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器用貧乏なスライムは異世界で自由奔放に生きていく?  作者: ねぎとろ


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151話 『燃ゆる城』

 それから少し時は経ち、援軍として来てくれることを了承してくれた、親であるドラゴン達は、自らの子供であるドラゴン達へと最後のお別れをし始めた。


「こういう光景を見ると、私って親と子を引き離す最低な存在だよ」


 例えどんな種族であろうと、私の目に映るような紛れもなく最後を伝えるという光景は美しく見えた。

 そして、それと同時に私は自分が最悪な事をしたのだと思えてしまう。


 でも、そんな私の心を読み取ったのかは分からないけど、お別れを済ましたドラゴン達は私の元へと来て、少しでも慰める為にか、優しく声を掛けてくれた。


『汝が何も思うことはあるまい。あの子らも納得し、送り出してくれているのだ』

「うん、ありがとう」


 言葉を受け取った後、一度私も子供達の方へと目を向けると、まるで両親をお願いします。と言っているかのように頭を下げているのが分かった。

 親ドラゴン達が何を話したのかは分からないけれど、少なくとも私に憎しみなんかを持ってはいなさそうだし、むしろ信頼してくれていると思う。


 それはとても嬉しいけど、同時に複雑な気持ちにもなってしまいそう。


 ごめんなさい。

 私が頼みに来たばっかりに戦場へと連れて行ってしまって。


 会話も出来ない中で、私はただただ心の中で謝る事しか出来なかった。


『麒麟にもなれる汝がそんな顔をするものではない。気にするなと我が言っているのだから、今は魔王とやらの助けを第一に考えるのだ、さぁ、さっさと行くぞ』


 えっ? 私、そんな心配される表情してた?

 いやまぁ、確かに心の中で謝ってたけど、麒麟の表情って見分けられるもんなの?


 ……うーん。自分の顔をじっくり見ることもないし分かんないや。

 まぁいっか! ドラゴンの言う通り、今は戦場を少しでも楽にして、劣勢を覆さないとだしね。


 それにしても、どこをどう見て私の事を判断したのかはやっぱり分からない。

 それに、言葉を掛けてくれた後には、ドラゴンは一度も振り返ることなく進み始めてしまったのだから、今更聞くのも野暮というものだ。


『ふふっ。あのはしゃぎっぷりは相当嬉しいみたいね』

「えっ、あれで嬉しがってるんですか?」

『えぇ、とても喜んでいるわ。言い方は悪くなってしまうけど、例え偽物だとしても、生ける伝説と共に戦えるのがとても誇らしいのよ。勿論、私も誇らしく思うわ』


 偽物。確かに、私はあくまでも偽物、姿形を真似た存在に過ぎない。

 でも、それでも、そんな私と共に戦える事を誇りと思い、喜んでくれている事実にはとても嬉しくなってしまう。


「……なんていうか、ありがとうございます」

『こちらこそありがとう。ーーさっ、行きましょうか。置いていかれてしまうわ』

「はい! よろしくお願いします!」


 そうして、私は頼もしいドラゴンと共に、迷宮を駆け上がり、魔王城へと向かい始めた。


 ーーしかし、私達が魔王城へと辿り着くその前に、人間達が侵攻しているという事はまだ知る由もない。


 火の手が上がり、城下町では阿鼻叫喚の嵐が響き渡っている。

 これこそ今までに類を見ないほどの地獄絵図。

 かくして、帰還した私たちの眼前に映るのは、絶望の災禍に包まれた魔王城だった。


「これ、どういう事……?」

 私が援軍を頼みに向かい、ここまで戻って来るのに掛かった時間はおおよそ3日程度。

 しかし、そんな短期間で城下町はおろか、魔王城にまで人類は侵攻していた。

『ふむ。これは非常にまずい状況といった所か』

「いや、でも、私が迷宮に向かう時はまだ少し劣勢程度だった筈なのに……!」

『落ち着いて考えるのだ。汝ならばどう攻めていたのかを。さすればこの事態への対処も自ずと浮かぶ』


 私なら、どう攻めていた……?

 もしも私が人間側だとしたら、私という圧倒的な守りが居なくなったところを即座に狙うはず。

 という事はつまり、他の戦場はあくまでも囮、というよりは見せかけで、魔王の居る城を攻め落とす為に本命を潜ませていたという事。


 確かに、この戦い方は仮に私が魔王の敵だとするならば考えているかもしれない策であり、有効な策でもある。

 なにせ、他の戦場を確認すれば分かる通り、既にこの場には大多数の幹部は居ないし、戦える者も少ないのだ。


 それに、これは最終防衛線ということも相まって、仕方のない事だとは思うが、そうも言ってられないほどに私の居なくなった魔王城は手薄。


『どうやら理解出来たようだな。さぁ、ここで立ち止まるのはもう終わりだ。我が道を作る。付いてこい!』

「うん、お願いします!」


 かくして、先頭をきって進み出すドラゴンの後に続き、私たちも走り出した。

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