19話 一人ぼっちは寂しいな
はぁはぁはぁ。
ふぅ。
ここまで来れば大丈夫そう。
良かった。私生きてる。めちゃめちゃ体力は削られたし、痛かったし、怖かったけど生きてる。
はぁ。
疲れた。
もう眠れないけど横になって寝たい。
いや、楽園での壁に張り付く生活に戻りたい。
あー。
どうしてこんなやばい階層に私はいるんだ。
どう考えてもスライムが居ていい環境じゃない。あの時戦った熊さんだって、あの蜘蛛を見たあとだったら弱そうに見えちゃうし、なによりも魔法? で良いのかな。
とりあえず炎とかそういうのを使ってくるやつなんて前の階層にはいなかった。
というか、蜘蛛が炎を吐くとかホントにあり得ないし、どういう原理で吐いてるのかも分かんない。
体が赤く発光してたし、私に絶大な痛みを与えた、蜘蛛の脚でいいのかな? の攻撃も赤く光っていた。
まぁ正直異世界だからこんなの普通の可能性もあるけど、日本生まれ日本育ちの私からしてみれば異常だよ!
ってか、絶対アレ魔法でしょ!
あの赤く発光してたのが絶対魔力!
よし、勝手にそう思っておこう。
もしかしたらあの蜘蛛の体内に炎を吐けるようになる器官的なのがあるかもしれないけど、そんな事知ったこっちゃない。
蜘蛛が魔法を使えるのか?
とかそういう話もひとまずは置いといて、とりあえずは隠れてステータスを見てから休息しないと。
うーむ。
これは新しいスキルか。
使い所は多々ありそうだけど、デメリットもよく考えないとなぁ。
まぁでもとりあえず喜んでおこう!
これで私はまた一段階強くなった!
回復も終わり、どうするか考えたり、上に上がる道を探すか、定住できそうな場所を探すか、私より強いやつに会いに行くかを私は考えた。
まぁ、最後のは冗談として、とりあえずスライムとしての特性を使いながら、今度こそ罠や危険に注意しながら階層を練り歩く。
何処を進めばいいとか、明らかに罠の気配や、身を潜めて視線だけ合う敵、擬態している敵もいるし、なんなら地面や壁に描かれている魔法陣の罠もある。
魔法陣の罠は私自身が嫌な予感したから避けたが、後ろから私を追いかけてくるモンスターを魔法陣に誘導してみたら、下から炎の槍が突き出てきて、更にその後に雷によって焼かれていた。
正直、この時は本当に私の勘を信じて良かったって思った瞬間だね。まぁ、モンスターはお気の毒って感じだけど……。
まぁそれはさておき、モンスターを殺した魔法陣は役目を終えた後に完全消滅したってわけ。
魔法陣自体はこのダンジョンが用意した罠だとは思うし、もしもこの魔法陣の罠が復活するのであれば、私にとってとても役に立つ。
私は正々堂々は戦えないが、狡賢い手は考えられる。
獲物として逃げ回って、魔法陣に誘導すれば食事にありつけるというわけだ。
だが、一度きりで魔法陣は消えてしまうのだから、この階層をくまなく散策しつつ、魔法陣を適宜利用するしかない。
幸い、歩いていて分かるが、圧倒的にモンスターの数は多い。
そして、私よりも大抵の敵が確実に強い。
最悪な事態かもしれないが、これは良いことでもある。
私を獲物として認識してくれる事だ。
おっ、これは、魔法陣が二個ある。それに、あそこの曲がり角にもある。
いやー、これは酷い罠だね。注意深く見なきゃ分からないし、一個避けたと思ったらすぐ先にもう一個なんて完全に嫌がらせ。
曲がり角の方は油断して曲がれば即引っかかるから危険極まりない。
まぁでも、この階層にはこの魔法陣が効かないモンスターもいそうだし、人間とかも異世界ならではの魔法なんかで回避しそう。
ただ、今のところこの階層で人間に会ってないんだけどね。
はぁ。
なんか人間に会いたくなってきたかも。
んー、会いたいってより話したい?
もしかして私寂しいのかなぁ。
いや、日本でも一人だったし、寂しくない!
けど、折角異世界っていう誰も私のことを知らない世界に来れたんだから、いつかは誰かと仲良くなりたいかな?
スライムだけどね。
さて、なんか少し悲しくなってきたけど、とりあえず今日も獲物を手に入れますか!




