだけど、私ってほら、異世界に来てから魔法とかも使ったことないし、絶対にどうやって吐けるかなんて理解できる訳ないじゃん?
でもさー、なんでか分からないし、説明も出来ないけど、吐けちゃうんだよねこれが。
多分これこそが変態スキルの力で、中身からなにまで全てが変わってるっていう証明なんだろうけどさ。
ま、なんにせよ危機は去ったし、喉とかは未だに熱いけど変態スキルの強さは実感出来たね。
さーて、他にも変態スキルでなにが出来るのかを調べる為に居住地を見つけよーっと。




