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器用貧乏なスライムは異世界で自由奔放に生きていく?  作者: ねぎとろ


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144話 『不穏な話し合い』

 魔王と共に、人間達の元へと向かう事になった日の朝、私は約束の時間よりも早く起き、魔王の元へと向かっていた。

 当然、不安だったからというのもあるが、魔王が短期間とはいえ城を去るのだから、結界が維持されるかどうかが気になったのだ。


『魔王城を覆う結界についてか。確かに、私が離れれば強度は下がっていき、やがて消失するが、少しは持つ。それに、そもそも魔王軍の全員が守っているのだから易々と攻めては来ないはずさ』

「ま、それもそっか。何かあっても速攻戻れば良いだけだしね」

『そういう事だ。さて、そろそろ向かうとしようか』

「了解、任せといて」


 魔王を背中に乗せ、魔王軍や白夜と黒亜に見送られながら私は走り出した。


 そして、人間達の元に辿り着いた私達は、怯えている兵士に案内されながら話し合いの席へと座る。


「ようこそ、待っておりましたぞ」

『どうも。それで、やっぱり後ろに控えているのは勇者達で間違いないかい?』

「おやおや、姿を消していたのにバレておりましたか。まぁ良いでしょう。お察しの通り、こちらの者がいわゆる勇者ですよ」

『へぇ、随分と若いんだね』

「そう言う貴方こそ随分とお若いじゃないですか。まぁこう言った話も良いですが、まずは本題に入りましょうか」


 冠を被り、如何にも王様という人の言葉に魔王が頷き、和平の話し合いは始まった。

 その間、特に喋る事もない私は、同じく喋らない勇者達を観察することにした。


 ふーん。黒髪で若い勇者ねぇ。

 背負ってるのはいわゆる聖剣で間違いないだろうけど、なんていうか雰囲気が凄い日本人って感じ。

 いやまぁあくまでも私の感覚だし、さすがに有り得ないと思うけどさ。


 んー、ってかこの勇者の目つきやばいけど大丈夫かな?

 ずっと下向いてるし、どっちかっていうと勇者なのにやばい人にしか見えないんだけど。

 やっぱアレかなー。

 本来は勇者みたいな振る舞いをしてるけど、私達みたいな魔族には憎悪が抑えきれないとか?


 ま、でも正直言ってずっと警戒してたのが馬鹿らしいくらい弱そうだし、襲われても問題ないかな。


 あーあ、なんかもっと強そうな奴を想像してたから、ちょっと拍子抜けだし、なんだかんだ話し合いも上手い具合に進んでるから早く終わらないかなー。


「さて、ある程度進んだ所で、一つ手伝ってもらいたいことがあるのですが、よろしいですかな?」


 おや? なんだか急に雲行きが怪しくなってきたぞ?


『和平を結べるのだったらある程度は手伝う気ではいるけど、まずは内容次第ってとこかな。君たちも私の言葉を簡単に信じるとは思えないしね』

「えぇ、勿論。ですが、手伝って欲しい事なんて貴方達魔族からすれば簡単な事。この世界最大の迷宮の攻略を手伝っていただきたいだけなのですから」

『ふーん。迷宮ねぇ。あそこは確かに危険だし、力のない人間じゃ攻略は難しいかもね。でも、どうしてそれが和平と繋がるのかな?』

「全容を話す事は出来ませんが、一言で言わせてもらうのであれば、莫大な力が手に入るからですよ」


 莫大な力かー。

 確かに私みたいに麒麟から力を奪い取れれば人間は強化されるもんなー。

 まぁ人間にモンスターから力を奪い取るなんて事が出来るとは思えないけどさ。

 でも、少なくとも麒麟の素材なんかを使えばいわゆる最強の装備が出来ちゃうか。


 正直自分が生まれた地だし、ドラゴン達とは少なからず交流があったから滅ぼされたくはないけど、魔王次第かな。

 私にとって魔王の夢の方が個人的には大事なんだよね。


「ふむ。そもそも貴方に断る理由があるのですかな? たかが一つの迷宮を攻略するだけで我々と友好的になれるのですから、断る理由がないでしょう?」

『しかし、あの迷宮を攻略するとなると、魔王軍の全てを費やす必要があるし、なによりも被害が甚大なものになる。例え、君たち人間が手伝ってくれようとお互いに被害は大きいはずだ』

「えぇ、それは覚悟の上ですよ。力を手に入れるにはそれ相応の代償が伴いますから。まぁとにかく、貴方は魔王軍を全て動かしてくれれば良いのです。簡単な事でしょう?』



 うわ! 魔王が悩んでることに痺れを切らしてきてるじゃん!

 ってか、もう騙しますよって言ってるようなもんだよこれ。

 私も正直嫌だけど、戦争するよりは良いんじゃない? ってちょっと思ったけどさ、もうダメだわこれ。

 ずっとニコニコしながら話して、魔王の話にずっと乗ってきたから信頼を得てると思ったか? 馬鹿め! 私は騙されんぞ!

 絶対にそんなの拒否してやる。魔王が良いと言っても、私が止めるからな!


『……ねぇ、あの迷宮って君が生まれた場所だよね?』

「うん、そうだけど……」


 人間達に聞こえないように魔王が小さな声で私へと聞いてきた。


『そっか。分かった』

「なにか話しているようですが、決まりましたか?」

『うん。決まったよ。君たちの事は手伝えない』

「そう、ですか。理由を聞いても?」

『うーん、まぁさっきも言った通り、魔王軍の全てを動かさないといけないっていうのもあるけど、単純に友達の生まれ育った場所をこっちには今のところ被害も出てないのに一方的に滅ぼす訳にはいかないからかな』


 魔王が拒否し、理由を話した所で人間の王は俯き、勇者達に何かを話した後、黙りこんでしまった。

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